↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第48話 原初のシア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
296/425

(四)散る王

◆ 集まる火


 樹の精霊王が森の中から新しい枝を伸ばした。

 重の精霊王も、さらに多くの岩を浮かせる。


 先ほどまでなら、逃げ道を塞ぐ二つの攻撃だった。


 今は違う。


 シアには、二人の力が小さく感じられた。


 右手を上げる。


 それだけだった。


 森の中に残っていた火が動く。

 枝に付いていた炎。

 砕けた岩の間で燃えていた草。

 逃げながら放ち、そのまま木々を焼いていた火。

 小さな火も、消えかけていた火も、一斉に向きを変えた。


 シアは一つずつ呼んでいない。


 どこに火があるか探してもいない。


 手を上げた瞬間、周囲に存在する火が同じ流れへ入った。


「集まれって、言ってないのに」


 炎は森を無差別に焼き広げながら近づくのではない。

 すでに存在していた火が一本ずつ細い流れとなり、シアの掌へ重なっていく。


 集まった炎は大きく膨らまなかった。


 掌の前で圧縮され、白に近い赤へ変わる。


 以前なら原光を集め、火へ変え、形を整え、狙う。

 今は、その途中がない。


 そこにある火へ触れる。

 一つへする。

 押す。


 それだけでいい。


 樹の精霊王が両手を前へ出した。


 地面から幾重もの根が持ち上がった。

 集めた火は、その防御を見ても揺れない。

 以前なら相手の再生速度を見て出力を足した場面でも、今は必要量を考える感覚そのものがなかった。


◆ 防御ごと


 根の後ろへ太い幹が生まれる。

 さらに枝が絡み合い、何層もの壁を作る。


 以前、極炎でも簡単には抜けなかった防御だった。

 燃やしても、その奥から次が生える。

 表面を崩している間に、新しい層が追加される。


 樹の精霊王自身も、その奥で精霊力の膜を重ねた。


「生命は、増やさなければならない」


 樹の精霊王の声が届く。


 少し前のシアなら、また同じことを言っていると思ったはずだった。

 光の影響で役割だけを繰り返しているのかもしれないと考えた。


 今は、その言葉に興味がなかった。


 シアは掌を前へ押し出した。


 集まっていた火が、そのまま前へ進む。


 爆発ではない。

 炎の塊を投げたのでもない。


 押し出された火が、シアと樹の精霊王を一本の流れでつないだ。


 最初の根が燃える。

 その後ろの幹も燃える。

 新しい枝が伸びるより先に、赤い流れが中心を抜ける。


 精霊力の膜へ届く。


 一枚。

 二枚。


 止まらない。


 防御の奥まで赤い流れが通り、そのまま樹の精霊王の片腕へ届いた。


 腕が、防御ごと吹き飛んだ。


 樹皮に覆われた腕が途中から消え、緑がかった精霊力の欠片が空中へ散る。


 樹の精霊王が初めて大きく姿勢を崩した。


「くそ! 散れ!」


 その声で、二人が左右へ分かれた。

 樹の精霊王は失った腕を庇うように森へ下がり、重の精霊王はシアとの間へ岩を滑り込ませる。

 二人とも、今度はシアから距離を取ろうとしていた。


◆ 散る王


 樹の精霊王は森の中へ入った。

 周囲の根が持ち上がり、その姿を隠す。

 失われた腕へ枝が集まり、新しい形を作り始めていた。


 重の精霊王は反対側へ跳ぶ。

 岩を軽くして持ち上げ、その陰へ身体を隠す。

 さらに別の岩を重ね、大小の岩を幾重にも並べていく。


 二人は別々の方向へ逃げた。


 先ほどまでのシアなら考えた。


 どちらを追うか。

 一人を追えば、もう一人から攻撃される。

 二個の分霊核をどう分けるか。

 逃げ道をどこに作るか。

 そもそも追う必要があるのか。

 ネアへ連絡するべきか。

 山小屋へ戻るべきか。


 選択肢はいくつもある。


 四翼を得た今なら、もっと多くの方法を選べるはずだった。


 なのに、答えは一つしか浮かばない。


 二人とも消せばいい。


「……」


 シアは何も言わなかった。


 その答えがおかしいと、まだどこかで分かっている。


 だが、別の方法を考える方が不自然に感じた。


 樹も重も、自分ではない王だ。

 ここにいる必要がない。


 シアの身体が前へ進む。


 地面を蹴らない。

 炎も噴き出さない。

 四翼は羽ばたかず、シアを森の上へ運んだ。


 強くなったから選べることが増えたはずなのに、思考の中から選択肢だけが減っていた。

 逃げる、見逃す、後回しにする。

 さっきまで普通にあった判断が、必要のない遠回りに見え始めていた。



※第48話「原初のシア」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。