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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第40話 限界を外す刃

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(三)受ける瞬間

◆ 受ける瞬間


「受ける方も試す」


 セトが言うと、シアがすぐに右手を上げた。


「撃つ?」

「弱くな」

「分かってる」


 シアの指先に小さな炎が灯る。

 ネアが横から確認する。


「今の白刃を崩すかどうかを見るだけです。強くしすぎないでください」

「分かった」


 小さな炎が飛ぶ。

 セトは原光を減らした状態の白刃で受けた。


 炎が刃へ触れる。

 白い輪郭が揺れ、刀身の中央が一瞬だけ細くなる。

 セトはすぐに炎を横へ流した。


「崩れかけた」

「今のままだと受けには弱いな」


 同じ強さでもう一度。

 今度は、炎が届く直前に刀身全体へ原光を戻す。

 両側の刃だけではない。

 中央と基部まで、一瞬だけ以前と同じ強さで固定する。


 炎が当たる。

 白刃は揺れなかった。


「今度は普通」

「受ける瞬間だけ戻した」

「斬る時とは違う?」


 シアが聞く。


「斬る時は、当たる側の刃へ寄せる。受ける時は、どこへ衝撃が逃げるか分からないから全体を固める」

「必要なところが違うのですね」


 ネアが言う。


「常に全部を強くしておく必要はない、という点は同じです」


 普段は、形を維持できるだけの力に抑える。

 攻撃を受ける瞬間には刀身全体を固める。

 自分から斬る瞬間には、相手へ触れる側の刃へ集中する。


 必要な時に、必要な場所だけを強くする。

 それだけで、同じ量の原光をより有効に使えた。


◆ 力を巡らせる


 セトは、白刃の維持へ使っていない原光を右腕へ戻す。

 手首から前腕へ。肩から胸へ。

 そこから右脚へ流した。


「刃へ使わない分を、身体へ戻してる?」


 シアが尋ねる。


「そうだ」


 セトは一歩踏み込む。

 普段よりも身体が軽い。

 極炎を持った時の強化とは比べものにならない。

 自分で集めた原光を、自分の身体へ戻しているだけだ。

 それでも、白刃の維持へ使わない力を踏み込みへ回すことはできた。


 もう一度、枯れ木の残った部分へ向かう。

 踏み込む時は脚へ。

 腰を回す直前には背中へ。

 振り始めれば肩と腕へ。

 接触する直前だけ白刃へ戻す。


 白刃が走る。

 先ほどと同じ程度の深さまで岩が切れた。


「さっきより弱くない」

「使った量は増やしてない」


 セトは構え直す。

 その瞬間には、白刃へ流す量をまた最低限へ戻す。


「ずっと強くしてない」

「必要な時だけだ」


 同じ動きを何度か繰り返す。

 踏み込み。振り。接触。構え直し。

 原光は一か所へ留まらず、その都度必要な場所へ移る。


「無駄が減っています」


 ネアが言った。


◆ 精霊剣でも


「それなら、身体への負担も減る?」


 シアが尋ねる。


「減る可能性はある。ただ、回路が強くなったわけじゃない」

「使い方が良くなっただけ?」

「今はそうだ」


 それでも意味はある。

 同じ量しか扱えないなら、無駄にしていた分を減らせば、その分だけ長く使える可能性がある。


「二本の精霊剣でも、似たことができればいいな」


 セトが言う。


「私とネアの力を減らす?」

「減らすんじゃない。必要じゃない場所へ流してる分があるなら、そこを減らす」

「極炎と絶光では、わたしたちも流量を調整しています」


 ネアが答える。


「ただ、セトの身体側でどう受けているかは、以前より細かく見えるようになっています。無駄があるなら、見つけられる可能性はあります」


 必要な場所へ、必要な時だけ力を送る。

 同じことを精霊剣でも行えれば、今より長く二人の力を扱えるかもしれない。


「このまま見ていけば、何か見つかるかもしれない」

「二本を使っても倒れない方法?」

「それを探してる」

「可能性はあります」


 ネアも否定しなかった。

 今まで見えなかった流れが見えるようになった。

 その先に解決策がある。

 セトは、そう思った。


◆ 黒刃へ向かう流れ


 次に、セトは黒刃の流れを調べた。

 左手を開き、剣状の領域から原光を排除する。

 光が欠けた場所が、黒い両刃剣の形となった。


 シアが指先へ小さな炎を作る。


「弱くしろ」

「分かった」


 小さな火が飛ぶ。

 黒刃へ触れた瞬間、炎が崩れた。

 火へ変換されていた原光が奪われ、形を保てなくなる。


 奪った原光の大部分は、黒刃の周囲へ散った。

 だが、ごく一部がセトの左手へ向かう。

 手首へ入る直前で、その流れは外へ押し戻された。


「身体へ向かう流れがある」


 セトが言った。


「入ったのですか?」

「いや。手首の前で止まった」


 黒刃そのものは、まだ形を保っている。

 吸収できる量にも余裕があった。


「もう一回」


 シアが同じ大きさの炎を作る。


「同じくらいにしろよ」

「同じ」

「先ほどとほぼ同じです」


 ネアも確認する。


 炎が飛ぶ。

 黒刃が崩す。

 散った原光の一部だけが、また左手へ向かった。


 止まる場所も同じだった。



※第40話「限界を外す刃」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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