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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第9話 二刀と精霊剣

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(二)空になった剣

◆ 話さなかった理由


「だから、今まで話さなかったのか」


 セトが尋ねる。


「それもある」


「他にも?」


「精霊王が剣になれると知れば、セトは考える」


「何を」


「わたしも剣になれるのではないかと」


 否定はできなかった。


 精霊剣が魔剣と対等以上に戦えるのなら、グラウスを倒す手段として考えてしまう。


「自分が使い手になれるかとも考える」


「……考えるかもしれないな」


「知識が先に入れば、セトはわたしを剣として見るかもしれない」


「見ない」


「今はそう言える」


 シアは目を閉じた。


「だが、先に話せば、出会った時から違ったかもしれない」


 セトが最初に興味を持ったのは、イフリートの力ではない。


 シアも最初に見ていたのは、セト本人ではなく白刃だった。


 そこから二人は旅をし、戦い、名前を呼び合うようになった。


 最初から精霊剣の存在を知っていれば、そのすべてに別の目的が混ざったかもしれない。


「今なら話してもいいと思ったのか」


「グラウスが先に気づいた」


 隠し続けても、すでに相手は精霊剣の成立を待っている。


 知らないままでは、次の戦いで利用される。


「それに、魔剣の正体も話す必要がある」


◆ 空になった剣


「魔剣は、死んだ精霊王なのか」


「正確には違う」


 精霊王が精霊剣の姿のまま死亡すると、剣の形をした器が残ることがある。


 だが、そこに精霊王の人格や意思は残らない。


「魂が閉じ込められているわけではない?」


「ああ。剣を壊しても、中から精霊王が戻ることはない」


「完全に死んでいるのか」


「ああ」


 残るのは、力を蓄えられる剣の形だけ。


 生きた精霊剣なら、精霊王自身が力を制御し、使い手を選ぶ。


 死後に残った器には、そのどちらもない。


 拒む意思を持たないため、拾った人間でも使うことができる。


「それが魔剣か」


「ああ」


「中身がないから、外から力を奪う」


「そうだ」


 最初には、その剣となった精霊王の力がいくらか残っている。


 だが、使えば減る。


 失った力を補うため、人や魔物、精霊術、自然環境から力を吸い取って蓄える。


「グラウスの剣にも、精霊王の意思はない?」


「ない」


「先代の意思も?」


「ない」


 あの剣にあるのは、先代から奪った火だけだった。


 記憶も人格もない。


 先代本人が、グラウスの剣として使われているわけではない。


◆ 生きた剣と死んだ剣


「生きた精霊剣は、自分で人間を選ぶ」


「ああ」


「魔剣は、持った人間を拒めない」


「ああ」


「精霊剣なら、自分で力を加減できる」


「魔剣は、使う人間が無理に引き出す」


 グラウスが魔剣を分かりやすいと言った理由が、少し見えた。


 剣は何も望まない。


 誰を信じるかも決めない。


 持ち主が求めれば、蓄えた力を出す。


「グラウスは、精霊王に選ばれなかったから魔剣を使ったのか」


「本人の話が本当なら、そうだろう」


 先代イフリートは、グラウスをある程度認めていた。


 だが、精霊剣として身を預けるほどには信頼しなかった。


 だからグラウスは、意思を持たない剣を選んだ。


「選ばれなかったのではなく、選ぶ必要がないものを奪った」


「そういうことだ」


 部屋の外で、床板が鳴った。


◆ 祖父


「ずいぶん大きな話をしているな」


 祖父が戸口に立っていた。


 手には、湯気の立つ器が二つある。


「聞いていたのか」


「この家は壁が薄い」


 祖父は器を置き、寝台の近くへ座った。


「精霊王自身が剣になる。死ねば、意思のない剣が残る」


 シアを見る。


「その話は、昔から一族に伝わるものと似ている」


「一族の伝承?」


「お前には話していなかったな」


 祖父がセトへ言う。


「白刃と黒刃を教えるだけで、昔話まで聞かせる必要はないと思っていた」


「今は必要になった?」


「魔剣を持った者が、同じ術を使ったのだろう」


「ああ。白刃も黒刃も使った」


「名は?」


「グラウス」


 祖父は、その名を聞いても顔色を変えなかった。


「個人としては知らん」


「なら、何が分かる」


「どの血筋かは見当がつく」



※第9話「二刀と精霊剣」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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