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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第38話 重さと結晶

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(四)光る荒野

◆ 一日の休息


 ネアと合流した時、セトは極炎を解除した。

 シアが人の姿へ戻る。

 二つの赤い分霊核は、どちらも光を大きく減らしていた。


「二回撃てた」


 シアが言う。


「セトは疲れています」


 ネアはセトの腕へ線を伸ばした。


「一度目だけでも、今までなら大きく消耗していた出力です」

「でも、まだ歩ける」

「歩けることを、次の戦闘ができる基準にしないでください」


 セトはしびれの残る右手を開いた。


「今日は休む」

「当然です」

「明日は?」


 シアが尋ねる。


「セトの状態を見てからです」


 その日の夜、三人は平原から離れた集落へ泊まった。

 シアとネアは休みながら、分霊核へ少しずつ力を戻す。

 セトは剣を作らなかった。

 それでも、右腕の奥には極炎を二度通した重さが残っていた。


◆ 光る荒野


 翌日の昼過ぎ、晶の精霊王がいる地域から新しい報告が届いた。

 土地が硬い透明な物質へ変わり続けている。

 最初は岩の一部だけだった。

 次に土が固まり、植物の根が閉じ込められた。

 今では小さな林と、その近くを流れる川まで、光を反射する結晶に覆われ始めている。


 三人はさらに一日をかけて移動した。

 遠くからでも、異変の範囲は分かった。

 平原の一部だけが、夕日のような光を返している。

 近づくと、地面から大小の結晶が突き出していた。


 透明なもの。白いもの。薄い青や紫を帯びたもの。

 色は異なるが、どれも不自然なほど形が整っている。


「きれい」


 シアが言う。


「足元も見てください」


 結晶の下には、折れた草が閉じ込められていた。


◆ 固まった生命


 結晶化した林では、木々が幹の形を保ったまま固まっていた。

 樹皮の表面から透明な結晶が伸び、枝と枝の間をつないでいる。

 葉は落ちない。

 風が吹いても揺れない。

 根の周囲にあった土も固まり、水も通らなくなっていた。


「生きてる?」


 シアが幹へ手を当てる。


「すぐにすべてが死んだわけではありません」


 ネアが内部へ線を伸ばす。


「ですが、水も原光も通りません。このままでは長く持たないでしょう」


 川も同じだった。

 表面に薄い結晶が張っただけではない。

 水の中へ細い柱が無数に伸び、流れを区切っている。

 魚はすでに下流へ逃げたのか、姿がなかった。

 流れる水の音だけが、結晶の隙間から細く聞こえる。


「形を作ってる」


 シアが言う。


「作りすぎています」


◆ 構造を作る王


 林の中心には、結晶の塔があった。

 塔といっても、人間が積み上げた建物ではない。

 地面から伸びた結晶が互いに組み合わさり、一つの大きな構造になっている。

 その内部に、人の形が見えた。

 透明な層の奥で、晶の精霊王が目を開く。


「止めろ」


 セトが呼びかけた。

 塔の表面に、新しい結晶が生まれる。


「構造を作っている」

「ここにあった木や川を固めてまで?」


 ネアが尋ねる。


「小さい生命は集まり、大きな生命になる」


 晶の精霊王の声が、塔全体から響いた。


「柔らかな身体には、骨ができる。土の中では、鉱物が並び、鉱脈になる」


 結晶同士がつながり、さらに複雑な形へ変わっていく。


「形がなければ、生命は大きくならない。構造がなければ、進化しない」

「全部を同じように固めたら、動けなくなる」


 シアが言う。


「強い形は残る」

「残るだけ」


◆ 残る壁


 シアが塔へ近づいた。

 地面から細い結晶が伸び、足を囲もうとする。

 炎を足元へ広げる。

 結晶の先端が赤くなり、ひびが入った。


 シアは一歩進み、拳を塔へ打ち込む。

 表面の一層が砕けた。

 その奥には、同じ厚さの結晶がある。


「硬い」


 シアはもう一度殴った。

 ネアの線が、塔へ集まる原光を捉える。

 新しい結晶を作ろうとする流れを吸収し、横へ逸らした。


「追加の形成は止められます」


 塔の成長が止まる。

 だが、すでに作られた結晶は消えなかった。

 シアが一層を砕く。

 その奥にも層がある。


 周囲の形成を止めれば、塔の内部へ向ける制御が薄くなる。

 内部を止めれば、林の外側で結晶化が進む。



※第38話「重さと結晶」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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