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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第23話 神殺しの剣

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(四)残された風

◆ 預けた相手


「ハルヴェンとのつながりを切れば、セトとつながれる?」


 シアが尋ねた。

 リグの目がわずかに細くなる。


「切れと言うのか」

「可能か聞いた」

「可能かもしれない。だからといって選ぶとは言っていない」

「世界が――」

「シア」


 セトが止めた。


「何だ」

「リグは、すでにハルヴェンを選んでいる」

「知っている」

「なら、その選択を消して三人目にするのは違う」

「でも、リグなら力は足りる」

「力だけで決めない」


 シアは黙った。

 眠りの王は、役割も力も人格も同じ場所へ入れ、違いをなくす。

 それを止めるために、リグが誰へ身を預けたかという違いを無視すれば、していることが近づく。

 ハルヴェンがリグを見る。


「俺が必要ならと言ったのは、つながりを捨ててもよいという意味ではありません」

「ああ」

「ですが、ほかに方法がなければ、俺も考えます」

「その時は俺が考える。お前が先に手放すな」

「分かりました」


 リグはセトへ顔を向けた。


「候補から完全に外す必要はない。だが、最初に選ぶ方法でもない」

「分かった」

「シアも分かれ」

「今は分かった」


◆ 取り込まれていない力


「では、別の精霊王を探す」


 セトは地図を広げ直した。


「眠りの王へ入っていない者の中で、まだ自分の境界を保っている者」

「さらに、人間とつながれる可能性がある者ですね」


 ハルヴェンが言う。


「返事のない相手へ、いきなりそこまで求めるのは難しいがな」


 リグは目を閉じ、周囲の原光へ細い雷を通した。

 ネアも別の方向へ意識を広げる。

 光。水。土。氷。樹。重。晶。

 確認できる流れの多くは、東へ向かう途中で境界を失っていた。

 残っているものも、弱く、不規則に揺れている。


「明確な個体として返る者はいません」


 ネアが言った。


「昨日と同じか」

「ええ。ただ、一つだけ違う流れがあります」

「誰だ」

「誰、と呼べる形ではありません」


 ネアは空中へ薄い緑色の線を作った。

 線は東へ向かわない。

 一か所へ集まることもなく、細かく枝分かれしている。


「風か」


 リグが言った。


「ええ。アイオロスの役割です」


◆ 王の形を持たない風


「残っているのか」


 シアが緑の線へ近づく。


「精霊王としては確認できません」

「また曖昧だな」

「役割と知識は残っています。しかし、一人の精霊王としてまとまっていません」

「死んで、世界へ戻ったのでは?」


 ハルヴェンが尋ねる。


「それとも違います。通常の死亡なら、役割は原光の流れへ薄く広がり、次代が生まれるための核を作ります」


 ネアは枝分かれした線をいくつか示した。


「これは、大地の記憶へ焼き付けられています」

「大地の記憶?」

「精霊王が、自分の役割と知識を意図的に手放すための方法です」

「なぜ、そんな方法がある」


 セトが尋ねた。


「分かりません」


 ネアはすぐに答えた。


「わたしにあるのは、方法についての知識だけです。誰が考え、どのような状況で使ったのかという記憶はありません」

「使い道は推測できるか」

「おそらくは、精霊王自身が役割を果たせなくなった場合のためでしょう」

「役割を果たせない?」

「身動きが取れない。長く封印される。自分では世界へ作用できない。そのような状態になった時、役割と知識まで失われないよう、大地へ残すのだと思います」

「本人が動けなくても、役割だけは残せる」

「ええ」


 リグが緑の線を見つめる。


「風の精霊王は、封印されていたのか」

「その痕跡はありません」

「では、なぜ使った」


 ネアは、最も濃い緑の線へ目を向けた。


「本来とは別の目的で使ったのでしょう」



※第23話「神殺しの剣」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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