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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第29話 創界の守り手

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(七)放つ・分ける・束ねる

◆ 放つ・分ける・束ねる


「属性が決まっているんですか」


 ミレナが尋ねる。


「違う」


 シアは創界から指を離した。

 指先が離れても、三つの円弧は白銀色のまま、ごくわずかにずれた位置で止まっている。


「何ができるかだ」

「放つなら、シアですね」


 ネアが言う。


「わたし?」

「あなたほど、内側の力を外へ出すことへ適した精霊王はいません」

「リグもできる」

「今回は、創界へ入る三人の中で考えています」

「なら、わたしだ」


 シアは一つ目の円弧を見る。

 円弧は何の反応も示さない。


「分けるのは、ネアさんですか」


 ミレナが尋ねる。


「おそらく」


 ネアは二つ目の円弧を見る。


「わたしの力は、原光を吸収し、反射し、流れを偏向させます。異なるものの間へ空白を作ることもできます」

「眠りの王と、取り込まれた精霊王を別のものとして扱う役目に近いでしょう」


 ミレナは、残った三つ目の円弧を見る。


「私は、束ねる」


 ヴァルナとの戦いで、散った水を一か所へ集めた。

 翔嵐となった時には、別々の流れへそれぞれ異なる道を与え、最後には同じ場所へ戻した。


「三人を一つにするんですか」

「一つにして混ぜるんじゃない」


 シアが首を横へ振る。


「別々のまま、同じ方へ向ける」

「三人の個別性を保ったまま、創界という一つの剣として成立させる」


 ネアが続ける。


「それが束ねる役目なのでしょう」


 三つの円弧は、どれも同じ白銀色のままだった。

 誰がどの役目を担うのか。

 どの精霊王が中へ入るのか。

 創界は、まだ何も決めていない。

 今あるのは、朽ちた残滓からシアが受け取った三つの言葉と、三人の力から考えた役割の推測だけだった。


「三人の役目は分かりました」


 ネアが言う。


「ですが、どの順番で、何を対象に行うのかまでは分かりません」

「残っていない」


 シアが答える。


「世界を見る。束ねる。分ける。放つ。言葉はある。でも、どれが先かは崩れている」

「眠りの王を前にして確かめるしかない?」


 セトが尋ねる。


「たぶん」

「また、たぶんか」

「朽ちているから仕方ない」


 創界に残っていたのは、使い方を順に説明する記録ではない。

 創造神が剣へ定着させた権限と、その目的の残りだった。

 何を見て、どこへ境界を引き、どのように現実へ届かせるのか。

 今の四人には、まだ理解できない。


◆ 選ばれる条件


 セトが石台へ近づいた。


「触れてもいいか」

「わたしが先に周囲を確認します」


 ネアの銀青色の線が、石台と創界の周囲を巡る。

 吸収される様子も、弾かれる様子もない。


「今見える範囲に、攻撃する機構はありません」

「見えない範囲は?」


 シアが尋ねる。


「分かりません」

「なら、触らないと分からない」

「あなたが先に触れる理由にはなりません」


 セトは創界の柄へ手を伸ばした。

 指が触れても、創界の形は変わらなかった。

 三つに分かれた白銀色の円弧も、色を持たない空洞の刀身も、静かなままだった。

 セトは柄を握る。

 創界は、抵抗なく石台から離れた。

 重さは普通の剣と大きく変わらない。

 握った手から力が流れ込む感覚もなかった。

 その代わり、セトの内側へ何かが触れた。

 シアとのつながり。

 ネアとのつながり。

 ミレナとのつながり。

 三つを順に確かめられているような感覚だった。

 三人を一つの存在として見ているのではない。

 別々の三人として確かめながら、それぞれがセトへつながっていることを見ている。


「何か来たか」


 シアが尋ねる。


「見られた」

「誰に」

「剣に」


 ネアが創界の鍔を見る。

 三つの円弧は、白銀色のまま動かない。


「拒まれてはいないようです」

「選ばれたのか」

「そこまでは分かりません。持つことを拒まれなかっただけです」

「面倒だな」


 シアが言う。


「グラウスの言っていた通りです」


 セトは創界を持ったまま、三人を見る。

 シア。

 ネア。

 ミレナ。

 三人とも、一度は精霊剣としてセトへ身を預けている。

 極炎。

 絶光。

 翔嵐。

 創界が確かめたのは、その三つのつながりだった。

 だが、誰がどの円弧へ入るのかも、創界が三人を受け入れるのかも、まだ決まってはいない。



※第29話「創界の守り手」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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