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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第43話 鍵のかかった知識

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(四)柱と礎

◆ 大地へ残す


 ネアが次に拾ったのは、役割と知識を自分の内側から外へ出す方法だった。


「自分の役割と知識を、大地の記憶へ焼き付ける方法です」

「……ミレナのことか」


 セトがすぐに気づく。

 ネアは頷いた。


「はい。過去の風の精霊王が実際に使っています」

「風の精霊王が人間に近づくために使ったやつ?」

「結果としてはそうなりました」


 過去の風の精霊王は、自分の役割と知識を大地側へ残し、自分だけで抱えない状態を作った。

 それによって精霊王としての在り方を弱め、人間に近い存在へ寄せた。

 そして人間との間に子を残した。

 大地へ残された役割と知識は、その精霊王に近しい存在へ渡り、子へ、その子孫へと継がれていった。

 長い時間を経て、その役割を受け継いでいたのがミレナだった。


「じゃあ、危ないだけの知識じゃないな」


 セトが言う。


「そうですね」


 ネアは自分の手を見る。


「必要な状況で正しく使われれば意味があります。ですが、役割と知識は精霊王が精霊王であることの大きな部分です。それを自分から切り離す方法でもあります」

「試して確かめるようなものじゃない?」

「はい。成功した時点で、自分の在り方が変わる可能性があります」


 ミレナという実例を知っているからこそ、単なる昔の禁じられた術では片づけられない。

 役割を未来へ残すこともできる。

 人と精霊王の間に、新しい継承の形を作ることもできる。


「でも、使い方を間違えたら戻せるか分からない」

「その通りです」


 これも箱の外にある。

 内容まで取り出せる既知の知識だった。

 それなのに、箱のすぐ近くへ置かれている感覚がある。


「悪い知識じゃなくて、重い知識か」

「その表現の方が近いですね」


 ネアは静かに答えた。


◆ 柱と礎


「もう一つある」


 シアが目を閉じたまま言った。


「柱」

「何の柱だ」

「建物じゃない。剣の中に誰かを入れる」

「精霊剣か?」

「違う。先に剣がある」


 シアは眉を寄せる。


「中身を失った剣みたいなものに、巫女……たぶん、人間を入れる。そうすると剣の力が上がる」

「それ、魔剣じゃないのか」


 セトが言う。

 ネアも同じところへ辿り着いた。


「構造だけを見るなら近いと思います。魔剣は、精霊王が死んだ後に残った空の剣状の器です。後から力を蓄えることができます」

「聖剣もあったな」

「はい」


 人間が聖剣と呼ぶものの中には、構造上は魔剣でありながら、人や魔獣から奪うのではなく、太陽光や火山、落雷など自然の力を長い年月かけて蓄えたものがある。


「でも、これは待たない」


 シアが言った。


「自然から少しずつ溜めるんじゃない。人間の側が、特別なやり方で力を入れる」

「巫女を剣に入れて?」

「たぶん。それを柱って呼ぶ」


 ネアが続ける。


「わたしには『礎』という表現が近く感じられます。空の器へ適合する人間を入れ、その存在で剣を補い、力を引き上げる。その程度までなら拾えます」

「入った人は戻れるのか」

「分かりません」

「中で意識が残る?」

「それも分かりません」


 実際に使われた例は、二人の継承知識には出てこない。

 方法の断片だけが残っている。


「その剣を、聖剣とか神剣って呼ぶこともあるみたいだ」


 シアが言う。


「魔剣なのに?」

「呼び名と構造は別なのでしょう」


 ネアが答える。


「聖剣と呼ばれていても構造上は魔剣だった例を、わたしたちは知っています。逆に、創界のように本当に神格由来の神剣もあります。名前だけで同じものとは判断できません」

「柱と礎の方は、空の器に人間側から特殊な方法で力を足す知識ってことか」

「今拾える範囲では、そう見えます」


 自然から長い時間をかけて蓄える聖剣とは違う。

 人間を剣へ入れ、その存在を支えとして出力を引き上げる。


「戻れるか分からないなら、十分ヤバいな」

「はい。試して確認する方法ではありません」


 その断片も、箱のすぐ近くにあった。



※第43話「鍵のかかった知識」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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