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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第47話 消えたくない

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(一)二つの空白

◆ 北へ


 シアは崩れた斜面を上り、北へ向かっていた。

 二個の赤い分霊核が、左右をついてくる。

 どちらにも精霊力は残っている。

 だが、十分ではない。


 光の精霊王との戦いで極炎を維持し、入った亀裂を何度も修復した。

 その後は、セトの精霊回路を止めないため、シア自身の力も送り続けた。

 二個の分霊核も、シアも、普段より大きく消耗している。


 それでも休んでいる時間はなかった。

 セトの精霊回路は治っていない。

 フィオラが、残っている流れを止めないよう調整しているだけだ。

 光の精霊王も倒していない。

 離脱するための時間を作っただけで、今もどこかで活動を続けている。


 今、確実に増やせる力は分霊核しかない。

 七個そろえたところで、光の精霊王に勝てる保証はない。

 それでも、二個のままよりはいい。


 山小屋を出る時、ネアとは別の方向へ進むと決めた。

 危険があれば連絡する。

 見つけても、見つけられなくても、戻る。


 シアは一度だけ振り返った。

 山小屋は、もう岩陰に隠れて見えない。


「すぐ戻る」


 小さく言い、シアは北へ進んだ。


 身体の方も万全ではない。

 極炎へ変わった時に受けた負荷は抜け切っておらず、力を広げるだけでもいつもより重い。

 だからといって、山小屋に残っていてもセトの回路を治せるわけではない。

 今のシアにできることは、使える力が残っているうちに探すことだった。


◆ 二つの空白


 街道だった場所まで来ると、シアは足を止めた。

 いきなり広く探す前に、左右へ浮かぶ二個の分霊核を見る。


「まず、こっちだな」


 自分の精霊力を熱へ変えず、地面に近い高さへ薄く広げた。

 力が二個の分霊核へ触れる。


 返ってこない。


 岩へ送れば、岩へ触れた感覚が返る。

 土なら少し鈍くなる。

 植物なら、形を変えながらも何かが戻る。

 だが火の分霊核へ入った精霊力は、その中へ吸収される。


 右に一つ。

 左に一つ。

 二か所だけ、はっきりと空白になる。


「これと同じのを探せばいい」


 シアは二個を少し遠ざけた。

 距離が変わっても、空白の感覚は変わらない。

 今度は一個を岩陰へ隠す。

 目では見えなくなったが、薄く広げた精霊力には一点だけ抜けた場所が残った。


 それで十分だった。

 赤い宝玉そのものを見つける必要はない。

 何かに包まれていても、建物の中にあっても、精霊力が届けば違いは分かる。


 シアは二個を自分の近くへ戻した。


 探す時に必要なのは、大きな炎ではない。

 広く、薄く、返ってくるものを見る。


 戦う時とは逆だ。


「こういうの、ネアの方が得意そうだな」


 言ってから、シアは肩をすくめた。

 今は自分でやるしかない。


 少なくとも、立ち止まって待っているだけでは新しい反応はない。

 探すには、自分の力を広げて周囲との違いを拾う必要がある。

 だからこそ、すでに持っている二個は探索の基準として使えた。

 同じ抜け方をする場所があれば、そこを確かめればいい。



※第47話「消えたくない」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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