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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第45話 極剣と絶剣

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(五)戻らない光

◆ 絶剣で受ける


 光の精霊王が散乱光を放つ。

 セトは絶剣を振った。

 全部を受ける必要はない。

 自分へ直撃する部分だけを黒い刀身へ集める。


 白い光が黒へ吸い込まれた。

 処理しきれない原光が、今度は止められることなく左手へ流れ込む。


 左腕の中で、細いものが何本も切れた。

 指の感覚が薄くなる。

 それでも絶剣は消えない。


 以前なら、ここまで壊れる前に黒刃が弱まり、術そのものが解除されていた。

 今は止める命令を外している。

 身体が壊れたことを理由に、刃は止まってくれない。


「左が遅れています!」


 ネアが外から流れを見ていた。


「何が」

「指先から肘まで、戻る流れがほとんどありません。次を同じ場所で受けないでください」


 セト自身には痛みより先に感覚が消え始めていた。

 握れているかどうかさえ、目で見なければ分からなくなりつつある。


「なら角度を変える」


 次の光へ、絶剣を斜めに置く。

 黒刃へ入れる位置をずらす。

 完全な解決ではない。

 身体の別の経路へ負担を分散しただけだ。


 受け止められる量が増えたのではない。

 自分の身体を、壊れる場所として追加しただけだった。

 ネアはそれ以上、同じ角度で受けるよう勧めなかった。

 絶光なら流れを外へ逃がす選択ができたが、絶剣ではセトの身体へ逃がす割合が増える。

 受けられるようになったのではなく、外から見えない場所へ損傷を移しただけだと、ネアにもはっきり見えていた。


◆ 極剣で返す


 絶剣から入った原光を、そのまま身体へ残すことはできない。

 セトは胸を通過した流れを右腕へ押し込み、極剣へつないだ。


 白い刀身が強く輝く。

 密度を細かく調整したのではない。

 接触する刃先だけを強めたわけでもない。

 人間が安全に扱える量を超えた原光を、身体と白刃へ一度に流している。


 光の精霊王が防御膜を重ねた。


「返す」


 極剣を振り下ろす。

 絶剣で受けた光が、白い奔流となって刀身から放たれた。

 防御膜の一枚目が割れる。

 二枚目へ亀裂が走る。

 極剣本体がその裂け目へ入り、三枚目まで切り開いた。


 白い人影の右腕が切断される。

 腕を形作っていた光が崩れ、湖へ降り注いだ。


「効いてる!」


 シアが叫ぶ。


「まだです」


 ネアは四翼を見ていた。

 周囲から原光が集まり、失われた腕を作り直し始めている。


 ただし、セトが返した光そのものは、先ほどまでとは違う動きをしていた。

 湖面へ散った白い粒が、すぐには四翼へ戻らない。


 光の精霊王の動きが、一瞬止まった。

 切り落とされた腕そのものは、別方向から集まった原光ですぐに形を戻していく。

 それでも、返された分がその修復へ参加していない。

 さっきまでなら、弾いた光の一部まで循環へ戻り、攻撃と回復がつながっていた。

 今は、その輪の一部だけが外へこぼれたままになっている。


◆ 戻らない光


 四枚の翼が大きく開く。

 周囲に散った原光が、いつものように翼へ引かれ始めた。


 だが、極剣から返した光だけは動きが鈍い。

 消えてはいない。

 湖面や空気中に原光として残っている。

 それでも、放たれた時と同じようには四翼へ戻らなかった。


「戻ってない?」


 シアが気づく。


「正確には、戻りにくくなっています」


 ネアが答える。


「絶剣で一度、元の流れを切っています。その後、セトの身体を通り、極剣から別の方向へ放出された。原光そのものが別の属性へ変わったわけではありませんが、元の循環から外れています」


 光の精霊王が翼を閉じる。

 すぐにもう一度開いた。

 白い人影が、散った光の方へわずかに向きを変える。


「止まった」


 シアが言う。


「戸惑っているのでしょうか」

「分からない」


 セトは極剣を構えたまま答える。


 光の精霊王に明確な自我は見えない。

 それでも、本来なら戻るはずのものが戻らないという変化には反応している。

 次の瞬間、四翼が再び光った。


「来る!」


 戸惑いは一瞬だった。

 攻撃そのものをやめたわけではない。

 ただ、四翼は一度余計に開閉した。

 回収できない光を拾おうとしているのか、別の流れを探しているのかは分からない。

 自我のない相手が何を考えたかではなく、循環へ戻らない現象そのものに反応が出た。

 それだけなら、目で見て確認できる事実だった。



※第45話「極剣と絶剣」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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