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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第34話 樹海を広げる王

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(三)森全体が相手

◆ 極炎


 セトの右手に、火の精霊剣が収まる。

 極炎の刀身から赤い炎が立ち上がった。

 セトの身体へ、シアの力が流れ込む。

 踏み込んだ足が地面を砕いた。

 次の瞬間には、枝の壁の前へ移動している。


 極炎を振り上げる。

 炎は壁を正面から焼き飛ばし、その奥の木々まで一直線に消した。

 新しい芽が出る前に、セトは開いた道へ入る。

 根が左右から迫る。

 極炎を返し、片側を焼く。

 反対側はネアの銀青色の線が絡み、進む方向をずらした。


「そのまま進んでください」


 樹の精霊王まで、あと数歩だった。


◆ 一点を抜く


 樹の精霊王の前へ、幾重もの枝が集まる。

 セトは極炎を突き出した。

 炎が一点へ集中する。

 枝の層が中央から崩れた。

 樹の精霊王の姿が見える。


「森を止めろ」


 セトは極炎を横へ構えた。

 すぐに斬る距離ではない。

 それでも、次の踏み込みで届く。


「森は広がる」


 樹の精霊王は答えた。

 背後で地面が大きく揺れた。


「セト!」


 ネアの声が飛ぶ。

 森の外へ伸ばしていた線が、複数同時に引かれている。


「畑の側で、急に増えました!」


 セトは樹の精霊王ではなく、後方を見た。

 近づく間に、外側の成長がさらに速くなっていた。


◆ 押し戻す森


 足元から根が持ち上がる。

 セトは極炎で切った。

 次の根が来る。

 樹の精霊王は、セトへ攻撃を集中させてはいない。

 森を広げる流れの一部で、近くにいるセトを押し戻しているだけだった。


「シア、外側へ戻る」

『もう少しで届く』

「ここで止めても、畑が消える」

『分かった』


 セトは来た道へ向き直った。

 極炎で木々を焼き、ネアのいる場所まで戻る。


「本体へ近づくと、外側を止められません」

「外を止めると、本体へ届かない」


 セトが言う。


「一人で森全体へ作用しています。こちらは一か所ずつ処理するしかありません」


◆ 月で流れを止める


 ネアは両手を広げた。

 銀青色の線が森の中へ走る。

 土の下を流れる原光へ触れ、方向を曲げる。

 若木の成長が少しだけ遅くなった。


「周囲へ流れる力を、こちらへ偏らせます」

「全部止められる?」

「人型のままでは無理です」


 ネアの周囲へ集まった原光が、黒い輪郭を作る。

 外側へ向かっていた流れの一部は止まった。

 しかし、別の場所から新しい流れが生まれる。

 一本を曲げれば、二本に分かれる。

 二本を止めれば、さらに遠くから回り込む。


「樹の精霊王は、森全体へ同時に力を送っています」

「ネアも剣になれば止められるか」

「今よりは」


◆ 二本目


 ネアは樹の精霊王を見た。


「絶光で増殖を止め、極炎で本体まで進みます」

「二本を同時に使う」

「長くは続けられません」


 セトはうなずいた。


「止めるまででいい」

「止まらなければ?」

「その時に考える」

「考える時間が残るようにしてください」


 ネアの身体が銀青色の光へ変わる。

 左手へ、月の精霊剣が収まった。


 右手には極炎。

 左手には絶光。

 二人分の精霊王の力が、同時にセトの身体を通る。

 筋肉ではなく、身体の奥にある精霊回路が重くなる。


『無理に両方を最大にしないでください』

「分かっている」

『たぶん分かってない』


 シアの声が重なった。


◆ 二つの剣


 セトは絶光を先に振った。

 銀青色の刃が、正面の根へ触れる。

 根の中を流れていた原光が吸い取られ、動きが止まった。

 極炎が、その根を焼き切る。

 次の壁には、絶光を横へ当てる。

 成長が止まった部分だけを極炎で抜いた。

 燃やしてから生えるまでの間が、わずかに長くなる。

 セトはその時間を使って前へ進んだ。


 右から枝が来る。

 絶光で流れを曲げる。

 左から伸びた根は、極炎で焼く。


 一本ずつなら止められる。

 二本でも間に合う。

 だが、森は三方向、四方向から同時に動いた。

 セトの足が止まる。


『外側も広がっています』


 ネアの声が告げた。


◆ 森全体が相手


「森は、ここだけではない」


 樹の精霊王が言った。

 その言葉どおり、遠くで幹が割れる音が続いている。

 セトの前にある木を止めても、背後で別の木が生える。

 樹の精霊王の身体へ近づいても、街道と畑を覆う流れは止まらない。


『全部燃やす?』


 シアが尋ねる。


『前からある森まで焼けます』


 ネアが答えた。


『避難した人の家も、森のすぐ外です』

「やらない」


 セトは即答した。

 樹の精霊王を止めるために、周囲の生命と暮らしをまとめて焼けば、相手と同じだった。


「一点ずつでは追いつかない」

『ええ』


 ネアの声が、次の手段を選ぶ前の響きへ変わった。



※第34話「樹海を広げる王」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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