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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第39話 人間がボトルネック

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(四)一番細い場所

◆ 一本ずつでは足りない


「同時に持たない」


 シアが言った。


「極炎で壊して、一度戻る。次に絶光で止める」

「切り替える間に、晶の精霊王が壁を作る」


 セトが答える。


「昨日は、壊すことと作らせないことを同時に行う必要があった」

「速く切り替える」

「精霊剣から人型へ戻り、もう一人が剣になるまでには時間がかかります」


 ネアが言う。


「一瞬で切り替えられたとしても、極炎を解除した間は突破力を失います。絶光を解除した間は、形成を止められません」

「一本で足りる相手もいる」

「ああ」


 セトがうなずいた。


「一本で足りるなら、二本持つ必要はない」

「ですが、昨日のような相手もいます」


 異なる二つの役割を、同時に果たさなければ届かない相手。

 その時、一本ずつ入れ替えるだけでは足りない。


◆ 一番細い場所


「シアとネアが弱いわけではない」


 セトが言った。


「当たり前」


 シアが答える。


「分霊核が足りないわけでもない」

「まだ増やせますが、昨日の戦闘に必要な量は残っていました」

「剣も二本あった。攻撃も通った」

「はい」

「それでも止まった」


 セトは自分の胸元へ手を置いた。


「ここで」


 シアが眉を寄せる。


「セトが弱いって話?」

「昨日の三人の戦いでは、俺が一番先に止まった」

「でも、セトがいなかったら塔に入れなかった」

「それと、先に限界へ達したことは別だ」


 シアは納得していない顔をした。

 ネアが引き継ぐ。


「単純な強さの比較ではありません」

「じゃあ何?」

「三人で一つの戦いをする時、最も早く動けなくなる部分が、全体の限界になります」


 シアとネアには、まだ力があった。

 四つの分霊核にも力があった。

 晶の精霊王へ届く手段もあった。

 それらを一つの戦いへ束ねる場所が、先に止まった。


「力を通す道が広くても、途中に細い場所があれば、そこで流れが詰まる」


 セトが言う。


「昨日は俺が、その細い場所だった」

「もっと分霊核が増えても?」


 シアが尋ねる。


「俺を通さず、二人が人型で使うなら意味はある」

「精霊剣なら?」

「使える力が増えても、それを使い切る前に俺が止まる」


 シアは赤い分霊核を見る。


「余る」

「ああ」

「もったいない」

「問題はそこではありません」

「でも、もったいない」

「それも問題ではあります」


◆ 人間が限界


「俺が三人の中で一番弱い部分だ」


 セトが言った。

 シアがすぐに口を開こうとする。

 セトは先に続けた。


「剣士として弱いという話じゃない。精霊王二人と分霊核の力を束ねる部分として、俺が一番先に限界へ達する」

「それなら分かる」


 シアは少し不満そうに答えた。


「言い方が悪い」

「ほかに短い言い方が思いつかなかった」


「私はまだ撃てた」

「ああ」

「ネアもまだ動けた」

「ええ」

「セトだけ立てなかった」

「そうだ」


 事実を並べれば、それだけだった。

 精霊王の力を強くするために分霊核を探した。

 その結果、力の蓄えと戦い方は増えた。

 増えたからこそ、それを受け取る人間側の限界が見えるようになった。


◆ 今できること


「分霊核探しは続けます」


 ネアが言う。


「ただし、分霊核を増やすだけでは、三人の戦力を十分に上げられません」

「次はセト」


 シアが言った。


「人を物のように言わないでください」

「セトを強くする」

「方法が分からないという話をしていたところです」


「探す」

「どこで?」

「人間に聞く」

「精霊剣の使い手自体がほとんどいないと言ったでしょう」

「ならセトが考える」


 シアは迷わなかった。


「セトは人間だから」

「ずいぶん簡単に任せるな」

「必要だから」


 セトは小さく息を吐いた。


「すぐに方法が見つかるとは限らない」

「それまでは、今の限界を前提にする必要があります」


 ネアが言う。


「二本を使う前に、解除する条件まで決めましょう」

「時間か?」

「時間だけではありません。腕や脚の反応が遅れた時点で解除します」

「あと一歩でも?」


 シアが尋ねる。


「ああ」

「本当に?」

「昨日の後なら分かる」

「セトがまだ行けると言っても、解除します」


 ネアが言った。


「ああ」

「私も止める」

「殴らずにな」

「必要なら殴る」

「必要ありません」



※第39話「人間がボトルネック」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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