↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第29話 創界の守り手

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
171/266

(一)手掛かりのない剣

◆ 祠に残る者


 ヴァルナを村の祠へ移してから、六日が過ぎた。

 水路の流れは元へ戻っている。

 祠には朝と夕方、必ず誰かが訪れた。

 水を供え、屋根へ落ちた葉を払い、内側に横たわる青年の姿を確かめる。


「今日もいるな」


 何かを願うでもなく、それだけを言って帰る者もいた。

 ヴァルナは答えない。

 それでも、祠へ移した直後より、人の形を保てるようになっていた。

 指先が水へほどける回数は減っている。淡い青緑色の瞳も、訪れた村人をゆっくり追うようになった。


「昨日より安定しています」


 ネアが祠の外から、ヴァルナを形作る原光の流れを確かめる。


「村の人が見に来るたび、崩れかけた境界が少し戻っています」

「もう暴れないのか」


 シアが尋ねた。


「そこまでは言えません。今は自分から分かれようとしていないだけです」

「なら、まだ誰か残った方がいい」


 祠の横で、ハルヴェンがうなずく。


「俺とリグが残ります。今の状態なら、再び水へ分かれ始めても、村へ広がる前に止められます」

「ヴァレストへ戻らなくていいのか」


 セトが尋ねる。


「報告は送りました。世界規模の異常が続いている以上、水の精霊王を放置して帰る方が問題です」


 人の姿を取ったリグは、祠の柱へ背を預けたまま、ヴァルナを見ていた。


「お前たちは神殺しの剣を探せ。こちらは任せろ」

「リグさんとハルヴェンさんが、ヴァルナを見ていてくれるんですね」


 ミレナが言う。


「ああ。お前たちが戻るまで、今のこいつを一人にはしない」


 祠の中で、水が小さく揺れた。

 返事ではないかもしれない。

 それでもリグは、視線を外さなかった。


◆ 手掛かりのない剣


 神殺しの剣について各国へ送っていた問い合わせには、ほとんど成果がなかった。

 神が使った剣。

 神を斬った剣。

 神殿へ捧げられた剣。

 似た伝承はいくつも見つかった。

 だが、創造神が精霊剣に相当する剣となり、そのまま消滅した後に残った空の器と一致するものはない。


「古い記録ほど、神剣と聖剣の区別が曖昧です」


 ネアが、机へ広げた最後の報告書を閉じた。


「神が使った剣なのか、神殿が神剣と呼んだだけなのか、強い精霊術を宿した剣なのか。名称からは判断できません」

「全部見に行く?」


 シアが報告書の束を見る。


「眠りの王が世界を眠らせる方が先でしょう」

「では、使えない」

「今から一つずつ確かめる方法は、です」


 ネアは、報告書とは別に置いていた紙へ目を移した。

 神殺しの剣。

 シアの中に、知識ですらない断片として残っていた言葉。

 以前の調査で確かめられたのは、それが創造神の残した空の器らしいことと、三人分の精霊王級の存在が必要になることまでだった。

 場所も、正式な名も、分かっていない。


「シア」

「何だ」

「以前から感じていた引っかかりは、まだありますか」


 シアは自分の胸元へ手を置いた。


「ある」

「強くなっていますか」

「前より近い。でも、見ようとすると消える」


 ネアは、すぐにシアへ手を伸ばさなかった。


「もう一度、調べますか」

「ああ」

「前回より深いところへ触れる可能性があります。あなた自身の知識とは限りません」

「先代の知識か」

「それとも限りません。過去の精霊王が、外から一度だけ受け取ったものかもしれません」


 シアは少し考えた後、椅子へ座った。


「見る」

「無理に引き出しません。分からないものを、分かる形へ押し込まないでください」

「どうすればいい」

「今ある引っかかりを、そのまま教えてください。わたしが周囲を分けます」



※第29話「創界の守り手」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。