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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第42話 四枚の翼

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(六)三つの射点

◆ 三つの射点


 シアの手から一本の炎が放たれた。

 光の精霊王は真上へ動く。

 炎が下を通り過ぎた。


「右」


 一個目の分霊核が、移動先へ横から火を放つ。

 白い人影は身体の向きを変えないまま急停止した。

 その場から斜め後ろへ滑る。


「次」


 二個目の分霊核が、さらに退いた先へ炎を重ねた。

 今度は横へ移動する。


 三つの炎は同時ではない。

 移動先を一つずつ潰すように、シアが順番をずらしていた。


 それでも人影は、加速のための予備動作を見せない。

 止まる前に減速もしない。

 次の方向へ曲がるため、身体を傾けることもなかった。


「こっちみたいに曲がってない」


 シアが言う。


「移動を変えるたびに、新しい推進を作っている様子もありません」


 ネアが追う。


「三発目も避けた」

「十分だ。戻せ」


 セトが止める。

 シアは追加の炎を作らなかった。


 最後の炎が人影の近くで弾ける。

 白い光が広がり、炎を押し返した。

 散った白い粒子の一部が、再び四枚の翼へ流れ込む。


「やっぱり戻る」

「飛行と回収、どちらにも翼が関わっているように見えます」


 ネアの言葉どおり、試したかった二つは確認できた。


 三発の間に、翼そのものが大きく羽ばたくこともなかった。

 動いたのは外縁の光がわずかに強まった程度だ。

 飛行のための大きな動作を必要としないことも、これでほぼ確かになった。


 これ以上撃つ意味はなかった。


◆ 近づくほど


 光の精霊王の顔が、シアへ向いた。

 表情は見えない。

 怒りもない。

 ただ、炎が放たれた位置を認識したように、身体の向きが変わる。


「下がる!」


 セトが叫ぶ。

 光の精霊王が動いた。


 四枚の翼を開いたまま、湖の中央から岸まで一気に距離を詰める。

 羽ばたかない。

 力を噴き出さない。

 それでも、シアの炎による突進より速い。


 セトは白刃を短く作り、維持へ使わない原光を脚へ回した。

 右へ踏み込み、シアの腕を引く。

 ネアが二個の分霊核を後方へ残し、黒い線で光の精霊王の正面を覆う。


 白い光が線へ触れた。

 一本が曲がる。

 残りはそのまま突き抜けた。


「止まりません!」

「止めなくていい!」


 三人は隆起した岩の裏へ回る。

 直後、岩が白い光に貫かれた。

 岩全体が崩れるより早く、反対側へ抜ける。


 シアが炎を噴き、さらに距離を取った。

 ネアの分霊核が遅れて戻る。


 光の精霊王は追ってこない。

 一定の距離を離れると動きを止め、別の方向へ光を放った。


「追う気はない?」

「攻撃した位置には反応する。でも、離れれば終わりみたいだな」


 セトは高台へ向かいながら答えた。


 追撃をやめた境界が距離なのか、三人が大きな力を使わなくなったからなのかは分からない。

 ただ、どこまでも追い続ける相手ではないことは確認できた。

 それだけでも退路を考える材料にはなる。


◆ 壊せる翼か


 三人は湖を見下ろせる高台まで後退した。

 光の精霊王は、先ほどとほぼ同じ場所へ戻っている。

 四枚の翼を開き、周囲から原光を集め続けていた。


「翼を壊せば止まる?」


 シアが言った。


「分かりません」


 ネアはすぐに答える。


「あれが身体とは別に壊せるものかも不明です」

「でも、吸ってるのも飛んでるのも翼だろ」

「翼が原因なのか、流れが翼の形として見えているだけなのか。それもまだ判断できません」


 セトは四枚の膜を見る。

 輪郭はある。

 だが、物質としてそこにあるようには見えない。

 光が強まれば身体の周囲へ溶け、弱まれば再び形が浮かぶ。


「剣で切れるかも分からないな」

「試すなら、もっと近づく必要があります」


 近づけば、先ほどの速度で反応される。

 翼を狙うためだけに危険を増やし、壊せるかどうかも分からない。


「今は攻略法にしない」

「賛成です」


 翼は重要に見える。

 だからこそ、見た目だけで弱点と決めるべきではない。


「なら、分かったことだけ使う」

「飛ぶ。吸う。戻す。減りにくい」


 シアが指を折る。


「あと、近くで大きな力を使うと寄ってくる」

「十分面倒だな」


 セトの言葉に、シアも頷いた。


 重要そうだから先に壊す。

 そんな単純な判断で踏み込める相手ではなかった。

 今は機能を知っただけで十分だった。



※第42話「四枚の翼」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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