↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第44話 光を弾く二本の剣

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
268/423

(二)一度だけ曲がる

◆ 追わない


 光の精霊王が上昇した。

 翼は羽ばたかない。

 セトが距離を詰めるより早く、白い人影が斜め上へ滑っていく。


『右上に出る!』


 シアが移動先を読む。

 赤い分霊核の一個が動きかけた。


「追わない」


 セトは極炎の加速を切った。


『え?』

「決めただろ」


 そのまま岸側へ着地する。

 光の精霊王はさらに高く移動し、こちらを追わなかった。


『……追ってたら?』


 シアが尋ねる。


「一回は曲がれた。でも、次にまた向きを変えられたら終わりだ」

『自由飛行の相手へ、加速だけで追従するのは難しいですね』


 ネアが答える。

 極炎の加速そのものは速い。

 だが、速く進めることと、好きな方向へ連続で移動できることは別だった。


「予定通りにやって、ここまでだ」


 セトは光の精霊王を見上げる。

 絶光で道は作れた。

 極炎で接近もできた。

 それでも、相手が一度上へ外れただけで剣の間合いから消える。


『じゃあ、どうする?』


 シアが聞く。


「追うんじゃない。向こうが外れる前に、一回だけ曲がる」

『先に核を置く?』

「ああ」


 最初の接近で、失敗ではなく限界が一つ分かった。

 しかも、こちらが止まれば光の精霊王も追ってこない。

 無理に追跡を続けなければ、いったん距離を取り直す余地はある。

 それは谷で決めた通りだった。

 だからこそ、追いつけない事実を無視して同じ形を繰り返す理由はなかった。


◆ 一度だけ曲がる


 赤い分霊核の一個が、湖の右上へ大きく回り込んだ。

 もう一個はセトの近くへ残る。


『あそこまでなら届く』


 シアが言う。


「一回だけ使う。二回目は追わない」

『了解』


 光の精霊王が腕を向ける。

 細い光が三本に分かれて走った。


『二本を曲げます』


 絶光を振る。

 一本目を外へ。

 二本目を湖面へ。

 残った一本へ極炎を合わせる。


 赤い刀身と白い光がぶつかった。

 極炎を覆う炎が削られ、白く消えていく。


『押し切れる!』


 シアの声に合わせ、セトは右腕を押し込んだ。

 極炎が一瞬だけ強く燃える。

 白い光が左右へ割れ、その間を抜けた。


 光の精霊王が横へ滑る。


『今!』


 右上へ置いていた赤い分霊核が炎を放つ。

 セトはその放出へ極炎の加速を重ねた。

 直進していた身体が、一度だけ右上へ折れる。


 自由に曲がったわけではない。

 先に置いた射点へ、進路を一回つなぎ直しただけだ。

 赤い核を今から相手へ追わせるのでは遅い。

 光の精霊王が動く前に置き、そこへ来た瞬間だけ炎を出す。

 外れれば、その核は次の曲がり角にはならない。

 使えるのは、読みが当たった一回だけだった。

 その代わり、当たりさえすれば自由飛行の相手にも一度だけ先回りできる。

 追従するのではなく、相手が来る場所へ先に射点を置く。

 同じ速さを得られなくても、間合いへ入る方法は残っていた。


 光の精霊王がさらに上へ逃げようとする。

 だが、その前に剣の間合いへ入った。


「届いた」


 セトは極炎を振り下ろした。


◆ 白い膜


 四枚の翼が同時に開いた。

 翼の表面を流れていた白い光が、人型の前へ集まる。

 次の瞬間、薄い膜が現れた。


 極炎が膜へ食い込む。

 炎が広がり、白い膜の中央へ赤い亀裂が走った。


「翼からか?」

『分かりません。ただ、翼の流れが動いた直後です』


 ネアが答える。


『考えるのは後! 今は割る!』


 シアの声が重なる。


「通せ!」

『分かってる!』


 極炎からさらに力が流れ込む。

 白い膜の亀裂が広がる。

 セトの右腕が押し込まれ、膜が二つに裂けた。


 切っ先が、その向こうの人影へ届く。

 だが触れる直前、光の精霊王が横へ移動した。


 極炎は肩に近い部分を浅く切る。

 白い輪郭が崩れ、人の形を作っていた光が湖面へ散った。


『浅い!』

「ああ」


 散った光が消えない。

 いくつもの粒へ分かれ、そのまま四枚の翼へ引かれていく。

 傷の周囲へ新しい白い光が集まり、崩れた輪郭を埋め始めた。


『離れてください!』


 ネアの声が鋭くなる。

 四枚の翼が、今度は外側へ大きく開いた。

 白い膜は人型の全身を常に包んでいたわけではない。

 極炎が届く直前に現れ、攻撃を受けた場所へ力が集まっていた。

 翼が防御そのものなのか、翼を通る流れを別の形へ回しただけなのかは分からない。

 ただ、何もないところから突然硬くなったわけではない。

 防御にも流れがあり、その前後ならセトにも見えた。



※第44話「光を弾く二本の剣」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。