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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第8話 奪われた炎

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(三)白炎と魔剣

◆ 白炎と魔剣


 セトが地面を蹴った。


 シアが足元へ火を置く。


 火を踏み、一気に加速する。


 白炎を振り下ろした。


 グラウスが赤黒い剣で受ける。


 白い火と赤い火がぶつかった。


 道の両側へ熱が流れ、木々が大きく揺れる。


 赤黒い剣が白炎の力を吸い始めた。


 だが、追いついていない。


 シアから渡された火が大きすぎる。


 吸われる以上の力を、セトが白刃へ流し続ける。


「押してる」


「ああ」


 シアがさらに火を送る。


 白炎が強くなる。


 グラウスの足が、石の上を滑った。


 赤黒い剣が押し下げられる。


 セトは白炎をいったん弱めた。


 力を刀身の形へ回す。


 受け止める感触が変わり、グラウスがわずかに体勢を崩した。


 その瞬間、再び炎を強くする。


 白い火が爆発するように広がった。


 グラウスの体が後ろへ押し飛ばされた。


◆ 通じた一撃


 グラウスは道を滑りながら、赤黒い剣を石へ突き立てた。


 ようやく止まる。


 旅装の肩が焦げていた。


 赤黒い剣を握る手から、薄く血が流れている。


「傷をつけた」


 シアが言う。


「まだ浅い」


 セトは白炎を構えた。


 腕が重い。


 シアの火に焼かれてはいない。


 だが、大きな力を白刃の形へ保ち続ける負担が、肩から指先まで広がっている。


「もう一度いけるか」


「セトが持てるなら」


「やる」


 グラウスが立ち上がった。


 傷を見ても、表情は変わらない。


「悪くない」


「余裕があるようには見えないな」


「力の大きさは十分だ」


 グラウスは赤黒い剣を軽く振った。


「だが、使い手の方が追いついていない」


 剣から火があふれる。


 先ほどシアから吸ったもの。


 それより前から蓄えられていたもの。


 そして、先代イフリートから奪った火。


 いくつもの炎が混ざり合い、赤黒い剣を包んだ。


◆ 先代の炎


 シアが息を止めた。


「それは……」


「分かるか」


 グラウスが剣を持ち上げる。


「お前の前にいたイフリートの力だ」


 赤い炎が揺れる。


 シアと同じ火。


 だが、シアのものではない。


 継承された知識の奥にある、火の属性としての近さ。


 それでも、そこに先代の意思はなかった。


 グラウスが剣を振る。


 炎が地面を走った。


 セトは白炎で斬る。


 白と赤の火がぶつかり、互いを押し合った。


 赤い炎の方が広い。


 白炎は細い。


 だが、セトは広がる火の中心だけを斬り、流れを左右へ分けた。


「右だ」


 シアが言う。


 セトは迷わず右へ動いた。


 左側を通った炎が地面を焼く。


 シアが見つけた火の薄い場所を、セトが進む。


 白炎を振る。


 グラウスが受ける。


◆ 剣技


 白炎と赤黒い剣がぶつかる。


 今度は、力ではセトが上だった。


 それでも、グラウスは押されない。


 白炎の強い場所を避け、刀身の根元へ赤黒い剣を当てている。


 白刃の向きをわずかにずらし、炎の流れを外へ逃がす。


 セトが力を込めるほど、剣先が目的の場所から外れていく。


「力だけでは剣にならん」


 グラウスが言う。


「知ってる」


「知っている者の動きではない」


 赤黒い剣が白炎の側面を滑る。


 セトの右腕が外へ開いた。


 グラウスは懐へ入る。


 肩がぶつかる。


 足を払われた。


 セトの体が傾く。


 倒れる前に、シアの火が足元で弾けた。


 押し戻され、体勢を立て直す。


 白炎を横へ振る。


 グラウスは身を引いた。


「人間の動きまで支えるか」


「悪いか」


「いや」


 グラウスの笑みが深くなる。


「ますますいい」


◆ 黒刃の割り込み


 セトが白炎で連続して斬り込む。


 グラウスは赤黒い剣だけで受けていた。


 シアの火が左右から迫る。


 正面には白炎。


 赤黒い剣だけでは、すべてに対応できない。


 グラウスの左手に、再び黒刃が生まれた。


 シアの火へ黒刃を向ける。


 炎を形作る精霊力が崩れ、赤い光が消えた。


 続けて白炎の側面へ触れる。


 白い炎が大きく乱れる。


「セト!」


「分かってる!」


 白刃へ力を集め直す。


 崩れた場所を再び固定する。


 その間に、赤黒い剣が迫った。


 セトは白炎で受ける。


 力を吸われる。


 反対側から黒刃が来る。


 白炎の形を崩される。


 二本の剣が、異なる方法で白炎を削っていく。


 シアが火を送る。


 セトが形を戻す。


 壊されるたびに、二人で作り直す。



※第8話「奪われた炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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