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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第47話 消えたくない

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(三)浮かぶ岩

◆ 増え続ける森


 北へ進むほど、植物の密度が高くなった。

 焼けた木の隙間から若い木が伸びる。

 細い幹は目の前で太くなり、枝を広げ、互いの隙間を埋めていく。

 草は膝を越え、シアの脚へ絡みついた。


 炎を広げる。

 草と枝が燃える。

 正面に道ができた。


 シアがそこを通り抜ける前に、地面から新しい芽が伸びた。

 焼けた木の根元から、別の枝が生える。

 燃えて崩れた幹を押しのけるように、森が戻っていく。


「樹の精霊王」


 以前に戦った相手だった。

 生命を増やし、大地を森で覆う。

 創世期には必要だった役割を、今の世界でも加減せずに続けている。


 火を使うシアは、本来なら樹に対して有利だった。

 燃やせる。

 崩せる。

 だが、焼いた量より多く増え続ける。


 以前はネアが周囲の原光を止め、成長そのものを止めた。

 今、ネアはいない。


「面倒なのがいるな」


 二個の分霊核を前へ出す。

 一個目で右側の森を焼く。

 炎が消える前に、二個目を左へ動かす。

 別の方向から枝を焼き、通れる場所を広げる。

 シア自身は正面を燃やした。


 三か所から時間をずらして炎を放ち、森の再生が追いつく前に進む。


 樹の精霊王と戦うつもりはない。

 分霊核を探すことが先だ。


 だが森の奥から、樹とは別の大きな精霊力まで近づいてきた。


 後ろを振り返ると、さっき焼いて通った場所ももう狭くなっていた。

 入る時に作った道をそのまま戻ることすら難しい。

 進めば進むほど、前だけでなく後ろまで森に閉じられていく。

 単純に焼きながら引き返すだけでは、消耗の方が先に増えそうだった。


◆ 浮かぶ岩


 枝の間から白い空が見えた。

 その空へ、大小の岩が浮かび上がっていく。


 一つではない。

 森の外にも、森の中にもある。

 木の根に抱え込まれていた岩まで地面から抜け、枝を折りながら上がっていく。


「重の精霊王までいるのか」


 樹とは別の精霊力だった。

 重の精霊王は、岩を軽くして浮かせる。

 十分な高さへ持ち上げた後、急激に重くして落とす。

 広い範囲を、無数の岩で覆う戦い方を得意としている。


 本来なら、周囲の力を操作できるネアの方が相性はいい。

 シアは落ちてくるものを壊せる。

 だが、すべてを壊すには、その数だけ攻撃する必要がある。


 森の奥で、二つの人影が動いた。

 一人の周囲では木々が伸び続けている。

 もう一人の上空には岩が集まっていた。


 シアは足を止める。

 二人とも、以前に戦ったことがある。


「おい。私が分かるか?」


 樹の精霊王がシアを見る。


「生命は増やさなければならない」

「それは前にも聞いた。今はそんなことしてる場合じゃない。光の精霊王が暴れてる」


 返事はない。

 樹の精霊王の周囲で、新しい枝が伸びる。


 重の精霊王もシアへ顔を向けた。


「生命には、外からの衝撃が必要だ。何度も」

「それも前に聞いた! 今は私の話を聞け!」


 重の精霊王の上空で、さらに岩が浮かび上がる。


 言っていること自体は以前と変わらない。

 樹は生命を増やそうとする。

 重は、生命へ外からの衝撃を与えようとする。


 だが、こちらの言葉を聞いていない。

 光の精霊王のことを伝えても反応せず、自分たちの役割だけを繰り返している。


 眠りの王が動いた時に見た、水の精霊王が頭をよぎった。

 あの時のヴァルナも、普段とは明らかに違っていた。


「……まさか」


 樹の精霊王の背後で枝が広がる。

 重の精霊王が腕を上げ、浮かんでいた岩がさらに高く昇った。


「こいつら、眠りでも光でも狂うのか!」


 重の精霊王が腕を下ろす。

 浮かんでいた岩が一斉に落ち始めた。


 シアは炎を噴き出し、前へ跳んだ。

 直後、いた場所へ岩が落ちる。

 地面が大きく沈み、土と木片が弾け飛んだ。


 樹だけなら、まだ進める。

 重だけなら、まだ避けられる。


 二人同時となると話が違った。


 軽くされた岩は、上がる時には枝へ引っかかっても勢いが弱い。

 だが落ちる直前に重さが戻れば、木ごと地面へ叩き込む。

 森の中だから攻撃しにくい相手ではない。

 むしろ周囲に岩が多い分だけ、使える弾が増えている。



※第47話「消えたくない」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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