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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第39話 人間がボトルネック

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(二)使い切れない強さ

◆ 一本と二本


 食事を終えた後、ネアは昨日までの戦いを順に確認した。

 重の精霊王との戦いでは、セトは極炎を二度使った。

 分霊核に残した力があったため、シアの火は二撃目にも足りていた。

 負荷を受けたのは、火を身体へ通し、剣を振ったセトだった。


 晶の精霊王との戦いでは、極炎と絶光を同時に扱った。

 シアが出力と火の制御を担当する。

 ネアが吸収と偏向、結晶形成の阻止を担当する。

 セトが二本の剣を持ち、身体、剣技、位置取りを担う。


「一本なら問題なかった?」


 シアが尋ねる。


「問題がないとは言えません」


 ネアが答える。


「ですが、今回ほど早く動けなくなることはなかったでしょう」

「二本だから?」

「二人分の力を、一つの身体で同時に受けていますから」


 極炎と絶光は、同じ力ではない。

 身体へ流れ込む量だけでなく、流れ方も違う。

 セトは二つを混ぜず、左右で別々に通しながら動いていた。

 それを長く続ければ、人間の身体が先に止まる。


◆ 休養不足だけではない


「完全に休んでいれば、もっと長く動けた」


 セトが言う。


「それはそうでしょう」


 ネアは否定しなかった。


「なら、今回は休みが足りなかったことも原因だ」

「原因の一つです」

「一つ?」

「十分に休んでいれば、限界へ達するまでの時間は延びます」


 ネアは二つの黒い分霊核へ目を向けた。


「ですが、わたしたちと分霊核の力が尽きるより、セトの身体が先に止まるという順番まで変わるとは思えません」


 分霊核は力を蓄えられる。

 休めば、シアとネア自身の力も戻る。

 集める数が増えれば、保持できる力はさらに増える。

 だが、セトの身体へ一度に通せる力が、それに合わせて増えるわけではない。


「次はもっと早く終わらせる」


 シアが言った。


「相手が短く終わらせてくれるとは限りません」

「もっと強く撃つ」

「セトがさらに早く止まります」


 シアは少し考えた。


「じゃあ、だめ」


◆ 増える力


「残りの分霊核も探すのか」


 セトが尋ねる。


「探します」


 ネアが答える。


「分霊核が不要になったわけではありません」

「増やせば、もっと戦える」


 シアが言う。


「シアとネアはな」

「セトも使える」

「精霊剣になれば、俺の周囲へ来る。だが、動かしているのは二人だ」

「そう」


「力が残っていても、俺が倒れれば精霊剣は解除することになる」

「昨日みたいに、戻ってから戦える」

「それも分霊核の利点です」


 ネアが言う。


「ただ、精霊剣でなければ突破できない相手に対しては、セトが動けなくなった時点で、最も有効な手段を失います」


 昨日は、晶の精霊王の防御をほとんど崩した後だった。

 そのため、シアとネアは人型へ戻ってから押し切れた。

 もっと早い段階でセトが止まっていれば、同じ結果にはならなかった。


◆ 使い切れない強さ


「二つの分霊核には、まだ力が残っていました」


 ネアが言う。


「シアにも、わたしにも残っていました」

「俺だけ使い切った」

「精霊力を使い切ったわけではありません」


 ネアはセトの言葉を正した。


「セト自身の原光は残っています。精霊回路も壊れてはいません」

「でも動けなかった」

「力があることと、それを流し続けられることは別です」


 セトの中に原光が残っていても、身体へうまく回らない。

 右腕へ力を送れば、肩と背中で滞る。

 脚へ送れば、踏み込む前に流れが乱れる。


 器の中身が空になったのではない。

 中に残っているものを、必要な場所へ運べなくなっていた。


「分霊核と似てる」


 シアが言った。


「中に火があっても、私が動かさないと撃てない」

「近いですが、セトの場合は動かそうとしても身体が応じなかったのです」

「もっと悪い」

「そうですね」



※第39話「人間がボトルネック」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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