(五)探す順番
◆ 探す者を分ける
「ほかの次代にも分霊核がある?」
シアが尋ねる。
「可能性はあります。ただし、その属性の精霊王でなければ確認できません」
氷の分霊核が存在しても、シアやネアには探せない。
樹、土、晶も同じだった。
「今は、その本人たちが問題を起こしている」
セトが言う。
「探すよう頼んでも、何に使うか分かりませんね」
「役割を広げるために使う」
シアが答えた。
「その可能性が高いです」
現在の世界へ適応する前に分霊核を渡せば、被害を大きくするかもしれない。
「まずは火と月です。リグが協力するなら雷。フィオラについては、本人が必要だと判断してからにします」
「全部を一度に集める話ではない」
「ええ。扱う者の状態も確認する必要があります」
◆ 広すぎる世界
「二人で歩きながら探せば、そのうち見つかるか」
シアが尋ねる。
「大陸中を隙間なく歩くつもりですか」
「それは時間がかかる」
「ですから、先に範囲を絞ります」
分霊核が近くにあれば、精霊王は流れの欠け方から位置を探せる。
しかし、どの国にあるかも分からない状態では、探す範囲が広すぎる。
山中へ落ちたままかもしれない。遺跡の土に埋まっているかもしれない。人間が拾い、何百年も別の場所へ運ばれているかもしれない。
「昔の精霊王が消えた場所は分からないのか」
「知識には残っていません」
「歴史書は?」
「精霊王の死が、正確な場所まで人間の記録へ残るとは限りません」
「なら、今ある石の情報を探す方が早い」
「ええ」
◆ 探す順番
ネアは地図の端へ、三つの印を付けた。
「最初に、人間側の情報で候補を集めます」
商人が扱った記録。宝石を集める者の所蔵品。加工できずに返された石。古い家や寺院、城の倉庫に残る品目。
「次に、その候補がある地域まで行き、わたしたちが力を薄く広げます」
「最後に触って確かめる」
「反応が明確なら、近づく前に分かるでしょう。ただ、箱の中や地下にある場合は、最後の確認が必要になるかもしれません」
「候補を全部持ってきてもらう方が早い」
シアが言う。
「偽物も、似た石も、関係のない宝石も、一か所へ集まります」
「行く方が早い?」
「候補が少なければ」
探す方法が分かっても、簡単に見つかるわけではない。
人間の情報で範囲を狭め、精霊王の感知で確かめる。
どちらか一方だけでは足りなかった。
◆ 人間の中にある情報
昼を過ぎた頃、三人は街道沿いの小さな詰め所へ着いた。
森の異変を調べる兵士が、通行する者へ迂回路を伝えている。
セトは水と食料を受け取り、机を借りた。
「探す条件をまとめる」
紙の上へ、シアとネアが話した特徴を書く。
赤または黒の小さな宝玉。人間の道具では削れない。穴を開けられない。魔道具としての力は確認できない。一般的な宝石の種類へ当てはまらない。
「これを各国へ伝えるのですか」
兵士が紙を見る。
「まずは記録を探してもらう。宝物庫、商人、宝石を集める者、加工職人」
「回収しますか」
「しない。所在の確認だけだ」
「見つけた者から取り上げるのではないのですか」
「持ち主がいるなら、まず説明する」
セトは紙から顔を上げた。
「買うのか、借りるのか、譲ってもらうのかは、その後だ。精霊王のものだったから返せだけでは通らない」
「元は私たちの力」
シアが言う。
「今持っている人間が盗んだとは限らない」
「拾ったかもしれない」
「何代も前から家にあるかもしれません」
ネアも続ける。
見つけることと、手に入れることは別だった。
強い武器になると広まれば、奪おうとする者が出る。
価値があるとだけ伝われば、価格をつり上げる者も出る。
「精霊王に関係することも、必要以上には広めないでくれ」
「承知しました」
「加工できない石を持っている者へ、処分せず保管するよう伝えるだけでもよいですか」
「それでいい。移動させると、こちらが探した時に位置が変わる」
「報告には、持ち主と現在地を付けます」
「頼む」
※第33話「宝石に見える器」は全六回です。
続きます。
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