↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第38話 重さと結晶

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
226/339

(一)重さを変える王

◆ 二つの候補


 二通の伝言にあった宝玉は、どちらも本物だった。

 赤い玉は、旅商人が長く在庫へ残していたものだった。

 色は美しいが、どの宝石とも一致せず、削ることもできない。

 黒い玉は、古い装飾品から外された後、石材を扱う店の箱へ混ざっていた。

 穴を開けられず、ほかの石より使い道がないまま残されていた。


 シアが赤い玉へ火の力を流す。

 ネアが黒い玉へ月の力を流す。

 二つの宝玉は、それぞれの色の光を内側へ蓄え、静かに浮き上がった。


「両方、本物だった」


 シアは肩の左右へ浮かぶ赤い分霊核を見た。


「珍しく、都合よく進みましたね」


 ネアの周囲にも、黒い玉が二つ浮かんでいる。


「珍しく?」

「前は、候補を三つ調べて、本物は一つだけだったでしょう」

「あれは石が悪い」

「普通の宝石だっただけです」


◆ 同じ手順


 二個目の分霊核について、改めて試すことは多くなかった。

 力が入ること。離れた位置へ動かせること。蓄えた力を出し入れできること。攻撃や防御、制御の起点にできること。


 最初の分霊核で確認したことを一通り繰り返し、二個目も同じ器であると確かめた。

 違ったのは、操作する対象が増えたことだけだった。


 シアは二つの赤い玉を左右へ分けた。

 一つを前へ出し、もう一つを後ろへ置く。

 前から小さな火を放った後、後ろの玉へ意識を移し、熱の膜を作った。


「二つなら動かせる」

「今は止まった的と、動かない防御だけです」


 ネアが言う。


「戦ってもできる」

「それをこれから確認することになるかもしれません」


 ネアの視線は、届いたばかりの報告書へ向いていた。


◆ 四つの宝玉


 報告が来たのは、二個目の分霊核を得た翌朝だった。

 町から東へ進んだ岩の多い平原で、石が空へ浮かんでいるという。


 小石だけではない。

 人の背丈を超える岩まで地面を離れ、しばらく浮かんだ後、突然落下する。

 落ちた岩は、以前よりも深く地面へ沈む。

 街道を通る荷車が巻き込まれ、採石場で働いていた者たちも避難していた。


「重の精霊王でしょう」


 ネアが報告書を閉じる。


「重さを変えている?」


 シアが尋ねる。


「おそらく。軽くして持ち上げ、落とす時に重くしているのでしょう」

「落ちる前に燃やせばいい」

「大きな岩が燃えてなくなるとは限りません」

「砕く」

「砕けば数が増えます」

「全部砕く」

「話を聞いてからにしてください」


 セトは荷物を持ち上げた。


「行くぞ」


 四つの分霊核が、三人の後を追った。


◆ 浮かぶ岩


 平原へ近づく前から、異変は見えた。

 道の先にある岩が、地面から少し離れている。

 最初は、遠近のために浮いて見えるだけかと思った。

 近づくと、その下には明確な隙間があった。


 拳ほどの石が、草の上で揺れている。

 さらに先には、荷車ほどの岩が三つ浮かんでいた。

 風が吹くたび、重さを失った岩がゆっくりと横へ流される。


「軽い」


 シアが小石をつかんだ。

 指先で押すだけで、石は高く上がった。


「普通の石と同じに見えます」


 セトが言う。


「物質そのものが変わったのではなく、重さだけを変えられています」


 ネアは小石へ銀青色の線を伸ばした。


「今は、ほとんど重さがありません」


 その瞬間、小石が落ちた。

 地面へ当たる。

 小さな石であるにもかかわらず、土へ深い穴が開いた。


「落ちる時だけ重い」


 シアが穴をのぞき込む。


「当たったら痛いでは済みませんね」


◆ 重さを変える王


 避難した採石場の奥では、無数の岩が空へ浮かんでいた。

 大きなものは家ほどある。

 小さなものは砂粒に近い。

 それらが、地面から空までを埋めるように漂っている。


 中心に、一人の姿があった。

 灰色の衣をまとった人影だった。

 身体の周囲では、石がゆっくりと上下している。


「重の精霊王」


 セトが呼びかける。

 人影が三人を見る。


「軽いものが来た」

「私たちは普通」


 シアが答える。


「すべてのものには重さがある」


 重の精霊王は片手を上げた。

 足元の岩が地面を離れる。


「重さがあれば落ちる。軽ければ上がる」

「それを繰り返して、何をしている」


 セトが尋ねる。


「衝撃を作っている」


 浮かんでいた岩が一つ、突然落下した。

 地面が揺れる。

 岩の半分が土へ埋まり、周囲へ亀裂が走った。



※第38話「重さと結晶」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。