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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第7話 偽物を持ち逃げした男

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(四)二人で勝つ

◆ 進むための火


 シアが二つ目の火を置く。


 セトはそこへ足を運ぶ。


 踏み込んだ瞬間だけ、火が強くなる。


 体を焼かず、足を前へ押す。


 セトの動きに合わせている。


 セトは白炎を振る。


 男が受ける。


 刀身がぶつかる直前、セトは炎を弱めた。


 男が踏み込む。


 そこへ、シアの火が置かれる。


 今度は男の足元ではない。


 セトが次に踏む場所だ。


 セトは後ろを見ない。


 足元を確かめない。


 火があると信じて踏み込む。


 炎が弾ける。


 速度を増した白刃が、片刃の剣の横を抜けた。


 男の肩口で止まる。


 男は体をひねり、ぎりぎりで避けた。


 服が浅く裂ける。


「火で動きを速めているのか」


「今、分かった」


 セトが言う。


「お前も知らなかったのか」


「初めてやったからな」


◆ シアの判断


 シアは、セトから指示を受けていなかった。


 足元へ火を置けとも言われていない。


 セトが進みたい場所を見て、自分で火を置いた。


 セトも止めなかった。


 火が体へ触れる直前に避けようともしない。


 シアが自分を焼かないと分かっている。


 次の火が左へ置かれる。


 セトは右へ踏み込んだ。


「違う」


 シアが言った。


「分かってる」


 右へ動いたのは、男の剣を誘うためだ。


 片刃の剣が追ってくる。


 セトは直前で方向を変え、シアが置いた左の火を踏む。


 炎に押され、男の横へ回る。


 白炎を振り上げる。


 男が剣で受ける。


 セトは炎を強めた。


 白い火が片刃の剣を包む。


 男が耐える。


「この程度なら!」


「まだだ」


 セトが言った。


◆ 白炎を渡す


 シアが両手を上げた。


 小さな火がいくつも生まれる。


 男は警戒して周囲を見る。


 だが、火は男へ向かわない。


 すべて白炎へ集まっていく。


「強くするのか」


 男が剣を引こうとする。


 セトは白炎を押し当てたまま離さない。


「違う」


 シアが言った。


 火が白炎へ触れる。


 刀身を包む炎は大きくならなかった。


 セトが強さを抑えている。


 シアが送った火は、白刃の中へ次々と重なる。


 それでも、セトは炎として放出しない。


 剣の形を保つ方へ力を回す。


 白刃の密度が増していく。


 片刃の剣が、少しずつ押し返された。


「火を弱くしているのに、なぜ――」


「強くする場所を変えただけだ」


 セトは白炎を振り抜いた。


◆ 勝つための一撃


 片刃の剣が大きく弾かれた。


 男の両腕が上がる。


 セトの正面が空いた。


 シアが火を一つだけ放つ。


 火は白刃へ向かわない。


 男の背後へ飛んだ。


 セトは白刃を短くする。


 男が体勢を戻し、セトへ斬りかかる。


 セトは刃の下へ入った。


 肩がぶつかる。


 男の体を押しながら、そのまま前へ進む。


 背後にあった火が、男の足へ触れた。


 炎は燃え上がらない。


 足元で弾け、男の体勢だけを崩した。


 セトは短い白刃を消す。


 空いた右手で、男の剣を持つ腕をつかんだ。


 足を払う。


 男の体が石床へ倒れた。


 セトは新しい白刃を作り、その首元へ切っ先を止める。


 同時に、シアの小さな火が男の剣を囲んだ。


 拾おうとすれば、手を焼かれる位置だった。


「終わりだ」


 男は歯を食いしばった。


 それでも、起き上がることはできない。


「……降参だ」


◆ 優勝


 審判が腕を上げた。


「勝者、セト、シア組!」


 闘技場が大きく揺れたように感じるほどの歓声が上がった。


 セトは白刃を消す。


 シアが隣へ来た。


「勝ったな」


「ああ」


「最後は、わたしが何をするか言わなかった」


「言う暇がなかったからな」


「セトも、どこへ動くか言わなかった」


「お前なら分かると思った」


「分かった」


「俺も分かった」


 シアは少し考えた。


「これが二人で戦うということか」


「たぶんな」


「全部わたしが倒すより遅い」


「それはもういい」


「だが、悪くなかった」


 シアは素直にそう言った。


 その視線が、運営席の木箱へ移る。


「魔剣を見るぞ」


「余韻が短いな」



※第7話「偽物を持ち逃げした男」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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