(三)指示のない連携
◆ 光の壁を斬る
セトは白炎を光の壁へ向けた。
光も精霊術で作られている。
白刃が、その流れへ食い込む。
炎を強くする必要はない。
刀身の形へ力を戻し、切断へ集中させる。
白い壁へ縦の亀裂が走った。
セトは白炎を振り抜く。
光が左右へ割れた。
向こう側にシアがいる。
光の精霊術士は、すぐに次の術を作ろうとした。
シアが指を振る。
小さな火が、相手の杖へ向かう。
光が火を撃ち落とした。
その後ろから、二つ目。
三つ目。
すべて同じ場所へ向かっている。
「同じことを繰り返しても――」
四つ目の火は、途中で向きを変えた。
光の精霊術士の足元へ落ちる。
相手が横へ避けた。
そこへ、白い短剣が飛んだ。
セトが光の壁を斬った直後に投げていたものだった。
短剣は相手の杖を弾く。
杖が宙を舞った。
◆ 指示のない連携
光の精霊術士が杖を追う。
シアは、その前へ小さな火を置いた。
足が止まる。
セトは走り込んだ。
白炎を弱め、刀身を短くする。
光の精霊術士の首元へ、白い刃を止めた。
「降参するか」
相手は動かなかった。
白炎はほとんど熱を持っていない。
だが、光の精霊術士にそのことは分からない。
「……降参する」
一人が舞台から下がる。
セトはシアを見た。
「短剣を投げたのが分かったのか」
「見えた」
「なら、先に言え」
「火を置けば、セトが来ると思った」
「来なかったら?」
「わたしが倒していた」
「やっぱりそこへ戻るのか」
シアはすでに、残った剣の男を見ていた。
「次は二人で倒す」
◆ 一人になった剣士
剣の男は、相方が降参しても剣を下ろさなかった。
「まだ終わっていない」
「二対一だぞ」
「魔剣は俺が手に入れる」
男は運営席の木箱を見た。
その目には、セトもシアも映っていないようだった。
「相方は降参した」
「最初から、あいつは俺を優勝させるための後衛だ」
舞台を下りた光の精霊術士が、顔を伏せる。
シアが男を見た。
「二人で勝つのではなかったのか」
「勝つのは俺だ」
「二人一組なのに?」
「魔剣を使えるのは一人だけだ」
シアは少し黙った。
「セト」
「何だ」
「わたしたちとは違うな」
「ああ」
男が踏み込んだ。
片刃の剣が、セトの白炎へ向かう。
◆ 前と後ろ
セトが白炎で受ける。
男は正面から刃を押し込んだ。
シアが小さな火を放つ。
男は見ずに横へ避けた。
昨日から何度も見せている攻撃だ。
火の置かれる位置も、ある程度読まれている。
「その程度の援護では止まらない!」
男が白炎を弾く。
セトの体勢が崩れた。
片刃の剣が、その胸へ迫る。
シアは大きな火を作らなかった。
セトを助けるために、男を直接攻撃もしない。
小さな火を、セトの足元へ置いた。
セトは迷わず、その火を踏む。
炎はセトを焼かなかった。
足の裏から火が弾け、体を前へ押す。
一歩分だけ、動きが速くなる。
片刃の剣を紙一重で避けた。
「今のは何だ」
男が振り返る。
「援護だ」
シアが答えた。
※第7話「偽物を持ち逃げした男」は全五回です。
続きます。
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