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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第26話 逃げた少女

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(五)雷が通る

◆ 雷が通る


 水流が黒刃へ迫る。

 その直前、空から紫白色の雷が落ちた。

 水流を横から貫き、川まで一直線に走る。

 水の精霊王の身体が細かく分かれた。

 セトたちの前へ、ハルヴェンが着地する。

 その手には、紫白色の雷をまとった精霊剣・轟雷があった。


「待てと言われたのでは?」

「見つけたら待つつもりだった」


 セトが答える。


「見つけた後に、向こうから来た」

「なら、仕方ありませんね」


 ハルヴェンは轟雷を構える。


『あれは水の精霊王だ』


 剣となったリグの声が響く。


『境界が崩れている。話は通じないと思え』

「退けられるか」

『一度ならな』


 分かれた水が、空中で再び人の形へ集まる。

 穏やかな顔も、長い髪も、元と同じように戻った。

 損傷した様子はない。


「セトをお願いします」


 ミレナが言った。


「俺が離れれば、あなたが狙われます」

「私は――」

「その状態で力を使わないでください」


 ハルヴェンは地面を蹴った。


「迅雷」


 轟雷とともに、一本の紫白色の線となる。

 正面から水の精霊王を貫いた。


◆ 引いた水


 水の精霊王の身体が、前後へ分かれた。

 分かれた水の間を、雷が走り続ける。

 川へ広がっていた細い流れにも、同じ雷が伝わった。

 初めて、水の精霊王の動きが止まる。


『倒してはいない』


 リグの声がした。


「分かっています」


 ハルヴェンは追撃せず、セトたちの前へ戻った。

 空中へ分かれていた水が、川の上へ集まる。

 人の形へ戻りかけたところで、再び崩れた。

 水は川上へ向かって流れ始める。

 本来の流れとは逆だった。

 細い水流が何本も木々の間へ入り、やがて見えなくなる。


「逃げた?」


 ミレナが尋ねる。


『一時的に離れただけだ』


 轟雷からリグが答えた。


『水は残っている。あれだけ分かれても、全部が同じ一人だ』


 ハルヴェンが轟雷を下げる。

 紫白色の光がほどけ、リグが人型へ戻った。


「追うか」


 リグが川上を見る。


「追いません」


 ハルヴェンはセトの横へ膝をついた。


「今は、こちらが先です」


◆ 動けないだけ


 セトは石壁へ背を預けた。

 呼吸は戻っている。

 だが、右脚へ力が入らない。

 脇腹へ触れると、鈍い痛みが広がった。


「血は多くありません」


 ハルヴェンが傷を確認する。


「骨は?」

「折れているかもしれません。少なくとも、歩かせない方がいいでしょう」

「重傷ではない」

「本人が決めることではありません」


 少し遅れて、東側を探していたシアとネアも到着した。

 シアは川へ残る水の痕跡を見てから、セトへ駆け寄る。


「何をした」

「守った」

「何からだ」

「水の精霊王です」


 ネアが川へ触れずに流れを読む。


「役割名はヴァルナ。眠りの王の活性化と原光の枯渇で、自分の役割を制御できなくなっています」

「戻せるか」


 シアが尋ねる。


「今は分かりません」

「なら、次に来たら倒す」

「まず、村へ近づけない方法を考えます」

「同じだ」

「違います」


 ネアはセトのそばへ座った。

 銀青色の原光で、傷の周囲へ残る水の力を取り除く。


「命に関わる状態ではありません」

「ほら」


 セトが言う。


「ですが、しばらく動かないでください」

「どのくらいだ」

「今決めることではありません」



※第26話「逃げた少女」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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