(三)残さない光
◆ 決められていない力
三人は、焼けた草地を進んだ。
足元では、灰の下から新しい芽が出始めている。
「光の精霊王は、何を作ろうとしてるんだ」
シアが尋ねる。
「まだ、光の精霊王によるものだと確定したわけではありません」
ネアはそう前置きした。
「ですが、これほど原光に近い力を広範囲へ流せる存在は限られます」
「何を作っているかは?」
「決めていないのかもしれません」
セトが周囲を見る。
樹属性なら植物を増やす。
土属性なら大地を動かす。
晶属性なら物質を結晶化する。
だが、ここではそのすべてに近い変化が、同じ場所で起きている。
「属性へ変える前の力を、そのまま撒いてる?」
シアが言った。
「おそらくは」
ネアが答える。
「流れ込んだ先の物質や精霊力が、それぞれ違う変化を起こしているのでしょう」
「なら、何が起きるか本人も決めてないのか」
「本人がいるのなら、ですが」
シアがネアを見る。
「どういう意味?」
「これまでの次代精霊王には、古い理屈であっても主張がありました」
樹の精霊王は、生命を増やそうとした。
氷の精霊王は、寒冷地を広げようとした。
土の精霊王は、大陸を動かそうとした。
現在の世界に合っていなくても、何をしようとしているのかは分かった。
「ここには、まだ何かを選んだ痕跡がありません」
ネアは、再び伸び始めた芽を見る。
「ただ、力だけが流れています」
◆ 作ったものを残さない
しばらく進むと、草地の一角だけが異様に高くなっていた。
白い光を受けた植物が絡まり合い、小さな林のようになっている。
「また増えた」
シアが見上げた。
太い茎が互いを支え、何本もの枝が空へ伸びている。
先ほどの草よりは形が安定していた。
その向こうで白い光が集まった。
「離れろ」
セトが声をかける。
三人が横へ移動した直後、光が林の中央へ落ちた。
白い光が膨らむ。
枝が消えた。
幹が折れる。
地面までえぐれ、さっき光によって生まれた植物の大半が崩れ落ちた。
シアが目を細める。
「自分で作ったのに」
「作ったと考えているかも分かりません」
ネアが答える。
「でも、残そうとはしてないな」
セトが崩れた林を見る。
植物を作ることが目的なら、育った場所を次の光で壊す理由がない。
大地を作り替えることが目的なら、持ち上げた地面を再び崩す必要もない。
「壊したいわけでもない」
シアが言う。
「壊した場所から、また生えてる」
「そうだな」
作ることが目的ではない。
壊すことが目的でもない。
起きている現象のどちらか一方だけを見れば、何かの役割に見える。
だが、その直後に自分でそれを否定するような変化を起こす。
「残すとか、完成させるとか、そういうのがない?」
シアが尋ねる。
「少なくとも、今見えている範囲では」
ネアが答えた。
「一つの結果を維持しようとしている様子はありません」
※第41話「混沌の光」は全七回です。
続きます。
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