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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第51話 互いを消す

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(一)同じ結論

◆ 二つの光


 赤い光が、山脈の上を一直線に進んでいた。

 別の方角からは、黒い光が近づいている。

 どちらも街道へ沿わず、山を避けることもしない。遠くに感じる強い存在へ向け、最短の線を飛んでいた。


 シアの背中には四枚の赤い翼が開いている。

 七個の赤い分霊核が、身体の周囲を一定の間隔で巡っていた。回収したばかりの五個には、まだ空いた場所がある。四翼は飛行を続けながら原光を取り込み、その器へ少しずつ蓄えていた。

 力を集めるために速度を落とす必要はない。核だけを別に運ぶ必要もなかった。


 黒い光の中心にも四翼があった。

 ネアの周囲を七個の黒い分霊核が巡る。長い袖と羽衣が、羽ばたかない翼の流れに合わせて漂っていた。

 先ほどまで二人がいた土地は、すでに遠い。


 二人の速度はほぼ等しかった。

 距離が縮むほど、互いに感じる力ははっきりしていく。

 分霊核を探した時の空白ではない。そこには、外界の原光を絶えず取り込み、動き続けている何かがあった。


 しかも、つながっている。

 精霊力を飛ばして結んだ線はない。どちらかが念話を送っているわけでもない。

 それでも、以前から触れていたもののように感じる。


 シアは速度を緩めなかった。

 ネアも同じだった。

 何者かは、見れば分かる。見た後にどうするかを、今から考える必要はなかった。


 山と山の間へ、幅の広い谷が現れた。

 赤と黒の光が、その上空へ同時に入っていった。


◆ 目の前の存在


 谷の上で、シアが相手の姿を捉えた。

 黒に近い長い髪。白銀の衣装。肩の周りを流れる羽衣。

 その背中から、半透明の黒い四翼が斜めに開いている。

 七個の黒い玉が、翼の循環から外れずに浮いていた。


 ネアからも、赤い四翼が見えた。

 白い軽装をまとった少女。赤橙色の髪。その左右に漂う、七個の赤い玉。

 羽ばたく様子はないのに、赤い姿は減速しながら空中へ止まろうとしている。


 二人の距離が急速に縮まった。

 このまま進めばぶつかる位置で、赤と黒が同時に静止する。

 地上には川が走り、両側の山腹は遠い。二人を支える足場は、どこにもなかった。


 出発した場所から、それぞれが進んだ距離もほとんど同じだった。

 再会した場所は、まさしく中間地点だった。


 シアは黙って相手を見た。

 ネアも言葉を発さない。

 四翼。七個の器。外へ広がった循環。そこまで似ていても、流れている力は違っていた。


 シアには自分の火が分かる。

 赤い器はすべて火の流れへつながっている。しかし目の前の黒い翼には、その火がない。

 ネアが感じているのは月の流れだった。黒い器はすべて自分とつながっているのに、赤い翼はそこへ属していない。


 姿には、見覚えがあるように思えた。

 だが、その感覚は相手の名へ届かなかった。顔や衣装を見ても、今ここで判断すべきこととして浮かぶのは属性の違いだけだった。


 つながりは、確かにある。

 けれど同じ存在ではない。

 二人は無言のまま、その違いを確かめていた。


◆ 同じ結論


 シアは相手の周囲を巡る七個の器を数えた。

 ネアも赤い七個を見ていた。

 相手は弱くない。四翼を開き、自分と同じ数の分霊核を従えている。周囲の原光を取り込む速さも、身体を維持する流れも、自分とよく似ていた。


 だからこそ、無視できなかった。


 自分ではないものが、これほどの力を持っている。

 しかも、どこかでつながっている。

 つながっているのなら同じもののはずだ。ところが、その属性も、巡る力も異なっている。


 シアの中で、古い欲求が答えを出した。

 火の王は一つでよい。

 自分以外の王は必要ない。

 向こうにいるものが何者であっても、その判断は変わらない。


 ネアも同じ結論へ至った。

 月の流れへ含まれないものが目の前にいる。自分と同じ高さへ届く力を持ち、なおかつ自分ではない。

 残しておく理由が見つからなかった。


 二人とも、名前を尋ねなかった。

 相手がなぜ自分とつながっているかを確かめることより、その相手を消すことが先になった。

 そこに矛盾があると感じられても、判断を止めるほどではなかった。


 シアが右の拳を握る。

 背中の四翼へ赤い光が集まった。

 ネアは右手を下げたまま、黒い翼から幾筋もの細い線を伸ばす。

 周囲の原光が、二人の間で別々の方向へ動き始めた。


 消す。


 合図はなかった。

 先に敵意を向けられたから応じたのでもない。

 二人はそれぞれの意思で、まったく同時に動いた。


 谷の上で、赤い光が直線となり、黒い光がその進路から滑るように外れた。



※第51話「互いを消す」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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