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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第30話 放つ・分ける・束ねる

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(二)三人が入る

◆ 四人の役目


「内側に入って、前より分かったことがあります」


 ネアが三つの円弧を見る。


「放つ、分ける、束ねるは、創界が持つ三つの別能力ではありません。創界を使うために、三人が行う役目です」

「順番は?」


 セトが尋ねる。


「最初に、創界が対象と世界を見ます」

「世界を見る」


 シアが、前日に受け取った言葉を繰り返す。


「次に束ねます」


 ネアはミレナを見る。


「三人を混ぜるのではありません。三人が別々のまま、同じものを、同じ向きから見るためにそろえます」

「私が、三人の向きを一つにする」

「ええ。その後、わたしが分けます。眠りの王、取り込まれた精霊王の役割、そして世界。その境界を見つけ、別のものとして定めます」

「最後が私か」

「シアが、定めた境界を創界の外へ放ちます」

「セトは?」


 ミレナが尋ねた。


「三人すべてとつながった使い手です。三人を別々のまま受け取り、何を終わらせるかを選び、剣として通します」


◆ 使用する順序


 ネアは地面へ四本の線を引いた。


「見る。束ねる。分ける。放つ」


 最後に、四本を一つの矢印で囲む。


「そしてセトが振るう、ではないのか」


 シアが言う。


「セトは最初から最後まで必要です。創界を持ち、三人とのつながりを保ち、分ける対象を決めます」

「決めるのはネアじゃない?」

「わたしは分けます。ただ、どちらを残し、どちらを終わらせるかは、剣を振るう者の選択です」


 セトは四本の線を見る。


「眠りの王だけを終わらせる」

「そのために、取り込まれた役割と眠りの王を、別のものとして見なければなりません」

「元の精霊王は戻るのか」

「人格と記憶は、すでに眠りの王の中で境界を失っています」


 ネアは曖昧にしなかった。


「戻せるのは役割です。元の個人を、そのまま取り出すことはできません」


 シアは黙って線を見た。


「それでも、次が生まれる」

「ええ。役割が世界へ戻れば、次代の再生は始まります」


◆ 名前を持つ道


「創界の中で、私たちは名前を失いませんか」


 ミレナが尋ねた。


「三つの流れは、役割だけを入れる場所ではありません」


 ネアは答える。


「わたしが入った時も、セレーネとしてではなく、ネアとして考え、戻れました」

「それを保つのも、セトの役目か」


 シアが言う。


「ええ。三人すべてを一つの力として扱いながら、誰が誰かを取り違えないこと」


 セトは、シア、ネア、ミレナを見る。


「いつもと同じだ」

「簡単に言いますね」

「三人を混ぜて使ったことはない」


 極炎はシアだ。絶光はネアだ。翔嵐はミレナだ。

 同じ手に三本のつながりを持っても、誰かを別の誰かとして扱うことはない。


◆ ミレナの選択


 ミレナは創界の前へ座った。


「使った後、私はどうなりますか」

「風の役割と人間のミレナが分けられる可能性が高いです」

「人間として残れる?」

「創界が目的どおり働けば」

「風の力と知識は?」

「世界へ戻ります」


 ミレナは自分の右手を握った。

 風を使えるようになってからも、何度も繰り返した動作だった。


「私は、普通の人間へ戻りたいです」

「知っています」

「でも、それだけで創界へ入るわけではありません」


 ミレナはセトを見る。


「眠りの王を止めたいです。今いる人たちが、役割だけになって消えるのは嫌です」

「戻れない可能性もある」

「はい」

「今なら、まだやめられる」

「やめません」


 迷いがないわけではない。

 怖くないわけでもない。

 それでも、ミレナは自分で答えた。


「私が決めました」


◆ 三人が入る


 セトは創界を両手で構えた。

 最初にミレナが風の側を前へ出す。

 栗色の髪へ銀緑色が重なり、瞳の色が薄く変わる。

 シアとネアが、その左右へ並んだ。


「戻る時は、つながりを逆にたどる」


 シアが確認する。


「使用を止められる間は、です」

「分かった」

「本当に分かっていますか」

「途中でやめるつもりはない」

「それは、分かったとは言いません」


 ミレナが小さく息を吐いた。


「少し安心しました」

「何がだ」

「創界へ入る直前でも、いつもの二人なので」


 シアが笑う。


「セト、呼べ」


 セトは三人を順に見た。


「シア」


 赤橙色の光が、創界へ入る。


「ネア」


 銀青色の光が、別の円弧へ入る。


「ミレナ」


 淡い銀緑色の光が、残る円弧へ入った。



※第30話「放つ・分ける・束ねる手」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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