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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第38話 重さと結晶

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(七)まだ残る光

◆ 二人の追撃


 晶の精霊王は、結晶の柱を何本も立ち上げた。

 シアへ向けたものだけではない。

 ネアとの間を塞ぎ、二人を分けようとしている。


「同じことする」


 シアが言う。


「先ほどより壁が薄いです」


 ネアは柱へ伸びる原光を分散させた。

 形が完成する前に、シアが蹴り砕く。

 赤い分霊核の一つが頭上を守る。

 もう一つは、晶の精霊王の背後へ回り、短い火を放つ。


 同時に大きな攻撃はしない。

 正面のシア。

 横の分霊核。

 発射する位置を切り替えながら、晶の精霊王へ防御を作り続けさせる。


 ネアは形成の大きな流れを自分で押さえ、細い枝分かれを二つの黒い核から止めた。

 晶の精霊王の周囲に、新しい結晶を置ける場所が減っていく。


◆ 変わらない構造


 シアの拳が、晶の精霊王の前で止まった。

 背後には赤い分霊核がある。

 左右には、ネアの黒い制御線が走っていた。

 新しい壁を作ろうとしても、形になる前に止められる。

 すでにある壁は、シアが砕いた。


「まだ固める?」


 シアが尋ねる。


「構造がなければ、進化しない」

「全部固めたら、変わらない」

「強い構造は残る」

「残ったまま、何にも変われない」


 晶の精霊王は、結晶化した林を見る。

 木々は形を保っている。

 枝も葉も崩れていない。

 だが、成長することも、季節に合わせて葉を落とすこともできない。


「構造は、変わるためにもあります」


 ネアが言った。


「身体が形を持っていても、内側を何も通さなければ生きられません」

「形が崩れる」

「必要なら作り直します。変わらないことだけが、強さではありません」


◆ 結晶を置く場所


 晶の精霊王は、足元の結晶へ手を触れた。


「鉱脈は残る」

「地中に作れば、地上の生命を固めずに済みます」


 ネアが答える。


「構造が必要な場所を選んでください。何もかも一つの形へ変える必要はありません」

「弱いものは崩れる」

「崩れるから、新しい形へ変わる」


 シアが拳を下ろした。


「変わるのを止めたら、進化もしない」


 晶の精霊王は、しばらく答えなかった。

 やがて、塔の外側へ広がっていた光が弱くなる。

 林へ進んでいた結晶化が止まった。

 すでに固まった木や土は、そのまま残る。


 晶の精霊王は、地面の奥へ力を向けた。

 表面ではなく、生命の根が届かない深さへ、小さな結晶の層を作る。


「ここなら、上を固めない」

「ええ」


◆ 立てないセト


 戦いが終わっても、セトはすぐには立てなかった。

 シアが戻ってくる。


「終わった」

「ああ」

「立てる?」


 セトは地面へ手をついた。

 脚へ力を入れる。

 膝が少し上がり、すぐに落ちた。


「まだ無理だ」

「最初から座っててって言った」

「座ってた」

「立とうとした」


 ネアが隣へしゃがむ。

 セトの腕から胸元へ、細い銀青色の線を通す。


「精霊回路そのものが尽きたわけではありません」

「なら、なぜ動かない」

「身体が、二本の精霊剣を受け止め続けられなかったのでしょう」


 ネアの周囲では、二つの黒い分霊核が静かに浮いている。

 内部には、まだ銀色の光があった。


◆ まだ残る光


 シアの二つの分霊核にも、火が残っていた。

 重の精霊王との戦いで大きく使い、晶の精霊王の壁を砕くためにも使った。

 それでも、完全には空になっていない。


「私も、まだ撃てる」


 シアが言う。


「わたしも制御を続けられます」


 ネアは結晶化した林へ線を伸ばした。

 残った流れを確認し、再び広がらないよう押さえている。


「セトは?」

「剣は持てない」


 セトは、力の入らない右手を見た。

 シアとネアの力は残っている。

 分霊核にも蓄えがある。


 二人は精霊剣から人型へ戻った後も、その力で戦いを終わらせた。

 先に尽きたのは、精霊王の力ではなかった。

 三人の中で最初に動けなくなったのは、二本の剣を預かった人間の身体だった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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