↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第36話 氷の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
219/232

(六)次の色

◆ 残す寒さ


 氷の精霊王は、道標より上へ冷気を流した。

 山肌の雪がわずかに厚くなる。

 シアは止めなかった。


「そこは燃やさないのか」


 氷の精霊王が尋ねる。


「前から寒い場所だから」

「寒さを妨げるのではないのか」

「下へ広げるのを止めただけ」


 氷の精霊王は、もう一度だけ山の下を見た。


「火は、寒さをなくしたいのではない」

「私は火だけど、世界を全部燃やしたくはない」

「火の役割ではないのか」

「燃やすことはできる。でも、何を燃やすかは私が決める」


 氷の精霊王は答えなかった。

 役割ができることと、役割だけを実行することは違う。

 その違いを、シアは説明より先に、自分の行動で見せていた。


◆ 川を戻す


 氷の精霊王が、凍った川へ手を向けた。


「これは戻すのか」

「一度に全部はやめてください」


 ネアが言う。


「下流が危ない」

「少しずつ」

「はい」


 氷の精霊王が、川へ流していた冷気を弱める。

 シアも分霊核の炎を細く伸ばし、凍結の薄い場所から順に温めた。

 氷の下で、水が小さく動く音がする。


 最初は細い流れだった。

 やがて、氷の割れ目から水が見え始める。

 川岸の雪をすべて溶かすことはしない。

 上流の寒さも残す。

 必要な流れだけを戻していく。


「こっちの方が難しい」


 シアが言った。


「全部溶かすよりは」

「当然です」


◆ 一核の違い


 集落へ戻る頃には、冷気の境界は山の上へ後退していた。

 凍った家や畑がすぐ元へ戻るわけではない。

 だが、新しい氷が増えることは止まっている。

 兵士たちは井戸と川を確かめ、住民を戻す時期を相談し始めた。


「ほとんど、シア一人で押し切ったな」


 セトが言う。


「相性だけなら、どっちもどっちだった」

「火だけなら、向こうの冷気で止められていました」


 ネアが言った。


「分霊核が防御を続けたため、シアは攻撃へ集中できました」

「火が強くなったわけじゃない」


 シアは肩の周囲を回る赤い玉を見る。


「でも、前よりずっと楽だった」

「一つの動作を強くしたのではなく、二つの役割を同じ時間に処理できるようになったからです」

「攻撃と防御」

「それに、攻撃位置の切り替えです」


◆ 残っている力


 シアは分霊核を手元へ寄せた。

 内側の赤い光は、戦う前より薄くなっている。

 それでも、完全には消えていなかった。


「まだ残ってる」

「かなり使いましたが、空にはなっていませんね」


 ネアが分霊核の状態を見る。


「もっと入れておけば、もっと残った」

「安全量を確認せずに満たす話へ戻さないでください」

「壊れなかった」

「今回壊れなかったことは、限界まで入れても壊れない証明ではありません」


 セトは二人のやり取りを聞きながら、山の上を見た。

 氷の精霊王は、道標の近くに残っている。

 白い冷気は山頂へ向かい、下へは流れてこない。

 少なくとも、今は約束を守っていた。


◆ 次の色


 集落の詰め所には、町の商人から新しい伝言が届いていた。

 赤い玉を探した時に聞き回った相手から、別の情報が返ってきたらしい。


「黒くて、小さくて、加工できない玉」


 セトが紙を読む。


「条件に近い物を見た者がいるそうだ」


 ネアが紙を受け取った。


「次はネアの番」


 シアが言う。


「本物かどうかは、まだ分かりません」

「近くで探せば分かる」

「ええ。シアの時と同じ手順で確かめます」


 ネアは伝言に書かれた場所を確認する。

 シアの周囲では、赤い分霊核が静かに回っていた。

 火の量が急に増えたわけではない。

 それでも、一つの攻撃を続けながら別の場所を守り、離れた二つの位置から相手の逃げ道を狭められた。

 昨日まで一つだった行動点が、二つになった。


 次は、月の力を置くもう一つの場所を探す。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。