(三)七つの器
◆ 七つの器
「いくつまで使える」
「知識の上では、七つほどです」
ネアは残る小石も集めようとして、三つしか拾っていないことに気づいた。
シアが近くから五つ拾い、地面へ並べる。
「七つ」
「ありがとうございます」
中央の一つをネア本人とし、その周囲へ七つの石を置く。
「ただし、七つを持てることと、七つすべてを別々に精密操作できることは同じではありません」
「手が七本増えても、考える頭は一つ」
セトが言う。
「ええ。独立して戦術へ組み込める数には限界があるはずです」
多く持てば、それだけ力を蓄える場所は増える。
しかし、それぞれを違う方向へ動かし、違う術を使わせるには、精霊王自身がすべてを制御しなければならない。
「七つ並べて、全部から同時に撃つ」
シアが言った。
「知識の上では、今のわたしたちに簡単にできる使い方ではありません」
「七つあるのに?」
「七つへ同じだけ意識を向け、同じ瞬間に同じ術を成立させる必要があります。数が増えれば、ずれも増えます」
「一つずつ撃つ」
「それなら可能性は高いです」
「七つ順番に撃てば、七回」
「蓄えた量が足りれば、ですが」
シアは、できないと言われた時より納得した顔をした。
「実際にどこまで扱えるかは、手に入れてみなければ分かりません」
「まず一つもない」
シアが並べた石を見た。
「ええ。今は全部、普通の石です」
◆ 原光のない場所
「絶光で周囲の原光をなくした時にも使えるのか」
セトが尋ねる。
古代兵器との戦いでは、再生を止めるために周囲の原光を枯らした。
その間は、敵だけでなくシアや味方の術士も、周囲から力を集められなくなった。
「使えます」
ネアはうなずいた。
「分霊核の内部へ事前に蓄えておけば、外から原光を集められない状態でも、一定時間は動けます」
「ネアが全部なくして、私だけ分霊核から出す」
「火の分霊核があれば可能です」
「ずるい」
「敵から見れば、そうでしょうね」
絶光で相手の力を止めた後、自分たちまで動けなくなる必要がない。
今回の次代精霊王にも、周囲の原光を大きく動かす者がいる。
分霊核があれば、相手の役割を止めた後にも、こちらだけが行動を続けられる可能性があった。
◆ 精霊剣になった時
「シアかネアが剣になったら、分霊核はどうなる」
セトが尋ねる。
「使い手の周囲へ移ります」
ネアは、中央に置いていた石をセトの足元へ動かした。
七つの小石も、その周囲へ並べ直す。
「操作するのは、基本的には精霊王です。使い手は精霊剣を扱い、わたしたちが分霊核を動かす形になるはずです」
「はず?」
「わたしも実際に使ったことはありません」
「知識どおりに動く保証はない」
「大きく外れるとは思いませんが、細かな感覚までは分かりません」
シアはセトの周りへ置かれた石を見た。
「私が剣で攻撃する。セトが振る。分霊核でも攻撃する」
「全部を同時に考える必要があります」
「やってみれば分かる」
「まず見つけてください」
「それが先だった」
◆ 宝玉の形
ネアは小石を拾い上げた。
「分霊核は、この石よりも丸く、宝玉に近い形をしています」
「大きさは?」
「小さいものです。人間が宝石として持ち運べる程度です」
「見れば分かるか」
「わたしたちなら、同じ属性のものへ触れれば分かる可能性が高いです」
「人間は?」
「珍しい宝石に見えるだけでしょう」
分霊核そのものは、強い精霊力を放っていない。近づけば誰でも圧力を感じるわけでもない。触れた人間へ力を与えることもない。
「危険なものなら、祠に置かれていたかもしれません」
ネアが言う。
「強い力があれば、兵器や魔道具として記録されたでしょう。しかし、何も起こらない小さな玉です」
「きれいなだけ」
「人間から見れば、そうです」
◆ 加工できない石
「ただし、人間の道具では加工できません」
「切れない?」
「削ることも、穴を開けることもできません」
宝石として形を整えようとしても、表面が変わらない。
「なら、珍しい石として有名になるんじゃないか」
セトが尋ねる。
「一つの場所へ残っていれば、そうなるかもしれません」
しかし、魔法的な効果はない。大きな宝石でもない。加工できなければ、指輪や首飾りへ使いにくい。
価値を見いだす者もいれば、使い道がないとして倉庫へ入れる者もいる。
「金具で挟めば飾りにはできる」
シアが言った。
「ええ。装飾品の一部になっている可能性もあります」
「宝物庫、商人の在庫、誰かの飾り」
「ほかの宝石へ混ざったまま、箱の底にある可能性もあります」
※第33話「宝石に見える器」は全六回です。
続きます。
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