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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第42話 四枚の翼

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(三)戻る力

◆ 戻る粒子


 光の精霊王が空中で向きを変えた。

 四枚の翼がわずかに広がる。

 その動きに合わせて、周囲の原光が引かれた。


「来る」


 セトは黒刃を構える。

 だが、光は三人へ向かわなかった。

 湖の反対側へ細い光線が走り、岩場へ突き刺さる。


 白い粒子が広がった。

 その一部が、風とは違う動きで向きを変える。

 湖の中央へ戻っていく。


「今の、見えた?」


 シアが尋ねる。


「見えた」


 セトは光線が通った跡を見る。

 放たれた力の大部分は、地面を焼き、岩を崩すために使われた。

 だが、周囲へ散った白い粒子の一部は消えず、弧を描いて人影へ戻っている。


 粒子は身体へ直接入らない。

 先に四枚の翼へ触れた。

 薄い膜の表面を流れ、背の近くへ集まり、そこから人影の中へ消える。


「翼が受けてる」

「そのように見えます」


 ネアが答えた。


 戻った直後、人影を包む光がわずかに強くなった。

 ごく小さな差だったが、三人とも見逃さなかった。


「放った力を戻してる?」

「少なくとも一部は」


 全部なのか。

 どこまで戻せるのか。

 まだ分からない。


 だが、撃って終わりではないことだけは確かだった。

 しかも、戻る粒子は最短距離で直進していない。

 散った場所から一度大きく弧を描き、それぞれ別の角度から翼へ吸い寄せられている。

 風で戻ったのではなく、明確に光の精霊王の側へ向かっていた。


◆ 普通の取り込み


 シアが自分の手を開いた。

 周囲の原光が、少量だけ指先へ集まる。


「普通なら、こう」


 集めた原光は手から腕へ入り、シアの身体の中へ消えた。

 次の瞬間、反対の手に小さな炎が灯る。


「一回、自分の中に入れる。火にして出したら、出した分は減る」

「今の光の精霊王とは違う?」


 セトが尋ねる。


「違うように見えます」


 ネアが答えた。


「あちらは身体へ入る前から、翼の表面へ流れています。身体の外にも原光の経路が続いている」

「翼の中で回してる?」

「そう見えますが、まだ経路の全部は追えません」


 光の精霊王の四枚の翼へ、周囲から細い光が集まる。

 膜の内側へ消えるのではない。

 表面を這うように流れ、いくつかの線が背の近くへ集まっていく。


 通常の精霊王も、外から力を得る。

 だが、取り込んでから使う。

 少なくともシアとネアはそうだった。


「外に出したまま扱ってるのが違うのか」

「大きな違いだと思います」


 ネアは四枚から目を離さない。


「身体だけを器にしていないのかもしれません」


 翼は飛ぶためだけの形ではない。

 原光を身体の外で扱うための器官にも見え始めていた。


 シアは小さな炎を消す。

 取り込んだ分だけ、自分の中の蓄えが増えた感覚はある。

 だが、身体の外に力を置いたまま、同時に使い続ける感覚はなかった。

 そこはネアも同じだった。


◆ 撃たなくても


 光の精霊王は新しい光を放たず、しばらく空中へ止まっていた。

 それでも、四枚の翼へ向かう細い流れは消えない。


「今、何も撃ってないよな」


 セトが言う。


「うん。なのに集まってる」


 シアが空を見回す。

 翼へ向かっているのは、先ほど放たれた光の残りだけではない。


 空気中。

 湖の水。

 隆起した岩。

 伸び続ける草木。


 周囲に存在する原光が、細い流れとなって四枚の翼へ集まっていた。


「戻してるだけじゃない」

「はい。外からも取り込んでいます」


 ネアの声が低くなる。


「放った力が戻ってくる現象と、周囲から新しく集める現象は分けて考えるべきです」

「片方だけでも面倒なのに」


 シアが言う。


 光の精霊王が何もしていないように見える間にも、周囲の流れは止まっていない。

 待機が休息になっているのかさえ分からない。


「こいつにとっては、立ってるだけでも補給になるのか」

「そうかもしれません」


 ネアは断定しない。

 だが、少なくとも今は取り込みが続いている。


 撃っていなくても集める。

 撃った後には一部を戻す。


 二つの機能が同時に存在していることは、かなり確かになっていた。

 しかも、取り込む方向は一つではない。

 湖側からも、岸側からも、頭上からも細い流れが伸びている。

 四枚それぞれが別の流れを受けながら、最後には同じ人影へ集約していた。



※第42話「四枚の翼」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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