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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第29話 創界の守り手

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(五)岩壁の奥

◆ 分かれた家系


 面会を終える前に、セトは一つだけ確かめた。


「なぜ、俺の一族には何も残っていない」

「一族が分かれた時、同じものを受け継がなかったからだ」


 グラウスの家系とセトの家系は、遠い世代で同じ一族から分かれている。

 セトの家系には、白刃と黒刃を含む剣状精霊術と剣技が残った。

 古いイフリートを弔う習慣も引き継がれた。

 グラウスの家系には、封印された危険な剣の所在地と、守護者としての役目が残った。


「魔剣も、創界もか」

「ああ。ただし、同じ場所ではない」

「どうしてそんな分け方をした」

「知らない。そこまで古い経緯は残っていない」


 グラウスは事実だけを答えた。


「結果として、場所を知る者だけでは一人で封印を開けず、二つの異なる刃を一人で持つ者は場所を知らなかった」

「封印としては機能していた、ということですね」


 ネアが言う。


「意図してそうしたのかは分かりませんが」

「お前なら一人で開ける」


 グラウスはセトを見る。


「白刃と黒刃。二つの独立した剣状精霊術を、同時に成立させられる」

「皮肉だな」


 セトが言った。


「お前の一族が嫌ってきた二刀が、創界を開く鍵になる」

「二刀を禁じた者が、創界の条件を知っていたとは限らない」

「それもそうだ」


 その時は魔剣を倒すための禁じ手だった。

 今は、神剣へ至るための二つの鍵になる。


◆ 岩壁の奥


 グラウスが示した場所は、街道から外れた岩山の中腹にあった。

 途中まで残る石段は、長い間使われていない。

 左右から草と土に覆われ、上から見れば自然にできた段差と区別できなかった。

 崩れた石橋を越え、細い谷へ入る。

 行き止まりには、灰色の岩壁があるだけだった。


「ここですか」


 ミレナが周囲の風を確かめる。


「奥へ続く空気の流れはありません」

「空間ごと閉じている可能性があります」


 ネアが岩壁へ銀青色の線を触れさせた。

 線は表面を滑り、どこにも入らない。


「月でも境界を見つけられません」

「二つの刃を出せば見えると言っていた」


 セトは岩壁の前へ立つ。

 右脚には、まだ鈍い痛みが残っている。

 剣を振るうだけなら問題ない。

 だが、長い移動の後では、足へ重さが溜まっていた。


「大丈夫ですか」


 ミレナが尋ねる。


「開けるだけだ」

「前にも似た言葉を聞きました」

「戦わない」

「今度は信じます」


 完全には信じていない声だった。

 セトは右手へ原光を集める。

 純白の刃が形を取った。

 左手の周囲から原光を排除し、黒い空白を剣の形へ固定する。

 白刃と黒刃。

 二つの独立した剣状精霊術を、同時に岩壁へ向けた。

 白刃を近づけると、岩壁の左側へ細い光が走る。

 黒刃を近づけると、右側の色が沈んだ。

 何もなかった岩の表面へ、二本の縦長の継ぎ目が現れる。

 剣を差し込む穴ではない。

 二つの刃の輪郭を読み取るように、光と空白が岩壁の内側へ伸びていく。


「同じ人が作った刃でも、別の鍵として認識しています」


 ネアが言う。


「白刃と黒刃が、別々の術として成立しているからでしょう」


 白い線と黒い線が、岩壁の中央へ向かう。

 二本は混ざらない。

 中央へ細い隙間を残したまま、上下へ伸びた。

 低い音が谷へ響く。

 岩壁が左右へ動いたのではない。

 今まで一枚に見えていた空間が、二つへ分かれた。

 その間に、奥へ続く通路が現れる。


「開いた」


 シアが先へ進もうとした。

 ネアが肩をつかむ。


「先に安全を確認します」

「罠はないと言っていた」

「グラウスの知識が現在も正しい保証はありません」

「触れる前に見る」

「近くで見る、も禁止です」

「まだ言っていない」

「言う前に止めました」



※第29話「創界の守り手」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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