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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第33話 宝石に見える器

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(一)前に聞いた名前

◆ 森へ向かう道


 風の精霊殿を出た後、セトたちは森が広がっている地域へ向かった。

 報告では、街道が一晩で木々に覆われている。

 切り開いても数時間で元へ戻り、昨日まで畑だった場所にも若い木が生え始めていた。


 まだ現地までは遠い。

 街道の両側には、低い草原と畑が続いている。

 シアは何度か遠くを見たが、樹の精霊王の気配は感じ取れなかった。


「もっと近づかないと分からない」

「報告された範囲も広がっています。昨日の位置を基準にはできません」


 ネアは地図へ銀青色の線を伸ばし、報告された場所を順に結んだ。

 線は街道の先で大きく膨らむ。


「このまま進めば、今日中には外縁へ着く」


 セトが言う。


「その前に、考えておきたいことがあります」


 ネアは地図から線を戻した。


「分霊核を探しましょう」


◆ 前に聞いた名前


 セトは、その言葉を知っていた。


「前にも聞いたな」

「覚えていましたか」

「古代兵器を倒していた時だ」


 二体の兵器を相手にし、兵士たちへ負傷者が出た時だった。

 ネアは、分霊核があれば戦術の幅が広がると言った。

 セトが何なのか尋ねても、今は使えないものだとして説明しなかった。


「古代兵器を倒した後も必要なら、説明すると言っただろ」

「ええ」

「説明されていない」

「必要になったので、今から説明します」


 ネアは何も問題がないように答えた。


「遅い」


 シアが言う。


「あなたも説明しませんでした」

「私は、ネアが説明すると思っていた」

「俺もだ」

「二人とも、その後は尋ねなかったでしょう」


 古代兵器をすべて破壊した後、すぐに精霊王たちの失踪を追うことになった。

 分霊核の話を思い出す余裕はなかった。


◆ あの時は探せなかった


「古代兵器の時に役立つなら、なぜ探さなかった」


 セトが尋ねる。


「場所が分からなかったからです」

「今も分からないんだろ」

「ええ。しかし、状況が違います」


 古代兵器は、世界中から原光を吸い上げていた。

 どこにあるかも分からないものを探している間にも、森は枯れ、精霊術は使えなくなり、兵器は動き続ける。


「あの時は、探す時間を兵器の破壊へ使う必要がありました」

「今は時間がある?」


 シアが尋ねた。


「目の前の森を放置できるほどではありません」

「ない」

「ですが、次代の精霊王を一人止めれば終わる問題でもありません」


 氷、樹、土、晶。

 すでに四つの地域で異変が起きている。

 倒せば、同じ役割の次代がまた生まれる。


「被害を止めることと、今後のために探すことを並行します」

「今すぐ寄り道をするわけではないんだな」

「ええ。まず、何を探すのかを共有します」


◆ 分かれ残ったもの


 三人は街道脇の木陰で足を止めた。

 ネアは地面から小さな石を三つ拾う。


「分霊核は、過去の精霊王の力の一部です」

「前代の力か」

「前代とは限りません」


 精霊王が消滅した時、その役割と力のすべてが次代へ渡るとは限らない。

 一部が世界へ散らず、小さな球状の器として残ることがある。


「それが分霊核です」


 ネアは一つ目の石を中央へ置いた。


「いつの精霊王が残したものなのか、どのような条件で生まれるのかまでは分かりません」

「精霊王が死ぬたびに一つできる?」


 シアが尋ねる。


「そのような知識はありません。毎回残るなら、もっと多く存在するはずです」

「どれくらいある」

「それも分かりません」

「分からないことが多い」

「見たこともありませんから」


 ネアの答えに、セトは石から顔を上げた。


◆ 誰かではない


「ネアも見たことがないのか」

「ありません。知識として知っているだけです」

「私は少しだけ知っている」


 シアが言う。


「丸い。周りに浮かせる。力を入れておける」

「おおむね合っています」

「先代の記憶も入っている?」

「いいえ」


 ネアははっきり否定した。


「魂も、人格も、記憶もありません」


 過去の精霊王が、そのまま小さな球へ残っているわけではない。

 誰かの考えが聞こえることもない。

 役割を継ぐ次代へ命令するものでもない。


「力を通し、蓄え、別の場所で作用させるための器です」

「では、見つけても名前を付ける必要はない」


 シアが言う。


「付けても返事はしません」

「石と同じか」

「普通の石よりは使えます」

「なら、少し違う」


 シアは納得した。



※第33話「宝石に見える器」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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