↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第34話 樹海を広げる王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
207/221

(四)絶光

◆ 空白の策


『この周囲の原光を、完全に空白にします』

「森全体を?」

『少なくとも、樹の精霊王から外側へ流れる中心部分を止めます。流れが途切れれば、離れた場所の成長も弱まるはずです』

「その後は?」

『わたしたちも力を使えません』


 絶光の最大出力は、敵だけを選ばない。

 周囲の原光をすべて取り除けば、樹の精霊王は森を増やせなくなる。

 同時に、シアも炎を作れず、ネアも次の術を使えない。

 セトの白刃と黒刃も作れなくなる。


『止めた後に殴れない』

『ええ』

『でも、森は止まる』

『止まります』

『ならやる』


 シアの答えは早かった。

 セトも二本の剣を構え直す。


「ネア、頼む」


◆ 絶光


 セトは絶光を地面へ向けた。

 ネアの力が、刀身から森全体へ広がる。


「絶光」


 銀青色の光が、音もなく地面を走った。

 土の中を流れていた原光が引き抜かれる。

 木々の幹を満たしていた力が消える。

 開きかけた葉が止まった。

 持ち上がっていた根が、途中で動きを失う。


 シアの炎も小さくなる。

 極炎の刀身を覆っていた赤い光が消え、ただ剣の形だけが残った。


 さらに原光が薄くなる。

 セトの足元まで伸びていた芽が、地面を割った姿のまま止まった。

 森から、成長する音が消えた。


◆ 止まった森


 絶光から光が消えた。

 セトの手にあった二本の精霊剣が、人の姿へ戻る。

 シアは地面へ片膝をついた。

 ネアも立っていたが、銀青色の線を一本も出していない。


「止まった」


 シアが周囲を見る。


「今だけです」


 ネアは短く息を整えた。

 セトは白刃を作ろうとした。

 手の中へ原光が集まらない。

 黒刃も同じだった。

 周囲から排除する原光そのものが、ほとんど残っていない。


 樹の精霊王の周囲でも、根と枝が動きを止めていた。

 互いに、次の精霊術を使えない。

 森の中に、葉が触れ合う音だけが残った。


◆ どちらも動けない


 セトは樹の精霊王を見る。


「これ以上は広がらない」

「原光は戻る」


 樹の精霊王が答えた。


「戻れば、森はまた広がる」

「その時は、また止める」

「何度でも?」

「必要なら」


 樹の精霊王は、燃えた木々と、焼かれずに残った古い森を見た。


「森を消すために来たのではないのか」

「前からある森は焼いていない」


 セトが答える。


「増やすなと言っているんじゃない。今あるものを見ずに、全部を森にするなと言っている」

「木のない場所を残す」

「畑も街道も、何もない場所ではない」


◆ 役割をやめない王


 樹の精霊王は、すぐには答えなかった。

 足元の土へ手を向ける。

 何も起きない。

 原光が空白になった場所では、新しい芽を作れなかった。


「生命を増やすことが、役割だ」

「役割をやめろとは言っていない」


 ネアが言う。


「増やした結果、何が失われるかも見てください」

「失われても、新しい生命が生まれる」

「失われる側は、取り替えられません」

「分からない」


 樹の精霊王は、初めてそう言った。

 拒絶ではなかった。

 だが、受け入れたわけでもない。


「役割はやめない」

「今すぐ再開する力はありません」

「戻るまで待つ」


 樹の精霊王は、森の奥へ向き直った。


◆ 追えない三人


「逃がすの?」


 シアが立ち上がる。


「追ってどうする」


 セトが尋ねた。


「もう一回話す」

「炎は出せるか」


 シアは掌を開いた。

 何も起きない。


「出ない」

「わたしも、今は流れを追えません」


 ネアが言った。

 樹の精霊王は、三人を攻撃しなかった。

 森の外へ押し出すこともできない。

 ただ歩いて、動きを止めた木々の間へ消えていく。


「消滅させることが目的ではありません」


 ネアは樹の精霊王が去った方角を見る。


「森の拡大は止まりました。こちらも、それ以上を強制する力が残っていません」

「向こうも、こっちを追い出せない」


 シアが言う。


「痛み分けか」

「ほぼ、そうですね」


◆ 森の外へ


 三人は、ネアが覚えていた方角へ歩いた。

 木々はもう道を塞がない。

 新しく伸びることもない。

 しかし、すでに作られた幹と根は、その場に残っている。

 セトたちは倒木を乗り越え、根の隙間を通った。

 精霊術が使えないため、帰りは来た時より遅かった。


 森の外に近づくと、わずかに原光が戻ってくる。

 シアの指先へ、小さな火が灯った。


「戻った」

「外側から少しずつ流れ込んでいます」


 ネアも細い線を出した。


「ただ、中心部の空白はすぐには埋まりません。樹の精霊王も、今日中に同じ規模で広げることは難しいでしょう」

「今日だけか」

「永遠に止めたわけではありません」



※第34話「樹海を広げる王」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。