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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第37話 大地を動かす王

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(六)動きを止める月

◆ 地形を読む


 作業は日が暮れるまで続いた。

 ネア自身は、土の精霊王が集める力を監視する。

 黒い分霊核は、離れた川と街道の変化を読み続ける。

 土の精霊王が少し強く押せば、ネアが分散させる。

 足りなければ、流れを一か所へ集め直す。


 川が元の位置へ戻っても、同じ深さにはしない。

 水が急に増えないよう、流れを細く保つ。

 街道の高さが戻っても、ひびの入った石はそのままだ。

 兵士と住民が、後から修復できる形で止める。


「全部、元と同じにはならない」


 シアが言った。


「すでに一度動いていますから」

「失敗?」

「戻せる範囲を戻しました」


◆ 保つことを覚える


 土の精霊王の人影は、地面へ半分沈んでいた。


「これからは動かさない?」


 シアが尋ねる。


「大地は動く」

「また同じことする?」

「ここではしない」

「ほかならする?」

「そこに何があるかを見る」


 ネアが土の人影へ向き直る。


「見た後に、残すものがあるなら?」

「動かさない」

「動かさなくても、大地の役割を果たせます」

「保つ」

「ええ」


 土の精霊王は、崩れかけた川岸へ力を通した。

 土が固まり、水へ削られにくい形になる。


「これは動かしていない」

「支えています」

「大地を保っている」


◆ 一核の使い方


 土の精霊王が地面へ戻った後も、ネアは黒い分霊核を動かし続けた。

 自分の足元にある土を観測する。

 分霊核を川岸へ寄せ、そこから別の線を伸ばす。

 二つの位置から、異なる場所の流れを同時に整える。


「私のより地味」


 シアが言った。


「比較する必要がありますか」

「私のは燃える」

「月の力で燃やす予定はありません」

「でも、便利」

「ええ」


 ネアは素直に認めた。


「わたし一人では、どちらかへ移動する必要がありました。分霊核があれば、離れた場所へ制御を残せます」

「強くなった?」

「力そのものは変わっていません」


◆ 二つの手


 ネアは黒い分霊核を手元へ戻した。

 内部には、まだ銀色の線が残っている。


「使った量は?」


 セトが尋ねる。


「かなり残っています」

「私の時より減ってない」


 シアが黒い分霊核を見る。


「攻撃へ使っていませんから」

「私も守るのに使った」

「あなたは守りながら、かなり攻撃していました」

「勝つため」

「今回は、止めるためです」


 黒い分霊核は、ネアの肩の少し後ろで静止した。

 ネアは、シアのように分霊核を周囲へ大きく回さず、必要な位置へ移して、そこで止めておく。

 シアとは違う、ネアの使い方だった。


◆ 次の候補


 翌朝、兵士から二通の伝言が届いた。

 一つは、小さな赤い宝玉に関するもの。

 もう一つは、別の地域で見つかった黒い宝玉に関するものだった。


「二つ目」


 シアが赤い玉の情報を取る。


「まだ候補です」


 ネアは黒い玉の伝言を読む。


「でも、探し方は分かってる」

「ええ。最初よりは早く確認できるでしょう」


 セトは二つの場所を地図で確かめた。

 方向は異なるが、どちらも次の異変が報告されている地域へ向かう途中にある。


「順に確認する。外れなら、そのまま次へ進む」

「両方、本物がいい」


 シアが言う。


「都合よくはいかないでしょう」


◆ 動きを止める月


 三人が平原を離れる頃、川は元の方向へ流れていた。

 街道はまだ壊れている。

 畑にも水が残っている。

 すべてが元どおりになったわけではない。

 それでも、大地はもう勝手に持ち上がらず、沈まなくなっていた。


 遠くでは、土の精霊王が崩れた斜面を固定している。

 新しい山を作るためではない。

 今ある土地を保つために。


 ネアの周囲では、最初の月の分霊核が静かに浮かんでいた。

 一つの場所で土の精霊王を止めながら、別の位置から川と街道を守る。

 力が増えたのではない。

 ネアの制御を置ける起点が、二つになっていた。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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