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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第28話 風の精霊剣

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(五)二つの極大技

◆ 散る水


 シアが炎の壁を作る。

 ヴァルナの水は、火へ触れる前に細く分かれた。

 ネアが銀青色の線で進路を変える。

 一本を曲げる間に、その外側から別の水が抜ける。

 轟雷の雷は、つながった水へは強く通った。

 だが、ヴァルナは触れ合う直前に流れを切り、雷を受けた部分だけを置いていく。


「中央にある分だけでも焼く」


 シアが言った。


「待ってください」


 ネアが止める。


「前回より総量が少ない。消滅させるつもりなら可能かもしれません」

「戻せないなら、村を守る」

「まだ戻せないと決まったわけではありません」

「でも止められない」


 水の一部が二人の会話の間を抜ける。

 セトが黒刃を作り、草地の外側から受けた。

 原光を失った水が地面へ落ちる。

 勢いまでは消えず、セトの足元へ流れた。


「前へ出ないでください」


 ネアが言う。


「外へ抜けた分だけだ」

「それを前へ出ると言います」


 シアがセトの前へ炎を置いた。


「次はわたしが焼く」


 水は炎を避け、さらに細くなる。

 草地全体へ散った流れが、少しずつ村へ近づいていた。

 前回と違うのは、ミレナがそれらをすべて見分けられることだった。

 どの流れが地上にあるか。どれが土の下へ入ったか。どこで二つが合流しようとしているか。

 風の側を前へ出さなくても、おおよその位置は分かる。

 だが、人間のまま動かせる風では、数が足りない。


◆ 二つの極大技


 草地の端へ抜けた水が、村へ続く地面へ届いた。

 細い流れのまま土へ染み込み、その先でまた集まろうとしている。


「セト」


 シアが振り返る。


「ああ」

「一度だけだ」

「ああ」


 シアの身体が赤橙色の光へ変わった。

 精霊剣・極炎が、セトの右手へ収まる。

 剣を握った瞬間、風では支えられていなかった右脚へ熱い力が通った。

 傷が治ったわけではない。

 それでも、立って剣を振るうだけの力は戻る。


『村へ続く流れだけを焼く』

「ああ」


 セトは極炎を地面すれすれへ構えた。


「極炎」


 合図と同時に、剣からシアの気配が消えた。

 意識を捨てた一瞬、火のすべてが出力へ変わる。

 赤白い炎が、村へ向かう水の前を長い線となって走った。

 地面の表面にあった水が一斉に蒸気へ変わる。

 土の下を進んでいた流れも、熱を避けて草地の中央へ押し戻された。

 だが、すべてではない。

 広がりすぎた水の一部は炎の外側を回り、白い蒸気へ紛れた。

 剣の中へシアの気配が戻る。

 極炎が赤橙色の光へほどける。

 人型へ戻ったシアが、よろめきながら着地した。


「焼ききれない」

「分かっている」


 蒸気の中から、何本もの水流が飛び出した。

 セトとシアを避け、さらに外側から村へ向かう。


「ネア」

「一度だけです」


 ネアの身体が銀青色と黒の光へ変わる。

 精霊剣・絶光が、セトの手へ収まった。

 極炎の身体強化が消えた直後だった。

 右脚が崩れかける。

 セトは絶光を地面へ突き立て、それを支えに身体を止めた。


『範囲を広げます。剣を動かさないでください』

「ああ」

「絶光」


 合図と同時に、剣からネアの気配が消えた。

 意識を捨てた一瞬、月の力が吸収と遮断へ特化する。

 銀青色と黒の流れが、セトを中心に薄く広がった。

 その範囲へ入った水から、分裂した形を保つ原光が抜け落ちる。

 水流が次々と崩れ、ただの水となって地面へ落ちた。

 村へ進む勢いも失われる。

 だが、絶光の外側では、ヴァルナの水がまだ動いていた。

 範囲をこれ以上広げれば、周囲の原光まで完全に失われる。

 剣の中へネアの気配が戻る。


『ここまでです』


 絶光が光へほどけ、ネアが人型へ戻った。

 セトの身体から支えが消える。

 ハルヴェンが片腕で受け止めた。


「十分です」

「止まっていない」

「村へ入る直前の流れは止めました」


 草地の中央では、極炎に押し戻された水と、絶光の外側に残った水が、再び別々の方向へ広がり始めていた。

 二つの極大技で、戦況は一時的に戻った。

 それでも、分かれた水を一つにする力はなかった。



※第28話「風の精霊剣」は全九回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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