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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第33話 宝石に見える器

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(四)返らない場所

◆ 価値が定まらないもの


「削れないなら、壊れない宝石として高く売れないのか」


 セトが尋ねる。


「大きさと見た目を好む者には価値があるでしょう」


 ネアは小石を指先で転がした。


「ですが、加工できないものは、望む形へ仕立てられません。魔道具にも使えず、持っていても特別な効果はない。高価だと考える者と、使い道がないと考える者に分かれます」

「価値が決まっていない」

「ええ。だから、同じ物でも扱われ方が変わります」


 ある場所では、珍しい宝石として箱へ収められる。別の場所では、加工に失敗した石として職人の棚へ置かれる。子供がきれいな石として拾い、そのまま家へ持ち帰っている可能性もある。


「強い力を出さないことが、一番探しにくい」


 シアが言った。


「ええ。危険でも、役に立つものでもないため、同じ扱いが続きません」


◆ 属性の色


「色は同じなのか」

「系統によって違います」


 火の分霊核なら赤。月の分霊核なら黒。風なら緑。


「雷は?」

「おそらく、雷の性質に近い色です。正確な見た目は、リグの知識を確認した方がよいでしょう」

「赤い小さい玉なら探しやすい」


 シアが言う。


「赤い宝石は多いです」

「黒は少ない」

「赤よりは絞れるかもしれません。ただ、色だけでは足りません」


 赤く、小さく、丸い。

 それだけなら、似た石はいくらでもある。

 分霊核には、普通の宝石にはない特徴がある。


「削れないことと、力がないこと」


 セトが言う。


「ええ。魔道具として反応しないのに、人間の道具では加工できない。その組み合わせが手掛かりになります」


◆ 薄く広げる


「場所が分からないなら、どうやって探す」


 セトが尋ねる。

 ネアは街道の中央へ立った。


「同じ属性の精霊力を、広い範囲へ薄く広げます」


 銀青色の光が、ネアの足元から円状に伸びた。

 攻撃ではない。

 草を倒さず、土を削らず、木の幹と石の表面をなぞって遠くへ進む。


「触れた場所から返ってくる流れを見ます」

「反射か」

「近いです」


 薄く広がった月の力は、地面や木々へ触れ、わずかに形を変えて戻ってくる。

 ネアは戻る流れを一本ずつ確かめた。


「分霊核があれば、そこだけ返りません」

「吸われる?」

「ええ。空の器へ力が入ります」

「穴や空洞も、返らないんじゃないか」


 セトが尋ねる。


「何もない場所では、力がそのまま先へ進みます。分霊核の場合は、一点へ吸い込まれて止まります」


 壁の向こうが空いていることと、壁そのものが力を飲み込むことは違う。


「流れ方を見れば区別できます。ただ、遠すぎれば、その違いも小さくなります」


 声を遠くへ投げ、返ってこない場所を探すようなものだった。


◆ 返らない場所


 銀青色の光は、しばらくしてネアのもとへ戻った。


「あるか」

「ありません」

「範囲が狭い?」

「無制限には広げられません。薄くしすぎれば、返った流れを区別できなくなります。それに、広げた範囲が大きいほど、確認にも時間がかかります」


 ネアはもう一度、先ほどより街道に沿って細長く力を伸ばした。

 結果は同じだった。


「近くに月の分霊核はありません」

「次は私」


 シアが前へ出る。

 赤橙色の光が足元から広がった。

 熱はない。

 炎にもならず、草の間と石の上を薄く流れていく。

 シアは目を閉じた。


「いっぱい返ってくる」

「一つずつ見てください」

「見てる」


 少し後、赤橙色の流れも戻った。


「ない」

「火の分霊核も、この周囲にはないようですね」


◆ 同じ属性だけ


「ネアの探し方で、火の分も見つけられないのか」


 セトが尋ねる。


「見つけられません」

「月の力を入れても、火の器は受け取らない?」

「まったく反応しないか、周囲の石と区別できない程度でしょう」


 分霊核は、同じ系統の精霊王だけが扱える。

 探す時も同じだった。

 ネアがどれだけ広く精密に流れを見ても、火の分霊核は探せない。

 シアも、月の分霊核を見つけられない。


「では、風の分霊核はフィオラしか探せない」

「ええ」

「今から呼ぶ?」

「呼びません」


 フィオラは生まれたばかりで、自分の身体と力を確かめ始めたところだった。

 風の精霊殿を拠点とし、各地の情報を集める役割もある。


「分霊核については伝えます。ただ、探すかどうかはフィオラ自身が決めることです」

「リグには?」

「ハルヴェンと合流した時に伝えてもらいましょう」



※第33話「宝石に見える器」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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