(三)火の通り道
◆ 四組
準々決勝が終わり、残ったのは四組になった。
次は準決勝。
勝てば決勝へ進める。
控え場所から、別の準々決勝が見えた。
大剣を持った男が、相手の防御を正面から打ち破る。
その後ろでは、細い杖を持った相方が風を操り、敵の足を止めていた。
二人の動きに迷いがない。
大剣の男は、相手が倒れる前に刃を止めている。
力だけでなく、手加減にも慣れていた。
「あれが次の相手だ」
セトが言った。
「強いのか」
「今までの二組よりはな」
「わたしが倒す?」
「援護だ」
「まだか」
「大会が終わるまでだ」
試合を終えた大剣の男が、セトたちの方を見る。
視線はセトではなく、シアへ向いていた。
白炎を作っているのがシアだと気づいているらしい。
「次はお前を先に狙うだろうな」
「またか」
「今度は火を置くだけでは止まらないかもしれない」
「なら燃やす」
「威力は抑えろよ」
◆ 準決勝
準決勝が始まった。
大剣の男が前へ出る。
杖の使い手は後方に残らず、斜め横へ移動した。
セトとシアを正面から分けるつもりらしい。
「始め!」
大剣の男はセトではなく、シアへ向かった。
同時に、杖の使い手がセトへ風を放つ。
強い横風が舞台を走る。
セトは白刃を石床へ突き立て、押し流されるのを防いだ。
「シア、避けろ!」
大剣が振り下ろされる。
シアは横へ動いた。
刃が石床へ当たり、鈍い音を立てる。
シアが小さな火を放つ。
男は大剣の腹で受けた。
火は弾けたが、男の動きは止まらない。
「弱いな」
「弱くしろと言われている」
「なら、先に場外へ出てもらう」
大剣が横へ振られる。
シアは後ろへ下がった。
舞台の端まで、まだ距離はある。
だが、このまま押され続ければ場外になる。
◆ 分けられた二人
セトは白刃を振り、正面の風を切った。
風そのものを斬り消すことはできない。
それでも、精霊力の流れを乱せば、一瞬だけ弱くなる。
そこを抜けようとする。
杖の使い手が次の風を放つ。
「行かせない」
風が壁のように立ちはだかった。
セトが前へ進めない間に、大剣の男がシアを追い詰めていく。
「シア!」
「聞こえている」
「火を俺に飛ばせるか」
「風が邪魔だ」
「相手に当てなくていい。上へ飛ばせ!」
シアが指を向ける。
小さな火が、セトの頭上より高い場所へ放たれた。
横風に押され、火は大きく流される。
白刃から遠い。
「届かないぞ」
「分かっている」
シアは二つ目の火を放った。
最初の火より高い。
風に流され、舞台の外へ消える。
「何をしている」
大剣の男がシアへ迫る。
「援護だ」
「どこを狙っている?」
「今、考えている」
◆ 火の通り道
三つ目の火が上がった。
また風に流される。
だが、今度は消えなかった。
横風に乗り、杖の使い手の前を通過した。
相手がわずかに身を引く。
風の向きが変わった。
「セト」
「ああ」
シアは、風を止めようとしていたのではない。
火を流すことで、相手が風を向ける先を確かめていた。
四つ目の火が放たれる。
今度はセトの正面ではなく、少し後ろへ。
杖の使い手が風を曲げる。
火は弧を描き、セトの横を通った。
「次だ」
セトは白刃を高く構えた。
五つ目の火が飛ぶ。
風に流され、横から白刃へ近づく。
セトは一歩だけ下がり、刀身を火の通り道へ差し込んだ。
火が白刃へ触れる。
白い炎が燃え上がった。
◆ 風を破る
セトは白炎へ力を回した。
火が強くなる。
今回は人間を斬るためではない。
正面を塞ぐ風の術を崩すためだ。
白炎を振り抜く。
高密度に集めた白刃が風を形作る精霊力へ食い込み、炎がその流れを乱した。
風の壁が左右へ割れる。
「なっ」
杖の使い手が目を見開いた。
セトは割れた風の間を走る。
相手が新しい風を作るより早く、白炎の切っ先を杖へ当てた。
炎の威力を落とす。
白刃だけを短く振り、杖を中央から斬った。
杖の先が石床へ落ちる。
「降参するか」
杖の使い手が下がる。
それでも、両手を前へ出して風を集めようとした。
セトは白刃を消し、短剣状に作り直す。
足元へ投げた。
白い刃が石床へ刺さる。
相手の動きが止まった。
「……降参する」
一人目が手を上げた。
※第6話「二人一組の大会」は全四回です。
続きます。
作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。
※ネタバレ範囲にご注意ください。
https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/




