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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第53話 八門

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(四)八門と八門

◆ 八門と八門


 八つの火と八本の線が交わった。

 その外側へ、シアが滑る。

 ネアは進路をずらし、同じ距離を保とうとする。

 逃げている間に、七個の黒い核が向きを変えた。

 八本の線が再び伸びる。


 シアも七個の赤い核を動かした。

 先ほど放ったばかりの火と同じ術が、また八か所から走る。

 大きく構え直すことも、長く力を溜めることもない。

 四翼が外界から原光を取り込み、核と身体を一つの流れへつないでいる。

 撃つたびに核を満たし直すまで待つ必要はなかった。


 ただし、いくらでも力が湧くわけではない。

 連続して大きな火を放てば、蓄えられた原光は減る。

 それでも流れが途切れない限り、次の火を生むことはできる。

 出力を見極める余裕を捨て、シアは目の前の黒い翼へ向けて放ち続けた。


 ネアも同じだった。

 八本の線を伸ばした後、その向きを変えてもう一度放つ。

 すべてを同じ瞬間に動かせるからこそ、相手の通り道をまとめて塞げる。

 だが一本ごとに異なる術を選び、細かな動きを与えているわけではない。

 ネアは線が届く空間を選び直し、七個の核と自身を同じ方向へそろえた。


 赤い火を受ければ、身体が焼ける。

 黒い線へ触れれば、身体の流れが崩れる。

 互いにそれを知っている。

 だから止まることはない。

 かわした直後には次の攻撃が来る。

 一度離れても、距離を詰め直す間に別の八門が走る。


 星の縁で、赤い光と黒い線が何度も交差した。

 音のない場所で、戦いの間隔だけが短くなっていった。


◆ 逃げ道を狭める


 ネアは大きく横へ動くのをやめた。

 これまで、火が届くたびに離れた場所へ逃げていた。

 しかし、シアの八門はその先へ向き直る。

 距離を開けても、次の八つが届くまでの時間が少し延びるだけだった。


 ネアは火の間へ入った。

 一つを曲げ、残る火の通り道から身体を外す。

 その時には黒い核も、シアへ向きをそろえている。

 八本の線が走った。

 シアはネアの真正面にいたため、横へ逃げるしかない。

 そこには、黒い線が一本伸びていた。


 シアは急に速度を落とした。

 線が前を通り過ぎる。

 続けて四翼から火を噴き、別の角度へ飛ぶ。

 止まった場所へ、ネアの次の八本が伸びてきた。

 シアが避けたのを見てからではない。

 ネアはシアが止まりそうな位置へ、あらかじめ核を向けていた。


 シアは火を前方へ広げた。

 ネアが引く。

 だが、シアが狙ったのは今の位置だけではない。

 後退すれば火が広がる空間へ入るよう、七個の射点を横へ並べ直していた。

 ネアは後退をやめ、上方へ抜ける。

 そこへシア自身の火が伸びた。


 ネアは黒い線を重ね、火の端だけを横へ動かす。

 身体をさらに傾け、わずかな隙間を抜けた。

 シアはその直後に右手を伸ばした。

 届く前に、ネアの四翼が移動する。

 掴みかけた衣装が、指の先を抜けていった。


 互いに相手の動きを覚え、逃げる先を狭めていく。

 それでも、あと一歩が届かない。

 失った手足のことより、そのわずかな距離が二人を苛立たせていた。


◆ 欠けていく身体


 次の八門は、これまでより近い距離で交差した。

 ネアは黒い線を広げ、赤い火の通り道をずらす。

 そのうち一本が、ネアの右腕の外側を通った。

 身体ごとかわしたつもりだった。

 だが、腕だけが火の中へ残った。


 赤い光が右腕を包む。

 ネアは四翼で身体を引いた。

 肩の外側から先が、火の中に置き去りになる。

 失われた右腕は、赤い光の中で形を失った。

 ネアは残る左手を上げる。

 黒い核から、次の線が伸びた。


 シアは線をかわすため、斜め下へ移った。

 そこへネアの八本が走る。

 シアは四翼の火で方向を変え、線の一つを外す。

 別の一本が右脚へ触れた。

 その瞬間、脚の内側を通る原光が乱れ始めた。


 シアはさらに火を放つ。

 身体だけが先へ進む。

 右脚を形作っていた赤い流れは、その場で崩れ、もう元の形へ戻らなかった。

 シアの身体が横へ回る。

 四翼が流れを変え、回転を止めた。


 右脚がない。

 左腕もない。

 それでも七個の赤い核は残り、シアの周囲を動いている。

 ネアの右腕と左脚も戻らない。

 しかし、黒い四翼はまだ広がり、七個の核とつながっていた。


 二人が欠けた場所を見ることはなかった。

 欠けた場所を補うため、戦いを止めることもない。

 ネアは残った左手を向ける。

 シアは右手を伸ばす。

 それに合わせて、赤い火と黒い線が同時に走った。


 身体は少しずつ失われている。

 相手を消そうとする力だけが、失われずに残っていた。



※第53話「八門」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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