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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第56話 双天・星華

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(四)双天・星華

◆ 死角


 セトが下へ進路を取る。

 光の精霊王の額が下を向き、収束光を集めた。


「上だ!」


 シアが赤い四翼の推進を一瞬弱め、逆方向へ火を放って減速する。

 ネアが黒い四翼で進路を上へ折り、シアがすぐに再加速した。

 白い光が、それまで八翼の向かっていた下方へ伸びる。

 セトはその脇をかすめるように通り、巨体の上へ飛び出した。

 敵が上を追った時には、もう右へ向きを変えている。


 巨体の四翼から散乱光が広がった。

 二本、三本と線が重なり、前方の空間を細かく区切る。

 大きく逃げれば外へ出られる。

 しかし、それでは敵から遠ざかる。


『左前方に隙間があります』

「見えた!」


 セトは身をひねり、二本の白い線の間へ飛び込んだ。

 ネアが黒い翼で軌道を指一本分ほどずらす。

 一本は背をかすめ、もう一本は足元を抜けていく。

 シアは前を塞ぐ細い光だけを焼いた。

 八翼は進む方向を変えず、白い網の向こうへ飛び出す。

 光の精霊王が次の砲撃を放つ頃には、セトとの距離がまた縮まっていた。


『これ、蚊が急に消えるアレか?』

『消えてはいません』


 シアの妙な例えにネアが答える。

 セトは笑う余裕こそなかったが、言いたいことは分かった。

 敵から見れば、追ったはずの小さな相手が射線のすぐ脇から抜けてくる。

 速度では八翼が上回り、機動ではさらに差がついていた。


 光の精霊王は全身の表面を白く光らせた。

 前後を問わない広い放出が始まる。

 これには身体を少しずらすだけでは足りない。


『薄い場所を焼く!』

『右下です。そこだけ流れが遅れています!』


 シアが火で白い壁を割り、ネアが黒い翼で開いた隙間へ進路を導く。

 セトは二本の剣を身体へ寄せ、細い出口をくぐった。

 直後、額の向きが大きく外れる。

 巨体が八翼を追っている間に、八翼は頭部の背後へ移っていた。


「今だ」


 追尾を一瞬失った相手へ、十六門をそろえる機会が生まれた。


◆ 双天・星華


 十四個の分霊核がセトの周囲へ広がった。

 赤い七核は光の精霊王の前面から四翼の根元まで、破壊する部位に射線を分ける。

 黒い七核は、それらの部位へ原光を送り込む再生経路を捉えた。

 極炎と絶光も射点に加わり、赤八門と黒八門、計十六門。

 赤が組織を破壊し、黒が再生に必要な流れを断つ。

 同じ部位を撃つのではなく、破壊箇所とその再生経路を対にして狙う。

 どれか一つが遅れれば、相手はその隙に原光を集めて再生してしまう。

 セトは二つの剣を握り、流れを別々に保つ。


 光の精霊王が反応した。

 巨体の四翼が周囲の原光を集め、白い壁を厚くしていく。

 さらに、複数の場所で収束光が生まれた。

 十六門の照準がそろう前に、その一つがセトへ伸びる。


『防御は私が!』


 ネアが黒い翼と分霊核で、光の流れを外側へ曲げた。

 しかし、白い一本がなお肩へ迫る。


『まだ撃つな!』


 シアが赤い一翼の火で軌道をわずかにずらす。

 セトは身体を傾け、肩のすぐ脇を通す。

 大きく避けなかったため、十四核の配置は崩れない。

 流れてきた衝撃は、水の精霊回路が別々の道へ逃がした。

 赤い力と黒い力を混ぜない。

 どちらも止めない。

 流入量を自分で調整し、十六門のすべてへ道を開く。


「双天!」


 極炎と絶光の切っ先が、同時に巨体へ向いた。

 十四個の分霊核が位置を定める。

 通常なら、八門を撃つ者が二人いるだけだ。

 しかし今回はセトを介し、赤と黒の発射を同じ拍に乗せる。

 片方が命中した後にもう片方が撃つのではない。

 十六の作用を一度に成立させるための合図だった。

 赤と黒の線はまだ放たれない。

 三人の意識が同じ一瞬へそろった。


「星華!」


 十六門から、火と月の力が同時に放たれた。

 その一撃は、二人が別々に使っていた八門を、初めて一つの目的へ束ねたものだった。



※第56話「双天・星華」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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