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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第9話 二刀と精霊剣

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(四)同じ魔剣

◆ 分かれた血筋


「グラウスも、この一族の出身なのか」


 セトが尋ねた。


「同じ村で育った者ではない」


 祖父は木箱の中から、別の記録を取り出した。


「かなり前の世代で、一族はいくつかに分かれている」


 村へ残った者。


 別の土地へ移った者。


 精霊術の研究を続けた者。


 剣術だけを残した者。


 分かれた理由まで、すべての記録が残っているわけではない。


「そのうちの一つに、白刃と黒刃を両方伝えていた家がある」


「グラウスの家か」


「おそらくな」


 グラウスという個人の名は記録にない。


 だが、赤黒い魔剣を持ち、白刃と黒刃の性質を知り、同時に扱える。


 無関係とは考えにくい。


「かなり前に分かれたなら、祖父も知らない?」


「ああ。血がつながっているとしても、顔を合わせたことはない」


「向こうは、こちらを知っていた」


「古い記録を持っていたのだろう」


 グラウスはセトの白刃を見ただけで、一族の者だと見抜いた。


 セトが知らないことまで知っているようだった。


◆ 封じたもの


 祖父は、分かれた家について書かれた記録を読み進めた。


「妙な記述がある」


「何だ」


「分かれた家の一つが、封じられた剣の管理に関わったとある」


 何の剣かは書かれていない。


 場所も記録から消されている。


 ただ、火に関係する危険な剣を守る役目を負ったとだけ残っていた。


 シアが体を起こそうとする。


「無理するな」


 セトが背中を支えた。


「その剣だ」


「分かるのか」


「継承知識にある」


 イフリートの代々の知識には、危険な火の魔剣が存在することが残されていた。


 その剣は、過去のイフリートに由来する。


 人間に悪用されないよう、先代イフリートが封印していた。


「先代が?」


「ああ」


「お前は場所を知らなかったのか」


「知識には、封印されていることしか残っていなかった」


 精霊王が継ぐのは、役割に必要な知識だ。


 誰がどの道を通り、どの人間へ何を頼んだかという個人的な記憶までは残らない。


「先代は封印の場所を、人間の一族にも守らせていたのかもしれない」


 祖父が記録を見る。


「その役目を、分かれた家が引き継いだ」


「そしてグラウスが、その家に生まれた」


◆ 同じ魔剣


「昔、精霊剣の姿で死んだイフリート」


 シアが言う。


「この一族の祖先が使い手だった」


「ああ」


「死後に残った剣は封じられた」


「ああ」


「後のイフリートが危険な魔剣として管理し、先代も封印していた」


 祖父がゆっくりとうなずく。


「分かれた家には、その場所か、封印を守る役目が伝わった」


「グラウスは、その家の血を引いている」


 セトが続ける。


「なら、あいつが持っていた魔剣は――」


「あの時のイフリートが残した剣だ」


 シアが断言した。


 祖父が話した一族の伝承。


 シアが持つ、イフリートの継承知識。


 グラウスの血筋。


 赤黒い魔剣。


 別々だった情報が、一つにつながった。


「グラウスが封印を破り、持ち出した」


「おそらくな」


「それで先代を殺した」


「ああ」


◆ 二人分の火


 セトは、グラウスの赤黒い剣を思い出した。


 シアと似ているが、シアのものではない炎。


 剣の中で混ざり合っていた、いくつもの火。


「あの魔剣には、古いイフリートの力が残っている」


「最初に剣になった代の残存力だ」


 シアが答える。


「そこへ、先代から奪った火が加わった」


「二人分のイフリートの力がある?」


「正確には、古い方の力がどれだけ残っているか分からない」


 長い時間の中で使われ、失われ、別の場所から補われている可能性がある。


 それでも、器そのものは古いイフリートが残したものだ。


 そこへ、精霊王一人分に近い力を持つ先代の火が吸収された。


「普通の魔剣より強い理由か」


「ああ」


 人や魔物から少しずつ力を奪うだけでは、生きた精霊剣を超えるほどの力にはなりにくい。


 だが、グラウスの魔剣は違う。


 精霊王を殺し、その力を直接取り込んでいる。


「シアからも奪った」


 セトの声が低くなる。


「まだ全部ではない」


 シアが言う。


「だが、あの剣は前より強くなった」


◆ 壊しても戻らない


「魔剣を壊せば、奪われた力は戻るのか」


「分からない」


「先代は?」


「戻らない」


 シアの答えは明確だった。


「魔剣の中に先代の人格はない。剣を壊しても、先代が生き返ることはない」


「古いイフリートも?」


「ああ」


 救うために壊すのではない。


 これ以上、誰かの力を奪わせないために壊す。


 グラウスが魔剣を使い続ける限り、新しい被害が増える。


「なら、壊すしかない」


 セトが言った。


「その前にグラウスを倒す必要がある」


「分かってる」


「今のままでは負ける」


「それも分かってる」


 祖父が二人を見る。


「負けた理由を話せ」



※第9話「二刀と精霊剣」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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