↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第45話 極剣と絶剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
274/424

(二)初めて外す

◆ 残った方法


「もう一度、私たちが剣になる」


 シアが前へ出た。


「次の一撃くらいなら押し返せる」

「その次は?」

「その時考える!」

「次で大きく割れたら、考える前に戻れなくなる」


 シアが言葉を止めた。


「分霊核で補えば」

「さっき使っただろ。残ってる量も見えてる」


 赤と黒の分霊核は、どれも戦闘開始時より明らかに弱い。

 修復へ使えば、別の場所から補助する力まで失われる。

 絶光と極炎へ戻しても、先ほどと同じ戦いをもう一度最初からできるわけではない。


「なら離れます」


 ネアが後方を見る。


「……と言いたいところですが、今は難しいですね」


 湖岸の後方まで白い光が広がっている。

 光の精霊王はセトたちを追跡しているわけではない。

 それでも攻撃範囲そのものが広すぎて、二人を人型のまま連れて安全圏まで走る時間がない。


 普通の白刃と黒刃では足りない。

 精霊剣へ戻せば二人が先に壊れる。

 分霊核も十分ではない。

 退路も今は開いていない。


 セトは左手へ集まる流れを見た。


「残ってる方法が、一つだけある」


 ネアの表情が変わった。

 シアも、セトの視線が黒刃の表面ではなく、その奥へ向いていることに気づく。

 それは新しく思いついた方法ではない。

 以前から存在だけは知っていて、セトが使わないと決め、二人もそれを受け入れたものだった。

 だからネアは、セトが続きを口にする前に何を選ぼうとしているのか分かった。


◆ 使わない方法


「それを使うつもりですか」


 ネアの声が低くなる。

 何を指しているのか、セトには聞き返す必要がなかった。


 以前、自分の白刃と黒刃の流れを調べた時、安全制限の位置だけでなく、その先も見えていた。

 黒刃で処理しきれない原光を左手から入れる。

 左腕を通す。

 胸を越えて右腕へ流す。

 白刃から外へ出す。


 頭の中では、すでに一本の経路になっていた。

 同時に、その経路を使えば精霊回路が摩耗し、やがて断裂することも分かっていた。


 回路を強くする方法ではない。

 限界を広げる方法でもない。

 壊れる前に止まる仕組みだけを無視する方法だった。


「使わないって決めただろ!」


 シアがセトの前へ回り込む。


「ああ」

「じゃあやめろ!」

「他にあるか」

「私たちが剣になる!」

「次で壊れる」

「セトも壊れるだろ!」

「二人よりはいい」

「よくない!」


 光の精霊王の四翼が広がった。

 話している間にも、白い光が翼の間へ集まっていく。


 セトはシアの横を通り、二本の刃を構えた。


「後ろへ下がれ」

「セト!」

「使える技じゃないのは分かってる」


 それでも、使わなければ今の光を越えられない。

 切り札として温存していたわけではない。

 成功率を上げるために練習してきた技でもない。

 使った後にどうなるかを知っているから、戦力から外していた。

 今それを数え直したのは、強い相手が現れたからではなく、数えていた手段が先に全部なくなったからだった。


◆ 初めて外す


 白い奔流が来た。

 セトは黒刃を正面へ置く。

 黒い刀身が光へ触れ、原光を奪い始める。


 すぐに安全制限が働いた。

 左手へ向かう流れが細くなる。

 黒刃の輪郭が薄くなる。

 左腕がわずかに後ろへ引かれた。


 セトは、最初の停止を無視した。


 黒刃の出力が戻る。

 今まで周囲へ逃がしていた量より多くの原光が、左手へ押し寄せた。

 次の瞬間、流れが手の直前で再び止まる。


「ここか」


 セトは意識して、その停止も外した。

 原光が左手へ入った。


「っ!」


 熱くはない。

 冷たくもない。

 手の内側を、太い何かで直接削られたような感覚だった。

 指が一瞬開きかける。

 身体が黒刃を手放そうとしている。


 握る。


 原光がさらに入る。

 手首へ届く。

 そこでまた流れが絞られた。

 身体は一度では諦めない。

 場所ごとに、これ以上先へ通すなと止めてくる。


「セト、やめろ!」


 シアの声が背後から届く。


「まだ入口だ」


 ここで止めれば、黒刃へ集めた原光を処理できない。

 セトは手首の先にある制御も外した。


 原光が左腕へ流れ込んだ。

 黒刃の輪郭は逆に安定した。

 今まで身体へ入る分を止めるために、刃そのものを弱めていたからだ。

 刃だけを見れば、むしろ調子が良くなったようにさえ見える。

 その代わり、黒刃が受けきれなかった負担は消えていない。

 行き先が左腕へ変わっただけだった。



※第45話「極剣と絶剣」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。