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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第44話 光を弾く二本の剣

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(五)見えているもの

◆ 二本目の亀裂


 光の精霊王から全方向へ光が広がった。

 収束していない。

 近距離から周囲すべてを押し流す散乱光だった。


 セトは絶光を振る。

 一方向へ流すだけでは足りない。


 右へ。

 左へ。

 上へ。


 黒い刀身を連続で動かし、光の流れを細かく分ける。

 極炎の加速でその間を抜けようとするが、光の範囲が広すぎた。


 一筋が正面へ残る。

 絶光を返して受ける。


 白い光が黒い刀身の中央へ衝突した。

 左腕へ重い衝撃が走る。

 絶光の表面に細い白い線が生まれ、刀身の中央から鍔の近くまで伸びた。


『割れました』

「直せるか」

『直します』


 二個の黒い分霊核が絶光へ近づく。

 周囲から原光を奪い、刀身の欠けた形を作り直す。

 白い亀裂が黒く塗り潰されていった。


 修復はできた。

 だが、二個の黒い核はそろって光を弱めている。


「黒の補助は?」

『先ほどまでと同じには使えません』

「赤も一個落ちてる」

『うん』


 四個あった別射点のうち、三個がすでに修復へ力を使っている。

 剣は直っている。

 戦い方は、最初より狭くなっていた。

 黒い核を二つとも絶光の近くへ寄せた今、横から回り込む光へ別射点から触れる余裕はない。

 次に散乱光を受ければ、セト自身が剣を動かして処理する割合が増える。

 修復に成功するたび、次の防御が難しくなっていく。

 しかも、最初の極炎より絶光の修復には少し時間がかかった。

 同じ亀裂でも二度目の方が遅い。

 核の残量が減った影響なのか、ネア自身の消耗なのかは切り分けられない。

 ただ、次も同じ速さで直せる保証はなかった。


◆ 役割を入れ替える


「一回、逆を試す」


 セトが二本を構え直す。


『逆?』


 シアが聞き返す。


「極炎で正面を押す。絶光を攻撃側へ回す」

『できますが、長くは持ちません』


 ネアが答える。


「一回だけだ」


 光が来る。

 今度は極炎を正面へ向ける。

 赤い炎が白い流れへぶつかり、力任せに左右へ押し広げた。


『重い!』


 シアの声と同時に、極炎の炎が急速に削られる。

 突破へ使う時より消耗が大きい。


 その隙間からセトは絶光を伸ばした。

 黒い刀身が光の精霊王の白い膜へ触れる。


 膜を構成する原光が抜ける。

 一部は消える。

 だが、極炎のように押し裂いて奥へ届く勢いはない。

 膜の一角を薄くしたところで、反対側から白い光が流れ込んだ。


『切り崩す速度より、戻る方が早いです』

「やっぱり役割は逆にしない方がいいな」


 セトは絶光を引き、極炎を正面から外す。

 シアが大きく息を吐くような気配が伝わった。


『極炎は道を開けて突っ込む方がいい』

『絶光は流れを制御する方が効率的です』


 二本あるから何でもできるわけではない。

 極炎には極炎の役割があり、絶光には絶光の役割がある。

 役割を入れ替えても、光の精霊王との差は埋まらなかった。

 絶光は原光を奪えるが、触れた瞬間に相手の全身を消せるわけではない。

 極炎は押し切れるが、正面から受け続ければその火力を防御へ使い潰す。

 二本は互いの代わりではなく、違う仕事を同時に成立させるから強い。

 その組み合わせでも届ききらないことが、今の問題だった。


◆ 見えているもの


 セトには、以前より深く精霊力の流れが見えていた。


 極炎の中を流れる赤い力。

 絶光の形を維持する黒い流れ。

 四個の分霊核に残っている力。

 シアとネアから自分の身体へ送られ、身体能力を引き上げている力。


 攻撃へ使われる分。

 偏向へ使われる分。

 亀裂を埋めるために失われる分。

 すべてが見える。


『まだ一回なら行ける』


 シアが言った。


「一回はな」

『なら、もう一度』

「その後は?」


 返事が止まる。


 極炎はまだ振れる。

 絶光も、もう一度なら大きな光を曲げられる。

 亀裂が入っても、修復そのものはできるかもしれない。


 だが、直した後に何が残るかまでセトには見えていた。


「次に大きく割れたら、直せるかもしれない。でも、その後に戻る分まで残るとは思えない」

『……』

「剣の形を維持するだけで二人自身を削る」


 分霊核の蓄えが尽きれば、最後に使われるのはシアとネア本人の力だ。

 武器が壊れる話ではない。

 二本の剣そのものが二人だった。

 セトに残量を数字で測ることはできない。

 だが、修復へ回った流れと、その後に戻ってこない太さは見える。

 次も直せるかではなく、直したあとに人型へ戻るだけの余裕を残せるか。

 そこまで含めれば、もう同じ一回ではなかった。


「先に尽きるのは、あいつじゃない」


 四翼はまだ周囲から原光を集め続けている。

 対してこちらは、一度直すごとに次の手を失っている。


「ここまでだ」



※第44話「光を弾く二本の剣」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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