↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第48話 原初のシア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
294/425

(二)一つの循環

◆ 外にある回路


 翼を通じて、周囲の原光が身体へ流れ込んでくる。

 身体の中だけではない。

 背中から伸びた四枚の翼を通り、外側へ大きな流れを作っている。


 取り込む。

 流す。

 余ったものを外へ逃がす。


 逃がした力は周囲の原光へ混ざり、別の場所からまた四翼へ入ってくる。


「身体の外まで……」


 今までのシアは、身体の内側で精霊力を動かしていた。

 分霊核は別の器として動かす。

 炎を出せば、自分の中から外へ放つ。

 周囲から原光を取り込む時も、一度自分の中へ通す感覚があった。


 今は違う。


 身体の外側にも流れがある。

 四翼を中心に大きな循環が作られ、シアの身体はその途中にあるだけだった。


 身体へ全部を押し込む必要がない。

 通しきれない分は翼から外へ流す。

 足りなければ外から取り込む。


 だから、大きな力を流しても内側だけが詰まらない。


 セトが極剣と絶剣で、自分の身体を通路にした姿が一瞬浮かんだ。

 あれは壊れながら無理に通していた。


 これは違う。


 最初から、身体の外まで含めて一つの回路になっている。


「これが……あの翼?」


 光の精霊王の四翼が、いくら壊しても周囲の原光を集めて戻っていた理由。

 その一端だけが、今なら分かる気がした。


 だが、その理解にも驚きは長く続かなかった。


 知っていた。

 そんな感覚が、また先に来た。


◆ 戻る身体


 肩へ赤い光が集まった。


 枝に貫かれ、最低限だけ塞いでいた傷が内側から埋まっていく。

 欠けた輪郭が戻る。

 右腕へ力が戻った。


 脚も同じだった。

 逃げるために大量の精霊力を使って戻した部分へ、四翼から新しい流れが入る。

 揺れていた輪郭が安定し、膝から力が抜けなくなった。


 シアは右手を握る。

 開く。

 脚を軽く曲げる。


 全部動く。


 治そうとは考えていなかった。

 肩を先にするか、脚を先にするかも選んでいない。


 四翼を巡る流れが、壊れた身体をそのままにしておかなかった。


「……治った」


 そう口にした。

 だが、嬉しいとは感じなかった。


 少し前まで、肩から漏れる力をどう減らすか考えていた。

 脚を戻さなければ逃げられないと焦っていた。

 身体の形を戻すたび、残る精霊力を気にしていた。


 今は違う。


 壊れれば、流れが戻す。

 足りなければ、外から入る。


 身体が戻ったことは、特別な出来事に思えなかった。


 その方が、シアにはおかしかった。


「私、こんなのだったか?」


 疑問は浮かぶ。

 けれど、答えを考える前に周囲の原光がまた四翼へ入った。


 身体が満たされる。


 疲労も、痛みも、少しずつ遠くなっていった。


 それと一緒に、肩を貫かれた時の怖さまで遠くなっていった。

 傷が消えたから怖くなくなったのではない。

 傷つくこと自体を、さっきほど大きな問題として感じなくなっていた。


◆ 一つの循環


 二個の分霊核が動いた。


 シアは呼んでいない。

 命令もしていない。


 右に浮いていた一個が、四翼の流れへ入る。

 左の一個も同じだった。


 二個の赤い核へ原光が通る。

 内部に残っていた精霊力と、四翼を巡る流れが境目なくつながっていく。


「勝手に……いや」


 勝手ではない。


 シア自身が動かしたのでもない。

 核が自分から判断したわけでもない。


 四翼の循環に入ったことで、別々に扱う必要がなくなった。


 シア。

 右側の分霊核。

 左側の分霊核。


 今までなら三つの場所だった。


 一個を攻撃へ回す。

 もう一個を防御へ置く。

 シア自身は別の炎を作る。

 同時に動かす時も、三つへそれぞれ指示を出す感覚があった。


 今は、一つだった。


 右の核へ力を送ろうとしなくていい。

 左の核を動かそうともしなくていい。

 シアが作る流れの中に、二個とも最初から含まれている。


 試す必要もなかった。


 同時に撃てる。

 別々にも撃てる。

 位置も変えられる。


 できることが、説明される前から分かる。


「これも、知ってた……」


 精霊翼が分霊核を強くしたわけではない。


 別の器だった二個まで、大きな一つの循環へ組み込んだ。


 その違いを、シアは知識としてではなく感覚で理解していた。

 核を二個とも遠くへ離してみようとは思わなかった。

 距離を試す必要もない。

 循環の中にある限り、自分の手足と同じように位置だけが分かる。



※第48話「原初のシア」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。