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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第8話 奪われた炎

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(六)仕上がりつつあるもの

◆ 吸い取られる力


 シアの髪から、赤い輝きが失われていく。


 周囲に燃えていた火が、一斉に小さくなった。


 セトの足元に残っていた炎も消える。


「シア!」


「剣を……離せ」


 声が弱い。


 シアは自分で魔剣をつかもうとした。


 手に火が生まれない。


 指先へ集まった赤い光まで、刀身へ吸われていく。


 セトは白刃を作る。


 グラウスの腕を斬ろうとする。


 グラウスは剣をシアから引き抜き、後ろへ下がった。


 白刃が空を切る。


 支えを失ったシアの体が傾く。


 セトは抱き止めた。


 軽い。


 もともと人間より軽かったが、今はさらに存在そのものが薄くなったように感じる。


 赤黒い魔剣の中では、奪われた炎が激しく燃えていた。


◆ 仕上がりつつあるもの


 グラウスは、倒れたシアを見下ろした。


「人間をかばうか」


 赤黒い剣を持ち上げる。


「本格的に仕上がってきているようだな」


「さっきから、何を言っている」


 セトがシアを支えながら睨む。


「何が仕上がる」


「今のお前たちに教える必要はない」


「答えろ!」


 白刃が伸びる。


 セトはシアを片腕で支えたまま、グラウスへ斬りかかった。


 動きは乱れていた。


 グラウスは避けることすらせず、魔剣で受けた。


 白刃の力が吸われる。


 刀身が細くなる。


「怒りで剣を振るうだけでは、私には届かん」


 グラウスが白刃を押し返した。


 セトの腕が上がる。


 その腹へ、蹴りが入った。


 セトはシアを離さないよう体を丸めた。


 二人まとめて道へ倒れる。


◆ 立てないシア


「シア」


 セトが呼ぶ。


 シアは目を開けている。


 意識はある。


 だが、自分で立ち上がろうとしても、腕に力が入らなかった。


「火が……出ない」


「出さなくていい」


「まだ、戦える」


「立ててないだろ」


「セトも、立てていない」


「俺は立つ」


 セトは地面へ白刃を突き、杖のようにして体を起こした。


 脚が震える。


 肩と脇腹から血が流れていた。


 それでも、シアを背後へかばうように立つ。


 グラウスは追撃しなかった。


「なぜ止まる」


 セトが尋ねる。


「今なら俺たちを殺せるだろ」


「そうだな」


 グラウスは魔剣の中に増えた火を見た。


「だが、今殺すのは惜しい」


◆ 今は殺さない


「惜しい?」


「そのイフリートは、まだ完成していない」


 グラウスが言う。


「人間へ力を預けた。人間をかばった。だが、まだ足りない」


「何の話だ」


「いずれ分かる」


 グラウスは赤黒い剣を鞘へ収めた。


「次に会う時まで、その少女を生かしておけ」


「お前に言われるまでもない」


「できれば、もっと信頼されることだ」


 セトは白刃を構え直した。


「逃がすと思うか」


「追えるのか」


 グラウスがセトの肩を見る。


 白刃が揺れている。


 形を保つだけでも限界が近い。


 シアは地面に座り込んだまま、火を出すこともできない。


「今のお前たちでは、追うこともできん」


 否定できなかった。


◆ 神剣よりも


 グラウスは道の脇へ落ちていた大会賞品を拾った。


 偽物の魔剣。


 少量の精霊力が入れられただけの剣だった。


 刀身を一度見て、道の外へ投げ捨てる。


「こんなものを魔剣と呼ぶとはな」


「お前は、魔剣を何だと思っている」


 セトが尋ねる。


「意思を持たず、力だけを残す器だ」


 グラウスは自分の赤黒い剣へ手を置いた。


「誰を信じるかも、誰へ力を預けるかも考えない。蓄えた力を、持ち主へそのまま渡す」


「だから分かりやすいのか」


「ああ」


 グラウスはセトとシアを見る。


「神剣は面倒だ。力を持っていながら、使い手を選ぶ」


「神剣とは何だ」


「今のお前が知っても、扱えん」


 それ以上は答えなかった。



※第8話「奪われた炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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