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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第38話 重さと結晶

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(二)石の雨

◆ 外からの衝撃


「なぜ、衝撃が必要なのですか」


 ネアが尋ねる。


「世界の外から、石が落ちる」


 重の精霊王は空を見上げた。


「大地を砕く。熱を作る。違うものを運ぶ」

「流星のことですか」

「外から来る衝撃が、同じ大地を変える」


 空へ浮かぶ岩の数が増える。


「一度では足りない。何度も落ちる。砕ける。混ざる。新しいものが生まれる」


 創世期には、外から落ちる石が大地を変えたのかもしれない。

 衝撃によって地形が変わり、熱が生まれ、そこになかった物質が加わる。

 だが、今、空へ浮かんでいるのは流星ではない。

 もともと平原にあった岩だった。


「ここへ落としても、外から何かが増えるわけではありません」


 ネアが言う。


「衝撃は増える」

「壊れるものも増えます」

「壊れれば混ざる」


 重の精霊王は、避難した採石場を見た。


「ここは固まりすぎている」


◆ 分かれた地面


 岩が一斉に上昇した。


「下がれ!」


 セトが叫ぶ。

 三人は散る。

 軽くなった岩は、上へ飛ぶというより、重さを失ったまま押し上げられていた。

 大きな岩の陰から、避難し遅れた作業員が二人走ってくる。

 ネアがそちらへ向かった。


「こちらへ!」


 次の瞬間、浮いていた岩の重さが戻った。

 落下が始まる。


 ネアは両手を広げた。

 黒い分霊核二つが作業員の上へ移る。

 銀青色の線が、落ちてくる岩へ絡んだ。

 正面から受け止めるのではない。

 落ちる方向を少しずつ横へ曲げる。


 岩が作業員の左右へ落ち、地面を砕いた。

 さらに大きな岩が、三人の間へ落下する。

 衝撃で平原が割れた。

 土煙が広がり、セトとシアの前に崩れた岩の壁が立ち上がった。


「ネア!」


 向こう側から声が返る。


「無事です! ですが、まだ人が残っています!」


◆ 向こう側のネア


 崩れた岩壁の向こうでは、落石が続いていた。

 ネアは作業員を守りながら、二つの黒い分霊核を別々の位置へ動かしている。

 一つは上から落ちる岩を横へ逸らす。

 もう一つは、崩れかけた地面の流れを分散させる。

 自分の周囲へも線を広げ、さらに遠くの岩を見ていた。


「こちらを離れられません!」

「そのまま人を守れ!」


 セトが答える。


「重の精霊王はこっちにいる」


 シアは土煙の向こうを見た。

 灰色の人影は動いていない。

 その周囲へ、さらに岩が集まっている。


「本来なら、ネアの方が向いてる」

「今はいない」

「私たちでやる」


 赤い分霊核が、シアの左右へ並んだ。

 重の精霊王が腕を下ろす。

 空に浮かんだ石が、セトとシアへ向かって流れ始めた。


◆ 極炎と二つの核


「シア」

「分かった」


 シアの身体が赤橙色の光へ変わる。

 光はセトの右手へ集まり、火の精霊剣となった。

 極炎の刀身から、赤い炎が立ち上がる。


 二つの分霊核はシアの身体があった場所へ残らず、セトの周囲へ移った。

 一つは右の斜め前。

 もう一つは左の後方。


 セトにも、二つの赤い光があることは分かる。

 どちらにどれほど力が残り、何をしようとしているのかも、精霊剣を通じて伝わってくる。

 だが、自分の手足のようには動かせない。


『分霊核は私が動かす』

「ああ」

『セトは前だけ見て』

「それは無理だ」

『じゃあ、本体を見て』

「分かった」


 極炎を構え、セトは前へ出た。


◆ 石の雨


 最初に落ちてきたのは、拳ほどの石だった。

 数は多い。

 軽いままセトの周囲へ集まり、頭上まで来たところで重さを増す。


 右側の分霊核が前へ出た。

 短い炎が連続して弾ける。

 石をすべて消すほどの火ではない。

 落下の向きをずらし、セトへ直撃するものだけを砕く。


 セトは残った石を極炎で切り払った。

 足元へ落ちた小石が、地面へ深く沈む。


「一つでも重いな」

『次、大きい』


 左後方の分霊核が頭上へ回った。

 炎の膜が斜めに広がる。

 家ほどの岩が落ちてくる。

 膜へ触れた表面が赤く焼け、亀裂が走った。


 セトは極炎を振り上げる。

 岩は中央から割れ、左右へ落ちた。


 その間にも、右側の分霊核は重の精霊王へ小さな火を放つ。

 灰色の人影が、浮かせた岩を盾にした。



※第38話「重さと結晶」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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