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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第39話 人間がボトルネック

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(五)人間の番

◆ 回復


 その日は、ほとんど寝台の上で過ごした。

 昼過ぎに一度だけ立った。

 寝台へ手をつき、ゆっくりと腰を上げる。

 立つことはできた。

 だが、背筋を伸ばしたところで視界がわずかに揺れた。


「座ってください」


 ネアが言う。


「まだ立っている」

「立っていられるうちに座るのです」


 シアが反対側から腕を支える。


「倒れる前に座る」


 二人に戻され、セトは寝台へ腰を下ろした。


「歩けないな」

「朝よりは進みました」

「立っただけだ」

「朝は起き上がることにも失敗していました」


 翌朝には、部屋の中を歩けるようになった。

 昼には家の前まで出て、長椅子へ座った。

 二つの赤い分霊核と二つの黒い分霊核も、三人とともに外へ出る。

 四つとも、戦いの直後より光を取り戻していた。


「分霊核の方が早い」


 セトが言う。


「比較しないでください」


 ネアが答えた。


「でも遅い」


 シアが言う。


「否定はしませんが、競争ではありません」


◆ 強い光


 夕方、兵士が一通の報告を持ってきた。

 別の地域で、強い光が断続的に観測されているという。

 夜でも周囲が昼のように明るくなる。

 光が収まった後には、植物や地面の形が変わっている。


 植物が急に成長したかと思えば、次の光で焼け落ちる。

 地面が盛り上がり、その直後に崩れる。

 川の流れまで変わり始めているらしい。


「一つの属性だけには見えませんね」


 ネアが報告を読む。


「全部、光で起きてる?」


 シアが尋ねる。


「現地で確認しなければ分かりません」

「場所は?」


 セトが地図を広げた。

 今いる集落からは、数日かかる。


「明日の朝、さらに詳しい報告が届く予定です」


 兵士が答えた。


「分かりました」


 兵士が帰った後、シアがセトを見る。


「行く?」

「今は行かない」


 シアが少し目を見開く。


「自分から言った」

「今出ても、移動だけで余計に疲れる」

「妥当な判断です」


 ネアがうなずく。


「明日の報告を確認し、セトの状態を見て決めましょう」


◆ 次の戦いまでに


 次の異変が始まっている。

 完全な解決方法が見つかるまで、待ってはくれないかもしれない。


 身体が回復すれば、以前と同じように戦える。

 極炎を一本なら扱える。

 絶光も使える。

 二本同時でも、短時間なら動ける。


 だが、それだけでは問題がなくなったことにはならない。


「治った後も、限界は同じか」


 セトが尋ねる。


「同じ戦い方をすれば、同じ限界へ近づきます」


 ネアが答えた。


「休んだ分、昨日より長くは動ける」

「ええ」

「でも、最後は止まる」

「その可能性が高いです」


「なら、止まらない方法を探す」

「あるかは分かりません」

「まず、あるかどうかからだ」


 シアが二つの赤い分霊核を手元へ寄せた。


「方法がなかったら?」

「今ある限界の中で戦う」

「それだけ?」

「見つかるまではな」


◆ 人間の番


 夕方、四つの分霊核は三人の周囲で静かに浮かんでいた。

 二つの赤い玉には火が戻りつつある。

 二つの黒い玉にも、銀色の線が増えている。


 シアとネアは、休めば力を取り戻す。

 分霊核も、時間をかければ再び蓄えられる。

 増やせば、さらに多くの力を持ち運べる。


 だが、その力を三人の戦いへ束ねる時、必ず人間であるセトを通る。

 その人間が最初に止まれば、残った力は使えない。


「次は俺か」


 セトが言う。


「次?」


 シアが尋ねる。


「強くするものだ。今までは二人の分霊核を探していた」

「今度はセトを探す?」

「ここにいる」

「なら探さなくていい」

「方法を探すんだ」


 ネアが黒い分霊核からセトへ視線を移す。


「まずは、今あるものから考えるしかありませんね」

「ああ」


 シアとネアには、まだ先がある。

 分霊核にも、まだ力を蓄える余地がある。

 その力を止めている一番細い場所は、今は人間だった。

 だから次は、その人間自身の番だった。


作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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