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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第38話 重さと結晶

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(三)二度目の極炎

◆ 本体への道


 重の精霊王へ近づくほど、岩の密度が増えた。

 足元の石まで軽くなり、地面から浮かび上がる。

 セトが踏み込もうとした場所から、支えが消える。

 身体がわずかに沈んだ。


『右』


 分霊核の一つが地面近くへ火を放つ。

 熱と衝撃で、浮き上がりかけた土が後方へ飛んだ。

 セトは残った岩を踏み、前へ進む。


 正面から細い石が無数に飛んできた。

 重さはない。

 触れる直前に、一斉に重くなる。


 セトは極炎を横へ振った。

 炎の斬撃が石の列を切り裂く。

 切り損ねたものは、後方の分霊核が熱の壁で受けた。


『今』


 右前方の赤い玉が、重の精霊王の横へ火を放つ。

 人影がそちらへ岩を集めた。

 セトは空いた正面へ走った。


◆ 一度目


 重の精霊王の前へ、岩が幾重にも重なった。

 大きな岩の隙間へ小石が入り、さらに砂が詰まる。

 重さを増した石の塊が、壁となってセトを塞いだ。


「シア」

『合わせる』


 極炎の刀身が、白に近い赤色へ変わる。

 シアが出力を一つへ集める。

 セトは一歩踏み込み、剣を振り下ろした。


「極炎!」


 炎が一直線に走った。

 岩の壁が中央から赤く染まる。

 表面が溶け、内部が割れ、押し固められていた石が左右へ吹き飛んだ。


 炎はその奥まで抜ける。

 重の精霊王の身体を包み、地面ごと後方へ押し流した。

 平原へ長い焼け跡が残った。


 セトは極炎を地面へ突き、息を吐く。

 重の精霊王は倒れていた。

 だが、その周囲で石が再び浮き始める。


◆ 残っている火


「まだ動くのか」

『削りきれてない』


 重の精霊王が上半身を起こす。

 灰色の衣は焼けている。

 それでも、空へ上がる岩の数は減っていなかった。


「衝撃が足りない」


 人影が言った。


「もっと落とす」


 平原全体の岩が地面を離れた。


 一度目の極炎で、シアは大きく力を使っている。

 セトの身体にも、強い出力を通した反動が残っていた。

 それでも、周囲を回る二つの分霊核には赤い光が残っている。

 戦う前に蓄えた力だ。

 極炎へ集めなかった分が、器の中に保たれている。


 二つの赤い玉から、極炎の刀身へ細い光が流れ始めた。


『まだ分霊核分が残ってる! 息を整えてもう一発撃て!』


 セトは大きく息を吸った。

 一度。

 二度。


 落石は、二つの分霊核が防いでいる。


◆ 二度目


 重の精霊王が両腕を下ろした。

 空を覆っていた岩が、一斉に落下する。

 二つの分霊核がセトの前へ出た。

 炎の膜を重ねる。


 最初の岩が触れ、砕ける。

 次の岩が膜を押し下げる。

 赤い光が薄くなっていく。


『今!』


 セトは炎の膜の下から飛び出した。

 分霊核の防御を越えた岩だけを、極炎で切る。


 右。

 左。

 正面。


 落石の隙間を抜け、重の精霊王へ迫る。

 人影が自分の前へ最後の岩を集めた。

 セトは止まらない。

 分霊核から戻された火が、極炎へ流れ込む。


「極炎!」


 二度目の炎が、岩の壁へ突き刺さった。

 今度は壁だけで止まらない。

 重の精霊王の周囲にあった浮遊する石をまとめて吹き飛ばし、灰色の人影を地面へ押さえつけた。

 極炎の切っ先が、胸元で止まる。


「もう落とすな」


◆ 落とさない重さ


 空に残っていた岩が、ゆっくりと下り始めた。

 急に重くするのではない。

 一つずつ、元の重さへ戻している。

 平原へ大きな衝撃は起きなかった。


「外からの衝撃は必要だ」


 重の精霊王が言う。


「必要だった時もある」


 セトは極炎を下ろした。


『今ここへ、同じ岩を何度落としても、外から新しいものは来ない』

「砕ける。混ざる」

『ここには、もう生きているものがある』


 岩壁の向こうでは、ネアが作業員たちを避難させている。

 採石場には道具が残り、切り出された石が積まれていた。


『落とす場所を見る。何があるかも見る。それから決める』

「衝撃をなくす?」

『必要のない衝撃を止める』


 重の精霊王は周囲の岩を見る。

 一つが斜面から転がりかけた。

 その岩だけが軽くなり、ゆっくりと地面へ戻される。


「落とさないためにも、重さを変えられる」

『そう』



※第38話「重さと結晶」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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