↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第52話 星の外へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
324/425

(六)壊れるもの

◆ 長い戦い


 星の明るい側で、シアがネアへ迫った。

 赤い四翼は強く光り、黒い翼は光を受けても黒いままだった。

 ネアが火を曲げ、シアが別の方向から接近する。

 相手を見失うことはなくなったが、簡単に攻撃が届くわけでもない。


 やがて、二人の周囲の景色が暗くなった。

 星の影へ入り、下に見える大地も光を失っていく。

 それでも赤い翼は赤く光り、黒い四翼の輪郭も消えない。

 昼であっても夜であっても、二人を維持する四翼の流れは途切れていなかった。


 さらに進むと、星の縁から光が戻った。

 その間も戦いは続いていた。

 幾度か明るさが変わり、地上の景色が入れ替わる。

 二人は回数を数えない。

 数えなければならない理由がなかった。


 シアの身体に疲れは現れない。

 ネアの動きも鈍らない。

 息をする必要がなく、食事や睡眠を求めることもない。

 四翼は外界の原光を集め、使った力を補い続けている。

 放出した力がすべてその瞬間に戻るわけではないが、戦いを続けるための流れは保たれていた。


 地上の戦闘なら、相手が力を使い果たすまで待つという選択もあり得た。

 今は、どちらもそれを期待できない。

 自分が弱らないように、目の前の相手も簡単には弱らない。

 その事実だけが、長い時間の中で明らかになった。


 シアは、自分の周囲を巡る赤い分霊核を見た。

 最初から持っていた二個だけではない。

 回収して間もなかった五個にも、戦闘の間に原光が流れ込み続けていた。

 器の内側の空白は、少しずつ小さくなっていた。


◆ 七つの蓄え


 シアの周囲を巡る七個の赤い分霊核は、長い戦いの間も四翼から力を受け取っていた。

 最初から持っていた二個は、接近するための火を何度も補っている。

 新たに集めた五個には、まだ空きがある。

 だが、何度も星の明るい側と暗い側を巡るうち、その内側にも赤い光が広がっていた。


 シアはその変化を細かく確かめなかった。

 力が足りなければ集める。

 必要なら使う。

 それだけで、これまで動き続けることができた。

 七個の器がどれほど満ちたのかより、目の前の相手がまだ消えていないことの方が気になっていた。


 ネアの周囲にも七個の黒い核がある。

 それらも四翼の循環へつながり、少しずつ力を蓄え続けていた。

 ネアはシアの放った火を横へ逃がし、自分の位置を変える。

 近づいてきた拳をかわしても、赤い姿はすぐに追ってくる。

 どちらかが力を使い果たす気配はなかった。


 シアはネアの移動先へ手を伸ばした。

 黒い四翼が横へ滑る。

 指先は衣装の手前を通り、空を切った。

 今度も届かない。


 シアは振り抜いた腕を戻した。

 これほど近づいても、相手は最後に身体を外す。

 近づけば近づくほどよいとは限らない。

 相手のいる場所だけを狙うから、かわされる。

 シアは七個の核を伴ったまま、正面からの追跡をやめた。


 ネアは、赤い姿が離れていくのを見た。

 逃げたのではない。

 シアはネアから目を離さず、少し離れた場所で止まった。


◆ 壊れるもの


 シアが距離を取っても、ネアは追わなかった。

 相手が近づいてこないなら、自分から拳の届く場所へ入る必要はない。

 黒い四翼を開き、離れた場所で止まった赤い姿を見ていた。


 シアの周囲を巡っていた分霊核が動いた。

 一個、また一個。

 七個の赤い玉が身体の左右へ移り、横に並んでいく。

 シアもその場で片手を上げた。

 赤い四翼から、細い火の流れが核へ伸び始める。

 離れたネアの瞳にも、並んだ赤い光が映っていた。


 地上で戦っていた時には、岩があった。

 雲があり、風があった。

 外れた攻撃は山へ届き、砕いた岩が次の進路を塞いだ。

 それらは今、二人の間に存在しない。

 足元に星はある。

 けれど、目の前の黒い翼へ向かって火を放つ道には、何もなかった。


 シアの唇が動いた。


「壊れるものがなくなったから撃てる」


 声はネアへ届かなかった。

 シアも、相手へ聞かせるつもりで言ったわけではない。

 ただ、口にした言葉だけが、わずかに意識へ引っかかった。


 壊れるものがなくなったから?


 地上には山も、森も、人間の町もあった。

 だが、今のシアにとって、それらは壊れてもよいものだったはずだ。


 では、なぜ今まで撃たなかった。


 分からない。


 分からないものは、また沈んだ。


 シアは八つの赤い光を、ネアへ向けた。

 炎が満ちていく。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。