↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第36話 氷の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
215/246

(二)火と氷

◆ 凍りついた川


 集落の先には、山から流れる川があった。

 本来なら雪解け水を運ぶ川だが、今は流れが見えない。

 川面は厚い氷に覆われ、岸の石まで白く固まっていた。

 ネアが細い銀青色の線を氷へ通す。


「表面だけではありません。川底近くまで固定されています」

「全部溶かす?」


 シアが手を上げる。


「急に溶かせば、下流へ一気に水が流れます」

「少しずつ?」

「先に、これ以上凍らせている力を止めます」


 セトは川沿いに付いた足跡を見た。

 人の形に近い。

 だが、踏みしめた跡ではなかった。

 足跡の周囲から氷が広がり、一歩ごとに白い円が重なっている。


「向こうだ」


 足跡は、川を上るように続いていた。

 シアの分霊核が前へ出る。

 赤い玉の周囲だけ、白い霧が薄くなった。


◆ 白い人影


 川の上流に、滝があった。

 水は流れ落ちる形のまま凍り、巨大な白い壁になっている。

 その前に、人の姿が立っていた。

 遠くから見れば、雪の中へ白い影だけが切り抜かれているように見える。

 顔立ちも衣服も白く、境目が分かりにくい。


 人影が片手を上げる。

 滝の上から冷気が流れ、凍った川を伝って山の下へ向かった。


「止めろ」


 セトが声をかける。

 白い人影が振り向いた。


「何を」

「寒さを下へ広げることをだ」

「寒い場所を作っている」

「ここには、もう川も森も集落もある」

「寒い場所にも、川と森はある」


 氷の精霊王の答えに、迷いはなかった。


◆ 寒さの役割


「なぜ、ここまで凍らせる」


 セトが尋ねる。


「世界には熱い場所がある」


 氷の精霊王は、山の下を見た。


「寒い場所も必要だ」

「山の上には、もともと寒い場所があります」


 ネアが言う。


「足りない」

「何を基準に、足りないと判断していますか」

「凍っていない場所が多い」


 シアが眉を寄せた。


「全部凍らせる気?」

「すべてではない。熱い場所と寒い場所の双方があるから、世界は循環する」


 それは、役割としては間違っていなかった。

 世界が形を持ち始めた頃なら、熱だけに偏った場所を冷やし、流れを分ける必要があったのかもしれない。

 だが、今の世界にはすでに寒冷地があり、暖かい土地があり、それぞれの環境で生きるものがいる。


◆ すでにある循環


「今の世界は、もう分かれています」


 ネアは凍った川を示した。


「山には雪があり、下には森と畑があります。川は山から低い場所へ流れ、その途中に生き物と人間の暮らしがあります」

「寒さが広がれば、寒い場所が増える」

「その代わりに、今ある場所が失われます」

「別の生命が生きる」

「凍る前にいた生命と、取り替えることはできません」


 氷の精霊王は、岸辺で凍った低木を見る。


「寒さに耐えられないものは、暖かい場所へ移ればいい」

「木は歩けない」


 シアが言った。


「川の中のものも、全部は逃げられない。人間も家を持ってる」

「別の場所へ作ればいい」

「おまえが凍らせなければ、作り直さなくていい」


◆ 必要な量


「寒さをなくせと言っているのではありません」


 ネアは山頂に近い白い斜面を指した。


「あそこには、以前から雪が残っていました。その寒さで生きるものもいます」

「なら、寒い場所は必要だ」

「ええ。必要です」


 氷の精霊王は、わずかに顔を動かした。


「なら、増やす」

「必要であることと、無制限に増やしてよいことは同じではありません」

「違いが分からない」


 樹の精霊王と同じだった。

 役割の必要性は知っている。

 だが、どこまで行えばよいのかを判断するための、現在の世界への経験がない。


「この川より下へ広げるな」


 セトが言う。


「なぜ」

「そこから下には、今の寒さでは生きられないものが多い」

「寒い場所を増やす役割より優先するのか」

「ああ。今あるものを全部消してまで、増やす必要はない」


◆ 火と氷


 氷の精霊王がシアを見る。


「火の精霊王」

「シア」

「火は氷を解かす」

「氷は火を弱くする」

「どちらが強い」

「やれば分かる」


「シア」


 ネアが止めるより先に、シアの両手へ炎が灯った。


「でも、ちょうどいい。広げるのを止めてから話す」


 氷の精霊王が手を下ろす。

 白い霧が、一気に濃くなった。


「寒い場所を妨げるなら、外へ出す」


 冷気が地面を走る。

 川岸の石が白くなり、セトたちの足元へ凍結が迫った。

 シアが前へ出る。


「止める」



※第36話「氷の世界」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。