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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第8話 奪われた炎

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(五)かばう炎

◆ 黒刃


 セトは右手を伸ばした。


 白刃ではない。


 黒い剣が現れる。


「ほう」


 グラウスが足を止めた。


「そちらも使えるか」


「お前だけじゃない」


 セトは黒刃を構えた。


 魔剣が精霊力を吸うなら、その術を崩す。


 黒刃であれば、赤黒い剣へ干渉できるかもしれない。


 グラウスが剣を振る。


 赤い炎が放たれた。


 セトは黒刃を当てる。


 炎が触れた場所から崩れていく。


 完全には消えない。


 残った火が腕と肩をかすめた。


 服が焼け、皮膚へ熱が走る。


 それでも、正面から受けるよりは弱い。


「通じる」


 セトは黒刃を握り直した。


 グラウスは満足そうにうなずいた。


「だが、一本ずつでは遅い」


◆ 一本ずつ


 グラウスの左手にある黒刃が消える。


 代わりに、白い剣が生まれた。


 高密度に集められた精霊力。


 セトの白刃と同じ系統の剣だった。


「白刃まで……」


「両方使えると言っただろう」


 右手に赤黒い魔剣。


 左手に白刃。


 グラウスは再び踏み込む。


 セトは黒刃で魔剣を受けた。


 触れた場所で、魔剣を包む火が乱れる。


 だが、左から白刃が迫る。


 セトは身を引く。


 肩へ白い斬撃が入った。


 血が散る。


 黒刃で受ければ、魔剣への対処が遅れる。


 魔剣を狙えば、白刃が届く。


 セトには、同時に二本へ対応する方法がない。


「白刃と黒刃を持っていても、一本ずつしか出さない」


 グラウスが言う。


「一族の教えをよく守っている」


◆ 切り替える隙


 セトは黒刃を消した。


 白刃を作る。


 グラウスの白刃を受ける。


 赤黒い剣から炎が放たれた。


 白刃を消す。


 黒刃を作る。


 炎を崩す。


 切り替えるたびに、短い隙が生まれる。


 グラウスはそのすべてを狙っていた。


 白刃を作る途中に、魔剣の柄が肩へ入る。


 黒刃を作る前に、白い斬撃が脇腹をかすめる。


 セトは後ろへ下がり続けた。


「セト!」


 シアが前へ出ようとする。


「来るな!」


「一人では勝てない」


「分かってる!」


 グラウスの白刃が振られる。


 セトは自分の白刃で受ける。


 魔剣が横から迫る。


 避ける場所がない。


 シアの小さな火が足元で弾けた。


 セトの体が押され、魔剣の切っ先を避ける。


 シアはまだ、後ろから支えていた。


◆ 狙われたセト


 グラウスはシアを見た。


「その人間が傷つけば、必ず助けるか」


「当然だ」


「では、これはどうする」


 グラウスの白刃が消えた。


 赤黒い魔剣を両手で握る。


 刀身から、大量の炎があふれた。


 セトへ向け、正面から踏み込む。


 速い。


 これまでよりも、さらに深い一歩だった。


 セトは黒刃を作る。


 炎を崩す。


 だが、魔剣そのものは止められない。


 赤黒い刃が黒刃へ当たる。


 衝撃で腕が上がった。


 黒刃の形が崩れる。


 グラウスはそのまま剣を振り下ろす。


 セトの肩から胸へ斬り込む軌道だった。


 避けられない。


◆ かばう炎


 赤い影が、セトの前へ入った。


「シア!」


 シアは背中をセトへ向けていた。


 両腕を広げたわけではない。


 ただ、グラウスとセトの間へ、自分の体を滑り込ませた。


 赤黒い剣が、シアの肩口から脇腹へ斬り込む。


 血は出なかった。


 代わりに、傷口から大量の炎があふれた。


「――っ」


 シアの体が大きく揺れる。


 赤い光が、剣へ引かれていく。


 火が細い流れとなり、傷口から赤黒い刀身へ吸い込まれていた。


「離れろ!」


 セトはシアの体を抱き、後ろへ引こうとした。


 だが、剣はシアへ食い込んだまま動かない。


 グラウスが柄を握る。


 魔剣の赤い光が強くなった。



※第8話「奪われた炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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