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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第36話 氷の世界

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(四)交互の砲撃

◆ 思ったように動く


 氷の精霊王が横へ移動する。

 白い霧へ姿が紛れた。

 シアは炎を止め、周囲を見る。


 背後で氷が鳴る。

 分霊核がシアの意思に合わせて回り込み、後方へ熱の壁を作った。

 突き出た氷柱が壁へ触れ、途中で止まる。

 シアは振り向かず、前方の霧へ炎を広げた。

 熱で霧が薄くなり、離れた場所に白い人影が見えた。


「分霊核、思ったよりも溜められるし、思ったように動かせる」

「戦闘中に確かめることではありません」

「今が一番分かる」


 分霊核は、シアの斜め後ろへ位置を変える。

 防御を保ったまま、次の移動へ備えていた。


◆ 二つの位置


「離れた」


 シアが言う。

 氷の精霊王は、十歩近く先にいる。

 正面から炎を放てば、氷壁で受けられる距離だった。

 シアは分霊核を右側へ動かす。

 自分と赤い玉の間を広げ、氷の精霊王を二つの位置から挟む。


「両方からは撃てない」


 セトが確認する。


「分かってる」


 シアは自分の掌から火を放った。

 氷の精霊王が正面へ壁を作る。

 炎を止める。

 ほとんど間を置かず、右側の分霊核から火が放たれた。

 氷の壁の側面が赤く染まる。

 氷の精霊王は右へ新しい壁を作った。

 その瞬間、シアは攻撃の起点を自分へ戻した。


◆ 交互の砲撃


 正面から火が走る。

 氷の精霊王が正面を守る。

 シアが止める。

 次は分霊核から、横へ火が走る。

 同時ではない。

 だが、氷の精霊王が一方へ防御を厚くするたび、もう一方から攻撃が来る。

 壁を作る位置を変えるたびに、氷の精霊王は後ろへ下がった。


「二つとも、同じくらい強い」


 シアが言う。


「分霊核側は多少落ちています」

「でも、足りる」


 再び正面から炎を放つ。

 氷壁が薄くなったところで止め、分霊核側へ切り替える。

 横から受けた熱で壁が崩れた。

 氷の精霊王の白い腕へ、炎が届く寸前で止まる。


「まだ広げる?」

「寒い場所は必要だ」


◆ 防御を置いていく


 氷の精霊王は、シアの正面から外れるように斜面を移動した。

 足跡の周囲から新しい氷が広がり、シアとセトたちの間を分断しようとする。

 シアが振り返るより先に、分霊核が後方へ移った。

 赤い玉は、セトとネアの前へ熱の膜を残す。

 伸びてきた氷が膜の手前で溶けた。


「こっちはいい」


 セトが言う。


「前を見ろ」


 シアはうなずき、氷の精霊王を追う。

 分霊核はシアから離れすぎない位置を保ちながら、後方の防御を動かした。

 シアが前へ進めば、膜も少しずつ前へ移る。

 守る場所を完全に置き去りにはできない。

 それでも、自分の身体から離れた位置へ防御を置き、そのまま攻撃へ進める。


「十歩より先へ出すな」

「分かってる」


「昨日、十メートルと言っていました」


 ネアが訂正する。


「戦っている時に測れない」

「だから余裕を持ってください」


◆ 逃げる先


 氷の精霊王は、凍った滝の上へ移った。

 さらに距離を取り、周囲の冷気を集める。

 川全体から氷が持ち上がり、無数の尖った塊となった。


「数が多い」


 セトが前へ出ようとする。


「大丈夫」


 シアは分霊核を自分たちの前へ置いた。

 赤い玉から、広い炎の壁が作られる。

 飛んできた氷が、壁へ触れるたびに小さくなる。

 溶け切らなかったものだけを、セトが白刃で切り落とした。


 シアは防御へ力を向けず、両手の間へ火を集め続ける。

 氷の精霊王が攻撃を終えた時には、シアの炎がすでに形を持っていた。


「防いでから攻撃するんじゃない」


 シアが言う。


「防いでる間に、攻撃できる」


◆ 火の直線


 シアが両手を前へ出した。

 集めた炎が、太い直線となって滝の上へ走る。

 最大出力ではない。

 以前からシアが放てた範囲の攻撃だった。


 だが、氷の攻撃へ対応した直後ではなく、防御と同じ時間に準備されていた。

 氷の精霊王は、新しい壁を作るのが遅れた。

 火が白い人影の横を通り、背後の氷を大きく溶かす。

 足場が崩れ、氷の精霊王が川岸へ下りた。


 シアは分霊核を反対側へ回す。

 氷の精霊王が正面のシアを見た瞬間、横の赤い玉が強く光った。

 人影が横へ向く。

 その間にシアが距離を詰めた。



※第36話「氷の世界」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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